シリ婚~俺の彼女はラブドール!?
13話 「彼女と混浴」
繭さんとの一件があった後俺は布団のなかで自己嫌悪していた。すると、繭さんも寝室に来て布団に入る。
黒田さん、俺、繭さんの順に布団の間を開けて川の字に寝る。離れているとはいえ一つ屋根の下に女性がいることに悶々とした。
あっ! いっけね胡蝶を連れて来るの忘れた……けどあいつ俺と一緒の布団で寝たことねえからな。
胡蝶は今どんな気持ちいでいるだろう、恐らくカンカンに怒ってるだろうな。
そんな不安を抱きながら俺は何とか眠りについた――。
「――おい大我、起きろ……起きろこの浮気野郎」
誰かが俺の顔を押している。
「うーん、なんだ? 今何時だ?」
「深夜一時だ浮気野郎、さっさと起きて行くぞ」
目をあけると胡蝶が足で俺の顔を踏みながら起こしているのがわかった。
深夜一時だと? なんでこんな時間に起こすんだよ、しかも行くってどこに?
眠たいのをこらえて起き上がる、黒田さんと繭さんはぐっすりと寝ている。
胡蝶の方を見ると手に何やら荷物を持っていた。
「大我、さっさと風呂に行く準備をしろ」
「風呂ってお前水に濡れたらヤバイだろ」
「少しぐらいなら大丈夫だろ良いから行くぞ」
そう言うと胡蝶は俺にバスタオルを投げてきた。
「……今の時間なら人がいないから胡蝶一人で行けよ」
「はぁ? 大我、お前は私と一緒に風呂に入りたくないのか?」
「……入りたいです」
「なら早くしろ」
胡蝶は俺を急かして部屋を出る。
胡蝶が俺と風呂に入る? マジで!? これは行くしかねえ!
部屋を出るとき人形の夢見鳥ちゃんと目があった。少し不気味だったが気にしないことにした。
慌てて胡蝶を追いかけると部屋の前で待っていた。その際胡蝶は俺に挑発的な視線を送りさっさと浴場へ歩いていく。
深夜なので旅館の廊下には人が居ない。俺は胡蝶の隣を黙ってついて歩く。
浴場に着くと胡蝶は男湯へ入って行った。
「おい、胡蝶ここは男湯だぞ……おい待てよ!」
胡蝶を追いかけて入るとそこは俺達以外誰も居なかった。呆けていると胡蝶は突然浴衣を脱ぎ始めた。
「おわっ! いきなり脱ぐなよ!」
俺は後ろを向いて胡蝶を見ないようにする。布が擦れる音と物音が聞こえる。
「大我、先に行ってるぞ」
胡蝶はそう言うと浴場へ行ってしまった。
ここまできたら冗談じゃねえみたいだな。
俺が振り返ると着替え棚に胡蝶の脱いだ着物が置いてあるのが見えた。
遂に俺も童貞卒業か! まさか人生始めての相手が人形で、しかも場所が旅館の風呂か。
我ながらなんてアブノーマルなんだと思いながら深呼吸して浴場のドアをあける。辺りが白い湯気でぼやけている。
目を凝らしてみても胡蝶の姿が見えなかった。もしかしたら露天風呂に行ったのかも知れない。露天風呂へ移動すると胡蝶はちゃっかりと風呂の椅子に座り洗面具を用意して待っていた。
露天風呂は節電の為か電気は点いていない。しかし月明かりが強く多少は明るい。
「大我、洗え」
胡蝶は命令しながら俺に背中を見せる。前はバスタオルで隠しているようだ。
「い、良いのか?」
「……特別に許す、だけど前は見んな」
チッ、どうせだったら全部みせろよ。
俺は残念に思ったがこんな機会は滅多にないので緊張して震えながら胡蝶の体を洗う準備をする。
「どこから洗えばいいんだ?」
「うーんそうだな……取り敢えず頭から洗え」
胡蝶の髪はとても長いので洗いにくい。また女性の髪自体洗ったことがなかったので取り敢えず傷まないように優しく洗った。
「痒いところはありませんかー?」
「ぷっ、あはは、何を言ってるんだお前」
「あれ、知らないか? 髪を洗うときのお約束のセリフだよ」
「ふーん、そんなのがあるのか?」
胡蝶と何気ないやり取りをして思った。
なんだろうこれは、俺は今女の形をした人形と風呂にいる、ましてや初めて女の裸を見たのになんでこんなに普通なんだろう。
ふと繭さんとの一件を思い出す。
