きみのその手はやさしい手

芦屋めがね

第27話

 当真晶子との交渉を決裂させた責任と家族も同然の相棒を失った真田さんの頼みという理由を背負い、いよいよ旧友を敵に回す事が確定したわけだが、いざ行動するとなるとどこから手を付けていいものか途方にくれてしまった。

 会長達に時間が欲しいと言い残し、管理棟を出た俺はとりあえず気分転換にと水場の川を遡って見る事にする。元々、昼食までの時間潰しに立てたプランだが、理事長との話し合いでそれが叶わず、遅刻の言い訳に使っただけだった。この機会に再度目指すのも悪くはないだろう。

「……と、いうわけで着いたわけだが」

 昼に行こうとした時は早々に呼び止められたので今回初めて川の根元を辿ったわけだが、ちょっとした探検を想像していた道のりは、本当にただ川に沿って歩くだけというなんとも味気ないものだった。いや、空気はうまいし、ちょっとしたウォーキングといった感じの適度な傾斜はとてもいい気分転換になったのだから、文句を言うのは罰当りとは思う。ただ単に容易く目的地に着いたのが、我がままにも拍子抜けしてしまったというだけだ。

「それでもこの滝を見るとやっぱり来た価値はあるよな」

 日原山のあちこちに流れる川の全ての支流を引き受けるだけあって、幅100m、落差60mをそれぞれ超えたちょっとした規模の滝だった。

 そこから吐き出される大量の水はそのまま川に流れればあっという間に洪水を引き起こしそうなほどだが、滝の落下点はキャンプ場の水場より大きい天然の貯水池となっていて、よほどの事がない限り川が危険域まで増水する事はないらしい。

 天乃原学園はこの貯水池の近くに浄水施設を建て、生活用水に利用しており、その事からも日原山の水源はかなりの規模である事を示している。

「さて、どうするかな」

 と言っても、ここで遊ぶ予定を決めかねているわけではなく、時宮高校側の戦力──二人の旧友についてである。当真晶子に従っている理由は不明だが、元々権力への執着のなさでは一、二を争う二人だ。少なくても天乃原学園にいる間だけでも大人しくしてもらうくらいならそう難しくない。真田さんの一件がなければ、穏便にできた。

 しかし、戦う理由が出来てしまった。真田さんを止める事はできないし、俺の方も戦う気がないなら、安請け合いなどしない。ただ、戦力差を考えると、かなり分が悪い勝負になるのは避けられない。だから頭が痛いのだ。

 特に痛いのが、真田さんの刀についてだ。あまり深く考えていなかったが、『怪腕』である真田さんの握力に耐えられる刀だ。そうホイホイと代わりのあるわけがない。おそらく当真家が真田さんの為に用意した特注品なのだろう。つまり、真田さんは素手で剣太郎の相手をしないといけないのだ。

 厳密にいえば、刀身はまだ残っている。ただ断ち割られたわけではなく、剣太郎の技量で斬られた刀だ。おそらく残された部分のダメージは皆無、そのまま武器にできなくはない。まぁ、使うと言っても、刀身そのものは柄よりも短くなっている。あれならコ○助の刀の方がまだマシだ。

「……いや、だからいいのか」

 とある可能性からそう思い直す。できるかどうかは真田さん次第だが、これなら一矢報いる事が出来る。とりあえずプランは固まった。後は──



「──まさか、再戦する気があるとは思いませんでした。しかもこんなにも早く」

 空から夕日の名残がいよいよ夜に塗りつぶされていく、いわゆる黄昏時。管理棟で寛いでいたところを捕まり、唐突な再戦の申し出にまだ逆らう気力があったのか、という疑問を口にする当真晶子。

 食堂で戦ったのが三時少し前、現在、五時をまわったばかり。差し引き二時間弱からのリベンジ宣言は、皮肉交じりとはいえ向こうが早いと感じるのは無理もないだろう。

 そんな当真晶子の反応を受け流し、再戦の否やを問うたのは仕切りたがりの会長ではなく、真田さんだった。会長もさすがに今の真田さんを押しのけてまで出しゃばる事はせず、後ろの方で大人しくしている。……見方によっては当真晶子は部下で充分という体にも見えるけどな。

「……まぁ、いいでしょう。すでに優劣をつける意味がないとしても、降りかかる火の粉は払うのは当然。お受けしましょう」

 天乃原との交渉決裂を恨みがましく皮肉る当真晶子だったが、勝負そのものは受けるようだ。向こうにとって、明らかに格下の挑戦を逃げるなんてあり得ない。むしろ昼の一件の憂さ晴らしをする腹積もりだろう。それでも……

