シリ婚~俺の彼女はラブドール!?

上等兵

22話 「古家家の姉妹」


 幸せそうに人形に囲まれる古家さん。そしてその中に混じり父親との再会に喜ぶ『俺の胡蝶』と『繭さんの夢見鳥ちゃん』。
 
 それを、俺と繭さんはそれを羨ましいそうに眺める。
 
 ――それにしてもみんな同じ顔だから見分けがつかねえな。
 
 古家さんを囲む人形達はみんな胡蝶と夢見鳥ちゃんと姿形が一緒で見分けるには髪型と服を見て判断するしかない程だ。
 
 「古家さんはすごいですね、みんな同じ顔ですけど見分けがつくんですね」
 「そうだよお父さんは私達個人個人のことをちゃんとわかってるんだから!」
 「私達のお父さんは偉大なの!」
 
 俺が関心して言うと古家さんの周りにいる人形達が次々と古家さんを褒め称える。
 
 古家さんは一瞬真顔になり黙るとすぐににこやかになった。
 
 「当然父親だから分かるよ……あははは、ハハッ」
 
 ――あ、古家さん本当は見分けがついてないな。
 
 それを察したのは俺だけでなく心春さんも察したようでやれやれと溜め息をついている。
 
 「へぇ、親父すげえな私は自分と同じ顔の奴に囲まれると混乱しそうになるのにな……おい大我、お前はちゃんとこの私を見分けることができるよな?」
 
 そう言って胡蝶がにこやかな笑みを俺に向ける。
 
 「……アハハ、当然だ俺がお前を間違えるはずないだろ?」
 
 ――やべえ、全く見分けがつかねぇ。
 
 「すごいのはお父さんだけじゃないもん! 繭も夢見鳥がこの中に混じっててもちゃんと見つけてくれるよ、ねえ繭?」
 
 夢見鳥ちゃんが期待を込めた眼差しを繭さんに向けて問いかける。
 
 「モチロンよ夢見鳥、私があなたを間違える訳ないわ」
 
 俺は繭さんを横目でチラッと見る。
 
 ――繭さん余裕そうに言ってますけど目が泳いでますよ。
 
 「そうですわぁ! せっかく姉妹がそろいましたから自己紹介しましょう」
 
 心春さんが俺達に気を遣って提案してくれた。
 
 「それはいいねえ、みんな並びなさい」
 
 古家さんの言葉に人形達が従って並ぶ。俺の胡蝶と繭さんの夢見鳥ちゃんは俺達の横に戻ってきた。
 
 「あらためて僕の娘達を紹介するよ、先ずは長女の心春だ、もう知ってると思うけど我が社の誇る超本物シリーズのラブドールだ、この通りナイスバディでエロエロだよねえ!」
 「心春ですぅ、よろしくおねがいしますた、い、が、さ、ま、うふふ」
 
 心春さんは前屈みぎみになり俺に胸を強調してくる。
 
 心春さん嬉しいけどやめてくれ、さっきから胡蝶がすごい形相で俺を睨むんだ、あと何故か繭さんの俺を見る目が怖い。
 
 「次は球体関節シリーズの娘を紹介するよ」
 
 球体関節シリーズは胡蝶と夢見鳥の二種類しかないのでどれも姿形が同じだ。今いるのは、みんな同じ着物を着ていて判別する方法は髪型位だ。
 
 「この娘達はみんな双子という設定でさら顔のパーツは二パターンしか造ってないから同じように見えるけど、みんな性格は違うんだ」 
 
 古家さんはさらに詳しく説明して双子はどれも姉が胡蝶タイプで妹が夢見鳥タイプになるらしい。
 
 「それじゃあ二女と三女を紹介するね」
 
 最初にに紹介されたのは俺の胡蝶と繭さんの夢見鳥ちゃんと同じ髪型の二人組だった。
 
 「……お兄ちゃんよろしく」
 「……お姉ちゃんよろしく」
 
 双子の姉妹は俺と繭さんに挨拶すると古家さんの背中に隠れた。
 
 「あははは、この娘達は寂しがり屋でねえ、常に僕に抱きついてくっついとかないと落ち着かないみたいなんだ、本当に甘えん坊な姉妹だよ」
 
 うちの胡蝶と全く性格が違うな、全く、俺の胡蝶は何でこんなに乱暴な性格なんだろう?
 
 横目でジロリと胡蝶を見た。

 「ん、何だ大我? 私に何か言いたそうだな、お前もしかしてこんなか弱そうな女達が好きなのか? だとしたら止めとけ、お前にはわたしのような高貴で強い女が似合う」
 
 そう言って胡蝶が先程の姉妹と何故か繭さんに対し挑発的な視線を送る。
 
 「……こ、胡蝶ちゃん……何が言いたいのかな?」
 「ふん、さあな」
 
 繭さんと胡蝶の間にまるで火花が散ってるように感じた。
 
 「おい胡蝶何で繭さんに喧嘩を売るんだよ! 謝れ!」
 「繭も怖い顔しないで夢見鳥悲しくなるから!」
 
 俺と夢見鳥ちゃんで喧嘩を止める。
 
 「おおぅ……修羅場だねえ久我君、羨ましい! じゃなくて浮気はいけないよ!」
 「古家さんこれは誤解です!」
 「……ごほん」
 
 突然誰か咳払いをする。
 
 「お父様、いい加減私達を紹介してくれませんか」
 「因みに私達二人はお父様が私達を顔で区別できずに髪型で区別してることを知ってますからね」
 「な、何を言ってるんだ僕はちゃんとお前達のことが分かるよ……おっと話しがそれるところだったね、これが四女と五女だ」
 
