ネカマな回復職の物語

春乃秋

12.いざ。



「おっちゃんこれちょうだい!」
「あいよ!!」
「これたけーよ!!銅2枚が相場だろ!」
「高いと思うんなら買わなくったてぇいいだぜ!」

宿を後にして、市場へと足を運んだものの
朝から人々の活気が凄く、人並みに乗って歩かないと誰かにぶつかりそうだな等と思いつつ歩いているとみかんのりんご飴らしき出し物のお店を見つけたので寄ってみる。

「あ、あのこれは食べ物であっていますか?」
「ん?なんだいお嬢ちゃん、タユナシ飴を知らねぇのかい」
「ええ、初めて見まして…」
「そりゃ人生を半分は損してるな!」

ガハハと大工みたいに頭にタオルを巻いたおっちゃんが差し出してくれる。

「お嬢ちゃんは綺麗だし、旅をしてる風でも無いけどよコイツを知らねぇって事は箱入りか。ま、なんにせよお代はうめぇと思ったら払ってくれりゃいいからよ」

差し出されたタユナシ飴と呼ばれたりんごみかん飴らしきものは甘過ぎずタユナシと呼ばれる果実の酸味と甘い香りが鼻を抜ける。
外側のシロップをぺろりと舐めるとより一層タユナシの味が強く感じられ齧るとシャクっという音と共に現実のりんご飴よりも一層美味しく感じられた。

「とても美味しいです、おいくらですか?」
「銅貨2枚だな、美味しいって言ってくれるのが1番の喜びだ。」
「安くて美味しいって凄くいいお店ですね」
「そうだろう。ここいらじゃ1番のタユナシ飴屋ってので通ってんだまた機会があれば買ってくれよ!」
「是非、勧めておきますね。」

社交辞令も交ぜつつ、本当に美味しいタユナシ飴を片手に市場を物色しつつ歩き出す。

「そういえば腕時計とかないのかな…」

そう思い時計を売っている店を覗くとアンティーク調の懐中時計を見つけた。

アンティークが好きな俺としては買うしかない!となってついつい買ってしまったのだがそこでふと今日会うであろう貴族の事を思い出した。

「えっと、貴族に会うんだから何かお土産はいるよね…。。」

こんな事ならシェリナさんに聞いておけば良かったなと思いつつ市場を再び物色する。

うーん。もしこの世界独特のしきたりなんかがあって贈って良いものいけないものがあったら面倒だしとりあえず入れ物を買って、中身はエヴォル産のアイテムで良いか。

そんな事を考えて市場で丁度良い木箱を発見。値段も銅貨3枚と手頃だし即購入。

何にしようかなぁと気もそぞろに市場を抜けゴソゴソとアイテムボックスを漁る。

「うーん。。」

人魚の涙…は綺麗だけど、意味合いがちょっとなぁー。かといって宝石類は婚約、とかって取られても嫌だし…。。

そもそも男なのか女なのかも聞いてないし。
そんな事をしているうちに懐中時計をふと見ると10分前。
「よし、これにしよう!」

選んだのはエヴォル産の赤ワイン白ワインセット。
ゲーム内では毎年酔うことも出来ないのにボージョレ・ヌーボーの様に当たり年ワイン等という収集アイテムがあったのを思い出し無難だが外れないだろうと思いこれを選んだ。

木箱に詰め直してテクテクと歩いていると待ち合わせの店へ着く。

店の扉を開くとボーイさんらしき方が少し驚いた表情を見せるがそこはプロなのかすぐに取り戻し挨拶をしてくる。

「…いらっしゃいませ」
「あの、今日こちらに伺う様にと言われていたものなのですが…。」
「…少々お待ちくださいませ。」

そう言い残し、ボーイは奥へと戻り何やら冊子をめくっている。

正直こういう堅苦しい所って苦手なんだよな。
こじんまりとはしているがきちんと清掃がされておりいかにも品が良い方限定です。って感じの。

「お待たせ致しました。スーリア様でよろしかったでしょうか?」
「ええ、そうです。」
「では、奥の扉を進んで頂いて手前から3つ目の左手のドアへどうぞ」

そう言ってボーイに鍵を手渡された。

なるほど、一瞬不親切だなとも思ったが
貴族達や人に聞かれたくない話をする場所としてはこれが逆に親切って事なんだな。

俺は意を決して、渡された鍵の部屋へと向かった。




ぎっくり腰をやりました。
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総PV400ありがとうございます。

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コメント

  • なすびo(`・ω´・+o)

    これからスーリアさんがこの世界でどんなことをなすのか‥‥気長に待ってます

    1
  • 春乃秋

    夜叉さん
    ありがとうございます!
    合間合間に書いてますので、気長に待ってくだされば幸いです。

    1
  • なすびo(`・ω´・+o)

    面白かったです!
    更新楽しみにしてます!

    2
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