ネカマな回復職の物語

春乃秋

6.いざ、冒険者登録へ!


眠い…。
今は…7時か。

この世界に時計がある事も驚きだが、明るくなった状態で見てみると中々良い部屋の様だ。

シンプルではあるが窓の縁にはうるさ過ぎない程度にひっそりと彫りがしてあったり
ドレッサーまで設置されている。

ハルブルグさんはああ言っていたが中々高い部屋なのでは無いだろうか。

今日はハルブルグさんの所へ向かってお礼を言わないとな。

俺は今日の行動を纏めつつ身支度を済ませる。

「手荷物がない状態で服は…変えない方がいいかな。」
「髪は少し空いて…っと」

俺はざっくりとした身支度を済ませ、エントランスへ向かう。


階段を降りると給仕をしている女将がいた。

「おはようございます。」
「おはよう、昨日はよく眠れたかい?」
「ええ、おかげさまで。」
「朝ごはん食べてくかい?」
「お願いします。」

俺は女将と短い会話をした後エントランス横の食堂へ入り適当な席に着く。

「朝から凄い人」

食堂は朝から賑わっており、食事の質も良いことが伺える。

席に着く際にも結構な人にチラチラと見られたがもう気にしない事に決めた。

何かあれば田舎から出てきたって事で誤魔化そう。

「お待たせしましたー」

1人で窓の外を眺めつつ考え事をしていると横から料理が出される。

「美味しそう…?」

そう疑問が残るのだ、ぱっと見は普通のベーコンの様な物とパンなのだ。

美味そうなのだがよく見るとベーコンには所々斑点がありパンには黒いカビの様な物が生えている。

「なにか?」

給仕をしてくれた女性が不思議そうな顔をしている俺の顔を不思議そうに見つめている。

「あ、いえ、なんでもありません。」
「そうですか?」

では、と言い残してお辞儀をした後また別の人に給仕をしている。


うーむ。
この世界ではこれが普通なのだろうか、別の席の出されている物を見ても同じ物が出されている所を見ると食えるんだよな?


食べてみるか。


俺は意を決してパンを口へと運ぶ。

「いただきます。」

「はふっ。」


ん?おやおや?


「美味しい…。」

意外な事にパンが美味いのだ。
パンはふっくらとしておりカビの様な部分はバナナのシュガースポットの様な甘味が口に広がる。


ベーコンも期待して口へと運ぶ。
「はふはふ。もぐもぐ。」
ベーコンは斑点が黒胡椒の様なスパイシーな香りと味がし大変美味しい。


「ごちそうさまでした。」

あっという間に完食して一緒に出されたコーヒーの様な物を流し込む。

日本人特有の合掌をして俺は一息ついた後席を立ってエントランスへと向かう。

「さて…と」
「すいませーん、女将さーん?」
「はーい、なんだい?」
「あの、これからハルブルグさんの所とギルド?へ行きたいのですが、どう行けばいいですか?」
「ああ、それなら…」


と、女将さんは快く道順を教えてくれる。

よかった、思ってたより近く迷うことはなさそうだ。昨日みたいな目に合うのはもう嫌だからな。
距離的に先にギルドか。

「俺この後暇だから連れてってもいーぜー」
「あ、お前きったねぇ!抜け駆けかよ!」

と聞き耳を立てて居たのか食堂から俺が俺がという声が飛んでくる。

「アンタらはこれから仕事があるでしょうが!馬鹿なこと言ってないでさっさと食って目一杯働きな!」

何処の世界でも母ちゃんってのは強い様だ。
結婚しているかは知らないが。

「ったく、男ってのはどうしてこう美人に弱いのかねぇ。」
「アンタもだよ。美人が夜遅くまでうろちょろしてちゃいくらスヴェドの街ったって危ないんだから夜遊びするんじゃないよ!」