「(……受けちゃったよ)」

 自力に大きな開きがあるのはみな承知している、戦った飛鳥も真田さんも、会長もそして、俺もかなり厳しいとわかっている。だが、それでも、勝負はやってみないとわからない。特に彼我の差を理解し、その上で勝つ事を諦めない奴を相手にする時は警戒の一つもするもの。当真晶子のそれは強者の余裕ではなく、安請け合いの類だ。

「それで勝負はいつですか?」

「今からだよ。場所はキャンプ場の広場でいいだろ? ここから近いし、多少暴れても気にしなくて済みそうだしな」

 場所をどこにするか決めていないのを思い出し、真田さん達に確認しながら俺が言う。

「……今からですか?」

「別に不都合はないはずだが? どうせ、ここにいる限り暇な事に違いないわけだし問題ないだろ。ま、晩飯の前の軽い運動って事で」

「……まるであなたも加わるみたいな口ぶりね」

「? そのつもりだが何か?」

「……ほう」

 当真晶子の後ろで会話に加わる事のなかった剣太郎が初めて反応を見せる。

「そんなに意外か? 一応、昼の時も戦おうとしたのを忘れたのか“刀山剣太郎”」

「そういえば、そうだったな“御村優之助”」

 にこりともしない表情の中でも特に手強そうな口元がほんの少し歪む。あれで笑ったつもりらしく、無愛想さは相変わらずのようだ。横の空也も肩をすくめている。──懐かしいでしょ? そう言ってみせるように。

「昼の続きという事は三対一で戦るつもりか?」

「そこまで自惚れてねぇよ。三対三だ」

「剣太郎。一応、雇い主なんだから、頭数にいれるの禁止。三対二だよ。それでいい“御村”くん?」

「それでいい。今回は真田さんのリベンジマッチがメインだ。最悪、お前がいるなら問題ないよ──“刀山”」

「待ちなさい!」

 俺達の打ち合わせに割り込んだのは二人の雇い主である当真晶子。自分を蔑ろにするのは許せないのか、明らかに苛立っている。

「篠崎、刀山、あなた達は私の補佐として連れてこられたはずよ。立場を弁えなさい」

 まるでしつけの悪いペットにするような叱責を二人に向けて言い放つ。それに対して空也が申し訳ありません、と頭を下げ剣太郎を連れて、二、三歩後ろへ引き下がる。当真晶子を立てた格好だ。

 ……面倒くさい奴だな。会長も真田さんから雑な扱いを受けた時も大概だったが、それとは訳が違う。下がった空也が当真晶子から見えない位置から困ったように手を挙げる。気にしなくていいと目線で返し、何事もなかったように当真晶子に向き直る。

「何か問題がありましたか? 当真晶子さん」

「わざとらしい謙虚さはやめてもらえるかしら。礼儀知らずより、よほど不愉快だわ」

「皮肉だよ。分かりづらくてごめんね」

 当真晶子の睨みが先程より二割増しになる。礼儀知らずの方がマシと言わなかったか?

「……御村、暗くなる前に済ませたい、話を進めてくれ」

「……すまん」

 真田さんに無表情で窘められた俺はそれ以上当真晶子に食って掛かる事はせず、時間、場所に不都合がないか確認する。当真晶子はそれに了承し、二時間ごしの再戦がきまった。

  再戦の場所に指定した広場は管理棟とコテージを繋ぐ位置にある為、夜間緊急時に双方が連絡できる必要性とその際の安全面の観点から等間隔に電灯が配置されており、ほとんど日が落ち暗くなった周囲をその光が淡く照らしていた。

 広場には俺、飛鳥、会長、真田さん、当真晶子、空也、剣太郎の七人。要芽ちゃんは晩飯の用意でこの場にはいない。

「──御村」

「なんだ? 真田さん」

「先に礼を言っておく。世話になった、……ありがとう」

 剣太郎を見据えたまま、俺に感謝を伝える真田さん。……ありがとうって言葉にされると不思議と気恥ずかしいな。

「まだ早いだろ」

「いや、ここまでお膳立てしてもらえれば充分だ。後は私次第、それでいい」

「間違えるな、真田。私達次第だ」

 飛鳥が真田さんの言葉を訂正する。そういえば、この二人が会話する所をあまり見た事がないな。生徒会がお世辞にも和気藹々とは言えない集まりなのは重々承知しているがこんな調子で大丈夫かと始まる前から不安になる。

「心配しなくていい」

「飛鳥?」

「目的は一致している──向こうに借りを返すと言う、な」

 借りを返すべき相手、空也と剣太郎はすでに準備完了と言う感じ。剣太郎の手には昼と変わらず、モップの柄。……緊張感が削がれるなぁ。しかし、そんな俺とは裏腹に飛鳥と真田さんの戦意に翳りは見られない。

