SSSランクパーティーのおっさん剣士だけど、新人達に追い出されので亜人の国で魔王になります

ノベルバユーザー219564

おっさん、裏切られる

 ここはとある洞窟。 そこの最深部では激しい戦闘が繰り広げられていた。
「レオン! そっちにもう一匹行ったぞ! 舌の攻撃に注意しろ!」「わかってるって、うっせーなあ」
 俺、熟練の剣士クラークは目の前のバジリスクを切り伏せながら、同じく剣を振るっている新米勇者レオンにげきを飛ばす。 若さに任せて戦うのはいいが周りが見えてないな。ふふん。
「おーいフラン! また俺の石化無効アンチ・ストーンが切れてるぞ!」「ちっ、変なとこはすぐ気づくのね……」
 白いローブに身を包んだ彼女は、魔法使いのフラン。
 頭が良く、魔力も高い将来有望な彼女だが、よく俺への支援魔法を忘れるウッカリをしてしまう。 まったく、最近の若者は視野が狭い。困ったもんだ!
「おっと、あぶねえ。こら! リン! こっちに死骸を飛ばすんじゃねえ!!」「そんなトコに突っ立ってるおっさんがいけねえんだろ! 隅っこでジッとしとけよ!」
 露出度の高い戦闘服で、迫りくるバジリスクを殴り殺しているのは拳闘士のリン。
 彼女は細身ながらもその身に宿る特殊能力、通称「贈呈物ギフト」の効果で身体能力が常人の数百倍に強化されており、適当なフォームで殴ってもモンスターを倒せる。
 そしてその三人とパーティーを組んで戦っているのが、この俺クリークだ。
 俺たちのパーティー「明けの明星」は、現在大量発生したバジリスクの討伐任務をこなしている。 バジリスクは一体だけでも強力なモンスターで、Aランクのパーティーでなければ討伐許可がギルドから下りない。 しかし、俺たちのパーティーはSSSクラス。 世界に数えるほどしか存在しない、全ての冒険者の頂点だ。
 ゆえに今回の依頼も楽勝だ! が強くて連携の下手な若者たちをまとめるのには苦労するがな!
 ハッハッハッハッハッハ!!





 ◇





「こんなもんか、やっぱり楽勝だったな!」「…………」「ん? どうしたお前達黙りこくって」
 全てのバジリスクの討伐に成功し一息ついていると、何やら3人して険しい顔して俺を見ている。 すこし活躍し過ぎたかな?反省反省。
「なあ……おっさん。まだ気づかねえのかよ」
 ん?気づかない? いったい何のことだ? 怒らせるような事をしただろうか……。
 あ! 一昨日俺がフランのスープを間違えて飲んだ事か! あの時はガチギレしてたからなあ……。 でも謝ったんだし、レオンが怒るような事じゃないと思うんだがなあ。
「ピンと来てねえみたいだからハッキリ言ってやるよ」
 レオンは俺の目を真剣な目で見つめてくる。照れるぜ。
「おっさん。あんたは邪魔なんだよ。パーティーを抜けてくれ」
「へ?」
 何を言ってるんだ? 俺はこのパーティーの設立メンバーだぞ? 抜けるとしたら入って数年のお前達だろ?
「言ってくれてありがとうレオン。おじさん、これは3人の総意よ。とっとと消え失せてくれるかしら?」「フランまで……スープの事なら謝る! だからこんな子供みたいなことは辞めよう? な?」
 よくない流れだ。 しかし、若者を諫めるのも年長者の務めだ、なんとかせねば。
「わかんねえジジイだな。シャレでもなんでも無いんだよ。いつまで英雄ヅラしてる気だよ。あんたの時代はとうに終わったんだよ」「リン、お前まで……!? いったい俺の何が不満だって言うんだ!」
 俺がどれだけこのパーティーに尽くしてきたと思ってるんだ! パーティー設立して30年間、様々な苦難があった。 死闘の末、魔王を倒して世界に平和をもたらしてすぐに他の設立メンバーがパーティーを抜け普通の暮らしに戻った後も、俺だけは新米冒険者を育てる為にパーティーを存続させ、経験の浅い冒険者を引き入れ一緒に旅をした。 旅慣れない新米冒険者の為に炊事洗濯などの雑務も積極的にやった。 数々の問題児が入り、優秀な冒険者に成長し巣立って行った。
「なのに、なぜ!」
「ぶっちゃけ剣の腕はもう俺の方が上なんだよね。それなのにリーダーぶって上からグチグチとアドバイスしてうぜえったらないんだよ」「それにおじさん私の事いやらしい目で見てるでしょ? ホント気持ち悪い。臭いし」「それな。私も見られるのが嫌でキックが出来ないぜ」
 ふざけるな。 俺がどれだけお前らに尽くしたと思っている。 右も左もわからぬお前達を誰が育てたと思っている。 そんなに俺といるのが嫌なら。
「お前らが出ていけや……この『明けの明星』は俺のパーティーだ!!」
「はあ、めんどくせえな。いいぜ、だったら納得させてやるよ。力尽くでな!!」
「!?」
 殺気を感じ、俺は咄嗟にしゃがむと頭上スレスレをレオンの剣が通り抜ける!
「あぶねえ!何しやがんだ!!」
 レオンは濁った目で俺を見ながら言う。
「なんだ、思ったより動けんだな。おっさん」
 ふざけるな。 なんで俺がこんな目に合わなければいけない。 言って分からないなら、大人の怖さを思い知らせてやる!
「こいよおっさん。特別に介護してやるよ」「上等だよひよっこ勇者が……!!」
 戦いが、始まる。


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