 四女と五女の髪型は密編のみおさげで両方ともメガネをかけていた。まるで委員長みたいだ。
 
 俺はこの二人はすぐに覚えれた。
 
 「この娘達はまじめで優秀なんだ、だからたまに心春の手伝いをさせているよ」
 
 そう言われて二人は自信に満ちた表情をする。

 「因みにメガネをかけているけど二人とも目は悪くないよ」
 「ちょっとお父様それを言わないでください!」 
 「私達がより優秀に見られるようにメガネをつけてるのがバレるじゃないですか!」

 あはは、この姉妹は確かに優秀なんだろうけど、どこか抜けてるんだな。
  
 「つぎは六女と七女を紹介するよ」
 「もうお父さんわたし達を紹介するのが遅いよ!」
 「お兄ちゃんお姉ちゃんあとで私達といっぱい遊んでね!」
 
 次に出てきた双子は元気いっぱいで髪を後ろで一つにまとめている。
 
 「この娘達は見ての通り活発でねえ僕は年だから二人に着いて行けないんだよ、だから久我君達でよければ遊び相手になってくれるとありがたい」
 「俺でよければ良いですよ」
 「私もです」
 
 俺と繭さんが同意すると古家さんは助かるよ、と言ってニッコリ笑う。
 
 「くくく、わたし達の遊び相手になってくれるってよ」
 「何して遊ぼうかなぁ……」
 
 あ、ヤバイこりゃ早まったな、この二人何か企んでやがる、とりあえずこの双子には注意しとこう。
 
 「最後に八女と九女を紹介するよ……久我君、きみは若い男だこの娘達には注意するんだよ」
 「……え?」
 「うふふ、お父様わたし達に対してそんな言い方はないんでは、ねえ妹?」
 「ふふふ、そうですわねお姉様、けれどわたくし大我様のことが気になりますわ」
 「まぁ妹、目をつけるのが早いわね……けどわたしも気になるわ」
 
 双子はそう言ってまるで俺を誘うかのように流し目を向けてくる。
 
 この二人は髪型は俺の胡蝶と繭さんの夢見鳥ちゃんと同じだ。
 
 しかし見分け方があって姉の胡蝶の方は薄いピンクの牡丹の髪飾り着けていて、妹の夢見鳥の方は紅色の薔薇の髪飾りを着けている。
 
 俺はこの双子を妖艶組と覚えて警戒する。
 
 絶対にこの双子と一緒になったらダメだ。
 
 案の定隣から胡蝶の怒りが伝わってくる。
 
 「……大我さん」
 「繭、さっきから怖いよぉ、笑って?」
 
 繭さんは険しい表情で小刻みに震えている。
 
 こんなに怒っている繭さんは初めてだ、もしかして繭さん本当は俺のことが好きで嫉妬しているのか?
 
 俺はそう思うと嬉しくなった。
 
 モテ期キター! ってそうじゃねえ! 俺のバカバカまだ繭さんが俺を好きと決まった訳じゃねえだろ! それに俺には胡蝶がいるのに、これじゃあ二股野郎じゃねえか。
 
 「はいはーい、お子様のくせに無理して大我様を誘わないでねぇ、妹達にはまだそういうのは早いと姉さん思うわぁ」
 
 心春さんが俺の後ろへやって来て胸を俺の頭にのせる。俺の頭上に未知の弾力を感じてドキドキした。
 
 ――あああああ!! 嬉しいけど俺の人生終わったあああ!
 
 胡蝶が強く俺の脇腹を殴っくる。
 
 「ふふん、年増が何か言ってるわ」
 「……ババア」
 
 妖艶組が心春さんに向かって容赦ないことを言う。
 
 「本当にムカつくガキ達ですねぇ……あら! わたくしとしたことがなんてはしたない言葉を、大我様ぁ先程のことは聞かなかったことにしてくださいねぇうふふ」
 
 心春さんは俺の頭上でボヨンボヨンと胸を上下させる。
 
 「こら、お前達汚い言葉を使うんじゃない、心春もそんな破廉恥なことをしてはいけないよ!」
 
 心春さんはシュンと落ち込んで古家さんの元へ戻る。
 
 「はぁ、まったく僕の娘達は……久我君これで我が古家家は全員揃ったよ個性豊かな家族だろう?」
 「はい、とても面白い家族です」
 
 俺は心からそう思った。

 俺の胡蝶と繭さんの夢見鳥ちゃんを合わせると全員で十一人姉妹か……なんつう大家族だ。
 
 「そうだ親父、わたしも自己紹介するよ……胡蝶だって言ってもみんな胡蝶って名前だから混乱するな……お! そうだ親父わたしはあんたの娘で今は『久我胡蝶』、大我の妻だ」
 
 部屋が一瞬で静かになる。
 
 俺は氷着いた。
 
 ――あれ? 胡蝶は彼女じゃなかったっけ、いったいつ俺と結婚したんだ?
 
 「じゃあ夢見鳥もお父さんに自己紹介するね『真見夢見鳥』、繭の奥さんなのー!」
 
 繭さんも氷着いた。
 
 ――あれ? 私いつ夢見鳥をお嫁さんにしたっけ、それに私達は女同士よね?
 
 「……久我君と繭さんあとで娘について話がある」
 
 古家さんは有無を言わせぬ雰囲気を漂わせながら俺達にそう言った。

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