「(こちらも準備万端という事か)」

 むしろ二人の仲を見当違いにも心配していた俺の方が準備不足だったらしい。

「それじゃあ、手筈通りによろしく」

「あぁ」

「任せろ」

 真田さんの愛刀が短く、控え目ながらも電灯の光を反射させ、飛鳥の呼吸が深く鋭く辺りの音に浸透する。俺達から少し離れた場所には見届け人の会長と当真晶子。講堂で真田さんと戦ったようなデモンストレーションじみた見世物ではないから、盛り上げ役のMCは必要なく、二人はただ決着を待つ。そして、これは試合ではない、当人同士が納得した時こそ決着。

「──いくぞ!」

 真田さんがそう叫ぶと同時に一本指歩法で剣太郎へと駆ける。それに置いてぼりをくわないよう俺も最初の一歩を強く蹴り出し、向かっていく。

 天之宮、当真の企みで集められたはずの連中が起こした両家の思惑とは関係ない私闘はそんな風に始まった。


      *


「──いくぞ!」

 自分の中にある空気を吐き切るように絞り出された声。慣れた腹式呼吸から出たのは空気だけではなく私の意志が乗っているのかもしれない。

 知らず手に力がこもる『怪腕』が生み出す握力に負ける事なく付き合ってくれた刀は刀山剣太郎に刀身を短くされてもなお、私の手にあり続けてくれた。私はそれに応えたい。そんな感傷を抱いて今から挑むのは私にとって初めての自分の為の戦い。

 一本指歩法で刀山剣太郎との距離を詰める。『怪腕』の筋力で行う加速は当真瞳子より速いと自負するが、近づく刀山の表情は動かない。落ち着いた動作で私との衝突する予測地点から手前の空間を薙ぐように振るう。得物がただの棒であってもそこに込められているのは本物の切れ味。そのまま進めば私の体は二つに分かれるだろう──この刀のように。

 体を今まで以上に前傾させ、一本指歩法を維持する──当真流剣術、一本指歩法『不知火』。相手の膝辺りまで低く走る事で無造作に振るわれた攻撃をくぐるようにかわす。私と刀山の体が交錯し、何事もなく通り過ぎる。

「……かわされたか」

 そう呟く刀山の声に外した事への悔しさはない。あくまで自分へ向かってくる私を追い払ったとしか思っていないのがわかる。事実、私を“斬ろう”したつもりはないのだろう。本当に“斬る”つもりなら、私がどんなにかわそうとしても斬る事が出来たはず。『不知火』でかわしたのではなく、刀山が何の気なしに出した剣を“ぶつからないよう”に避けたと言う方が正しい。

「お前の腕では届かない。それは理解していると思っていたんだがな」

「……あぁ、理解しているとも。だから手段を選ぶつもりはない」

「何? ──っ!」

 瞬間、刀山あらぬ方向へ得物をかざす。ほぼ同時に舌打ち交じりの呼気を纏い、しなやかな突きが刀山の肩口を掠めていく。

「──あの距離まで近づいて肩の皮一枚が精一杯か」

 刀山の反撃を警戒した分だけ、踏み込みが浅くなったのだろう。奇襲を失敗させた事を苦い顔でそう評したのは、同じ生徒会の桐条飛鳥。刀山への警戒を続けたまま、私へ向けて済まない、とアイコンタクトを送る。

「構わない。打ち合わせ通りだ」

 私が先行して刀山の初太刀をしのぎつつ後方を確保し、刀山の意識をこちらへ向けさせる。その隙を突いて、桐条は刀山に奇襲を掛け、その成否に関わらず深追いせず、私とで刀山を挟み撃ちにする。少し離れた所では御村が篠崎空也が対峙したままこちらの邪魔をしないよう立ち回っている。私と桐条が刀山と相対し、その間、御村が篠崎を抑えるという形。

「俺の剣を知って、この戦況に持っていくとは──正気か?」

 『優しい手』を持つ御村でなければ、勝負にもならないという事だろう。

「なんとでも言ういい。直接借りを返す為なら恥も外聞も捨ててやる」

 啖呵を切る私を見て桐条がらしくないな、と苦笑している。

 恥も外聞も捨てる。この戦いの少し前、刀山とどう戦うかを打ち合わせた時、御村にもそう言った事を思い出す。


 ──本当にいいのか? 『剣聖』について聞かなくて。会長にああ言ったんだが、手段を選ばないというのなら聞くだけなら損ではないと思う。
 
 ──構わない。手段を選ぶつもりはないが、それをお前に押し付けるつもりもない。……友人なのだろう?

