ネカマな回復職の物語

春乃秋

14.神様、嘘つかない。


スタンレーとの話し合い終わって1週間。
ランク上げの為何度かギルドに通いクエストを請け負い程よくギルドにも馴染みの顔ぶれが見られる様になった頃。

「はぁー。ランク上げって大変…」

というか女言葉にし続けなきゃいけないってのも辛いもんだなぁ。
ゲームの時はリアルの男の時間があったから楽しんでネカマプレイが出来たけど、いざ男に戻れる瞬間が無いってのは苦痛だよなぁ…。

「ん?」

色々あったここ数日の事を振り返り自分の状況を見直しながらぼーっとクエストボードを眺めていると気になる紙が貼り出されている。

「なになに…回復術士の臨時バイト…ヒール程度あれば可。教会からの依頼の為絶対安心!ヒールするだけの簡単なお仕事!報酬…金貨1?!」

うーむ。突っ込み所が沢山あるとして。
まず絶対安心!って書いてある時点で安心感ゼロだよな…。
しかしカッパー、ブロンズで受けられる薬草採取やウルフ、ゴブリン討伐で銀貨10枚程度なのに金貨1は魅力的だよなぁ…無収入に近い収入しかない状況でぽんぽん金を使っていると不審がられるし、いくらエヴォルで荒稼ぎしてたとはいえエヴォル金貨だって無限にある訳じゃない。
ここは金策がてら受けてみるか。
危なかったら宿にリコールすればいいし。

リコールスキルは24時間のクールタイムがある代わりに詠唱中のあらゆる干渉を受けず必ず設定ポイントに戻れるというスキルだ。
初めは いしのなかにいる 状態にならないかドキドキしたのだが、対象を取れるワープスキル系を使って実験した為安全である事を確認済みだ。
とりあえず、受けるか。

俺は金欲(甘い物の誘惑)に負け怪しさ満点のクエストを受けるべく紙を剥がし受付へと持っていく。

「あの、こちらをお願いします。」
「はい、あらスーリアさんこちらのクエストを受けられるんですか?」
「はい、回復術士ですから…それとも何か不味いですか?」

スタンレーと別れてギルドに通いながらなんとか独学でこちらの文字の読み書きの練習をしたのだがまだ完璧とは言えない。
何か読み間違えたのだろうか等と考えていると受付のお姉さんはニッコリと笑って判子を押してくれる。

「いいえ、大丈夫ですよ。ではスーリアさんに女神アレースの御加護を。」

さて、場所は神殿になるんだけど…自分が回復術士ってのもあって神殿には全く縁がないんだよなぁ。
まぁ、この世界の歴史なんかもわかるだろうし丁度良いかも知れないな等と考えつつギルドからさほど離れていない教会へポツポツと歩き出す。





「わぁ…」

遠くから見えていて綺麗だなぁぐらいに思っていた神殿だったが、近くで見るとノートルダム大聖堂を彷彿とさせる美しさがあり思わず息を飲んでしまう。

細部までこだわられている細かい細工などに見とれていると傍から急に声がかけられる。

「あの…スヴェド神殿へ何か御用でしょうか?」
「ひゃい?!」

ぼーっと思考が切れている所に急に声をかけられた為裏返った声に、声をかけた人物も思わずビクッとしている。

「あ、ええと、そのクエストボードの紙をみて参りました。」
「まぁ!そうだったんですね!では早速神殿へお入りください!!」

シスター服を着た女の子はそう言うと俺の手をとりグイグイと引っ張りながら神殿へと入っていく。

「あの!あの、ちょっと!」

俺が流石に強引過ぎるため声をかけるとシスター服の女の子が立ち止まる。

「あの、ちょっと説明して頂けませんか?」
「え?シスター候補の依頼ですよね?」
「はい?あの、ヒーラーの依頼ですけど…」
「え?ヒール使えるんですか?」
「使えますけど…」
「すいません!私ったらまた早とちりして!!てっきり修練の為に入会しに来られたのかと思って…」
「あはは…」