繭さんの上に倒れたとき、俺は初めての女性の体に間近で触れたことと、その後の繭さんの行動に動揺した。
繭さん小さくて良い匂いがしたな、もしあのとき二人きりだったら俺は……。
「ん? どうした大我、手が止まってるぞ?」
胡蝶の声で俺は我に返る。
「あ、ああ……胡蝶に見とれてボーッとしちまったよ」
「ふふっ、そうかそうか……私の美しい姿を目に焼き付けとくんだな変態」
嬉しそうに胡蝶がからかう。
俺はなんて最低なんだ、彼女の胡蝶がいるのに繭さんのことを思い出すなんて……。
髪を洗い流すと今度は背中を流すように命令される。胡蝶は髪を肩から前にやり背中をさらけ出した。
胡蝶の背中はシリコンだがとても綺麗だった。
傷つけないように背中をこする。その間胡蝶は上機嫌で鼻歌を歌っている。
今目の前に胡蝶の裸がある……なのになんでだ!? こんなにドキドキするのに何故か身体が反応しない。
俺は自分の身体に不安を感じた。
もしかして本当は胡蝶のことをそれほど好きじゃないのか? ……いや、そんなはずはねえ、確かにあの時俺は胡蝶と一緒に居たいと思った……その気持ちに偽りはねえ!!
「大我もういいぞ」
俺が背中を洗い終わると胡蝶はそう言って風呂に浸かる。俺も一緒に浸かった。
目を強く瞑り隣の胡蝶を意識しないようにする。やはりどうしても男女で風呂に入るのは恥ずかしい。
「おい大我、良いものを持ってきてやったぞ」
「良いもの?」
ついつい目を開けて胡蝶を見てしまった。すると、いつの間にか胡蝶がビールビンとグラスを持っていた。
「おい、お前いつの間に持って来てたんだ? しかもそれどうするつもりだよ」
「どうするってお前が今ここで飲めよ、私が注いでやるんだから感謝しろ」
胡蝶はグラスを俺に渡してニヤニヤとした笑みを浮かべる。
こいつもしかして繭さんが俺にビールを注いだことに嫉妬してこんなことをしてるのか?
断ると胡蝶が不機嫌になるので渋々グラスにビールを注いでもらい飲む。
ビールは生ぬるかった。
風呂と酒は最悪の組合せで俺は直ぐに酔いが回り少し意識が朦朧とする。
「ふふふ、大我もう酔ったのか? もうちょっとだけ頑張れよ、今いい景色が見えるぞ」
何とか意識を繋げつつ胡蝶を見る。そこには青白く光る月とその光りを反射して海面に映す海を背景に胡蝶が裸で風呂の縁に腰をかけている姿が目に映る。
「綺麗だな、まるでこの世のものじゃないみたいだ」
俺がそう言うと胡蝶はゆっくりと近づいて来る。
「大我、お前が好きだ」
胡蝶は俺に覆い被さりおでこにキスをした。
「お前が繭の上になったとき胸が痛かった、悲しかった……だから私だけを見てくれ」
胡蝶は俺をじっと見つめる。
「胡蝶……」
俺はひとまず退かそうと胡蝶の肩に手を置いたが振り払われて再びキスされた。
「大我ぁ……好きだよぉ」
胡蝶はそう言いながら何度も俺の顔中にキスを浴びせてくる。こうなるともう俺は酔って朦朧として訳が分からなくなった――。
「――胡蝶! わかったからひとまず風呂から上がるぞ!」
やっとの思いで胡蝶のキスの嵐から逃れ風呂から上がる。心臓が破裂しそうなくらい鼓動を打っている。
「あぶねー! 死んじまうとこだった……おい胡蝶そんな寂しそうな顔で俺を見るなよ」
胡蝶は風呂から上がると寂しそうな雰囲気をだす。そんな胡蝶を俺はタオルで身体を拭いてやりながら声をかけた。
「胡蝶、嫌な思いをさせてごめんな……俺も胡蝶のことが好きだ……明日は一緒に海に行こうだからさびしい顔をすんな」
そう言うと胡蝶は俺を睨み付けて言う。
「……繭のことを好きになるんじゃねえぞ」
「繭さんは友達だ、だから心配すんな――」
――その後、俺達は静かに部屋に戻り一緒のふとん寝ることにした。
胡蝶が抱きついてきて寝にくかった。
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