とまぁ、念入りに釘を刺された。

「わ、わかりました。」

とりあえずここは素直に従おう。
反論なんてすれば結果は目に見えている。

「じゃ、じゃあ私は行きますね…?」
「はいよ、気をつけて行っといで。」

ううむ。なんか母ちゃんって感じしかしないな女将。

教えられた道を通りながら街ゆく人々を眺める。

街並みを見た時も思ったが完全に中世位の生活水準なのだが、魔法という便利なツールを得て全然違う進化を遂げた文明という感じがする。

さて…そろそろ着くはずだが。

「っぶべ」

ズザー、という音と共に男がギルドの扉から飛んでくる。

「パーティの恥さらしが!」
「てめぇなんぞ入れるんじゃ無かった!」
「二度と面見せんじゃねぇぞ!!」

と遅れて強面の筋肉ダルマ達が男を見下ろしながら口々に罵った後ギルド内へと戻って行く。

「あの…」
「ぐっ…ほっといてくれ!!」

なんだよこのギルド!怖すぎんだよ!
普通ギルドってったら強面だけどいい人とかいるんじゃねぇの?!
なんでこんな袋にされる様なとこなの?!
と、とりあえず理由を知らないと俺も同じ事になるかも知れん。

「あの、大丈夫ですか…?」
「だからほっといてく…」

男は勢いよくこちらを向いたかと思うと
固まってしまった。

「結婚しよう。」
「は?え?あの…?」
「今すぐ俺と結婚しよう。なぁに大丈夫だ、冒険者とはいえ生活の苦労はさせないさ!」

なんだろう。とんでもない厄介者と知り合った気がする。

俺はすかさず手を握ろうとしてくる男を躱してギルドへ行こうとする。

「ま、待ってくれ、すまなかった。頼む無視しないでくれ!」
「元気そうですし、頑張ってください」

俺はここぞとばかりにめんどくさい、関わるなといった気持ちも込めて満面の笑で返す。

「ああ!取り付く島もない!」

何やら騒いでいるが無視だ無視。

ギルドへ入ると中は酒場の様な作りとなっており奥のカウンターにお決まりの様に受付嬢らしき女性がいる。

一瞬チラリと先程の筋肉ダルマ達に見られたが、何事も無かったかの様に会話へと戻っている。

よかった。絡まれたらどうしようかと思ったよ。

「置いていくなんて酷いじゃないか」
「貴方と行動するとは言ってませんよ」
「見た目に反して中々に冷たい!だがそれがいい!」

はぁ、もうダメだコイツ。
関わった俺が馬鹿だった。

「あの。」
「ん?なんだい?告白かい?」

どうしてそうなるんだ。

「いえ、違いますが。どうして先程の様な状態に?」
「ああ、それは僕がクエストの失敗をしてしまったからさ…。」
「失敗をするとあんな事になるんですか?」
「いや、そういう訳では無いんだけどね。彼等とパーティを組んで森へ入ったんだけど、危うく全滅しかけてしまってね。全て僕の責任にされたってとこかな。」

なんだコイツ意外と可哀想な奴じゃないか。

「それは…ご愁傷様です。」
「まぁ、僕みたいな一匹狼にはよくあることさ。」

ううむ。思ってたより怖いな、ギルド。

「ところで君は今日は依頼かい?」
「いえ、冒険者になろうと思いまして。」

俺の一声にギルド内にいた人達が一斉にこちらを振り向く。

え?なにこれ?また?またなの?
俺そんな浮いてんの?

「ガッハッハッ」
「そりゃあ無謀だぜ」
「貴族のお嬢さんみてーな子が冒険者だってよ!」
「来るとこ間違ってんぞー!」
「帰って協会でお祈りでもしてなー」

等と笑いや罵倒が飛び交う。

「……」

馬鹿にされつつも俺は冷静にギルドの受付嬢らしき女性の元へと足を運ぶ。

「大丈夫かい?」
「僕も出来ればやめといた方がいいと…」
「静かにしてください。」

案外冷静じゃなかったみたいだ。

「あの。冒険者になりたいのですが。」
「あ、え、はい。」

あそこまで笑われながら見た目は冒険者と呼ぶに程遠い女の子が言ってくる申し出に面食らったのか戸惑いを見せる受付嬢だったがやはりプロらしくすぐに気を取り直し説明を始めてくれる。




文面が読みにくいとの指摘を頂いたので1〜5話の段落修正。

更新開きましたがぼちぼち書いております。
夏風邪でしょうか、お腹が最近緩くて死にそうです。

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