女の子は涙目になりつつ必死に謝ってくる
女が苦手なこちらとしてはもはや苦笑いだ。
「で、では改めて仕事の説明をお願いします。」
「あ、はい!私はシスター見習いのコルセアと申します。仕事についてはシスターマギアが。ご案内しますね。着いて来てください。」

そう言うと今度は無言のまま、神殿の中を抜け奥のシスター達が寝泊まりをしているであろうフロアへと抜ける。
程なく歩くと1つのドアの前で立ち止まりコルセアがノックをする。

「シスターマギア。冒険者様がご依頼を受けて下さいました。」
「お入りください。」

返答を受けコルセアはこちらに向き直り
後はお二人でお願いしますと告げた後元の来た道を戻っていった。

「失礼します。」
ドアを開けるとそこには、40代程の人の良さそうな笑みを浮かべるまさに聖母の様なシスターが居る。

「よく来てくださいましたね。私はマギアと申します。立ち話もなんですからお掛けください。」

促され俺はソファへ座り、紙をテーブルに出す。

「自己紹介が遅れました、私はスーリアと申します、ギルドの依頼を見て来ました。」
「よろしく、スーリアさん」

シスターは凡そ怒りといった感情が無いのでは無いかというようなニコニコとした微笑みを見せながら果実水等をテーブルに並べ、俺の対面へと座る。

「早速ですがお仕事の内容はもうお聞きになられましたか?」
「いえ、ただヒールを使う仕事だとは聞いて居ます。」
「そうなのです。ここ数日、スヴェド付近のあちこちの農村がモンスターに襲われ神殿の神父様や回復術士が全て出払っておりまして、恥ずかしながらここスヴェド神殿に回復術士が今は1人も居ないのです。」

ん?1人も?それは神殿としてどうなんだろうか。
確かに人を助けに行くのは褒められるべき事のような事もするが…かと言って神殿に回復術士1人も居ないのなら神殿が成り立って居ないような…。
まぁいいか。おかけで仕事を貰えてるんだし。

答えのない答えを探している事に気付き半ば考えを放棄する形で無理やり納得する事にする。

「そこで、冒険者の方々で回復術士の方に臨時でシスターをして頂こうと思ったのです。」
「なるほど、ところで先程1人も回復術士が居ないとおっしゃいましたがシスターマギア貴女は使えないのですか?」
「私は魔力が足りず、ヒールの様な下級魔術でも1日に使える数が限られていてとても回復術士としては認められていません。」
「なるほど…失礼しました。」

いえ、良いんですよ。とマギアさんは先程までの微笑みとは少し違う悲しそうな顔を見せた後またすぐに微笑みを見せる。

「早速ですが、スーリアさんの使える回復術をお教えください。」

あー、どうすっかな…
これは正直に答えると多分間違いなく教会に拉致エンドだよなぁ。
最高位回復術が使える回復術士を放ってく訳ないし、やはりここは適度に答えるか。

「私は下級回復術ヒール下級状態異常回復リジェネレーション
下級精神安定コンセントレート移動速度向上ウインドウォークが使えます」

ちなみに今言ったのは全て8級魔法と7級で当然6級クラスの出来損ないの復活式レッサーリザレクションも使えるし、恐らくこの世界で最高位とされる回復術も使えるだろう。

「まぁ!そうですか!それであれば司祭の代わりになって頂けますね!」
「え、と、もちろん依頼期間の間ですが。」
「勿論司祭や神父様がお帰りになられましたら、報酬と共にご自由にして頂いて大丈夫ですよ!」

何気にマギアさんの目が良いもの見つけたと言っている様でこの上なく怖いが神に仕えるシスターだ、嘘は無いと信じよう。うん。

「では、仕事場へ向かいましょう!」
「よろしくお願いします。」

依頼期間が長引かぬ様に祈りつつ、仕事場へと向かう。




ただ今41℃の熱があります。死にそうです。
沢山のお気に入り感謝しております。

銅貨100枚→銀貨1枚
銀貨100枚→金貨1枚
金貨100枚→白金貨1枚
今後こんな感じで通貨価値を統一していければと思います…。

ゴブリン程度で銀貨10って高くね?と思われるかも知れませんが、命懸けなので報酬が高いです(設定が甘いのはデフォルト)

次回更新未定。
よろしくお願いします。

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