 ──すまん。

 ──いいさ。その代わり、私が『剣聖』に勝てる、とはいかなくても一矢を報いる可能性を示してほしい。私に出来る事なら恥も外聞も捨ててでもやってみせる。

 ──わかった。ならまずは──


 そして回想の御村と私の口元の動きが重なる。

「“飛鳥”! 『飛燕脚』で攪乱。ただし、深追いはするな!」

「了解!」

 私の意図を正確に理解した桐条の体が風景とズレていく。使用者の挙動を完全に隠す『飛燕脚』ならではの現象。……いつ見ても凄いと思う。『桐条式』という武術も桐条飛鳥本人も。だからこそ信じて託せる──自分がやるべき事に集中できる。


 ──刀山剣太郎の斬撃を受けるのはまず無理だ。どんなになまくらだろうが、刃がなかろうが、その手に持てばあらゆるものを斬る事が出来る。斬りたい部分だけをピンポイントで狙って斬ったりも、な。そうめんの束で色がついている部分があるだろ? わざわざ一度抜き取って、真ん中の方に紛れ込ませたのにその部分だけ斬ってみせた時は驚きを通り越して引いたよ。……話が逸れたな。つまりどんなガードも無意味なんだ。剣太郎と戦う時は、どれだけ攻撃されないかが肝になる。そして、今回はそれを実現するのにピッタリの人材がいる。


 『飛燕脚』を持つ飛鳥が前衛に立つ。それが、この作戦の前提であり、必須条件だった。

 そして桐条はそれを迷うことなく引き受けた。一番危険な役割を、一番戦う理由がないにも関わらず、大して親しくしたわけではない私の為に。

 なぜを問う私に桐条は迷いのない真っ直ぐな瞳で言う。

 ──優之助が私に頼むと言った。自分一人では出来ない事を頼み、任される。それに応えたいと思うのは当然だろう? それに、

 ──大切なものの為に戦うという気持ちはわかる。はにかみながら、そう言った桐条を私はどんな顔をして見ていたのだろう。

「……なるほど、優之助が任せるだけはあるな」

 刀山の呟きには桐条への賛辞が込められている。『飛燕脚』で距離感が合わない為か私に向けて放った初太刀以降、刀山が仕掛けたのは一度もない。一太刀で桐条を捉えられなければ、桐条はもとより、私にも攻めを許すからだ。

 ただ、桐条の方も攻勢に回る事はできない。触れれば斬られる刀山の攻撃は完全にかわせなければ致命傷となる為、得物が届かないギリギリの位置を常に意識して動いている。

 この間、私に出来る事は刀山“だけ”を見る事のみ。当然だが、『飛燕脚』の視覚誤認は味方である私にも通用する。下手に俯瞰で見ると桐条の動きにつられ、いざという時、動けない。だから私は刀山だけを見続ける。それだけしかできない事に対するもどかしさに耐えながら。

 今のところ、両者攻めあぐねている格好だが、刀山の構えは二対一という状況でありながらも揺らぐ気配がない。対して桐条は『飛燕脚』を常に使い続けている為、運動量は刀山とは比べ物にならないほど消耗している。このまま膠着が続けば、崩れるのは桐条の方が早い。

「っ!」

 例えるなら、水泳の息継ぎのタイミングを間違えた時の様な呼吸の乱れ。大方の推測通り、それは桐条のものだ。そして、対峙する刀山にそれを見逃す甘さはない。手にある得物が剣呑な空気を纏わせながら、ゆっくりとさえ見えるほど自然に動く。

 ──今だ。

 瞬間、私は飛ぶように走る。当真流剣術、一本指歩法『不知火』。桐条が前衛で攪乱し、刀山がそれにつられた時、私が強襲する。それがこの戦いにおける基本的なプラン。

「……ふん」

 刀山がつまらなそうに鼻を鳴らす。二対一が前提の立ち合いで私が隙を突いてくる事など想定しているとばかりに。切っ先が私の方へと揺れる。

 刀山の構えは正眼を基本に盾を持たない片手剣で戦う様な形。およそ斬るというには向かない構え、それが刀であるというのなら尚更だ。あれでは一寸斬れるかどうか怪しい。

 ただし、それは普通の使い手ならという話。得物、対象を問わず斬れる『剣聖』にとって、むしろあの構えが自然なのだろう。もしかするなら『怪腕』で刀の重量を苦にせず戦える私が目指す先かもしれない。ただそれも後で考えるべき話。

 短くなった私の刀が届く頃にはもう私の方を向いている。両手で構えるより小回りが利くという事。後は私の動きに合わせて斬るだけで済む――私が刀山を攻撃するならそうなる。

「はずれ、だ『剣聖』」

 刀を片手に持ち替え、右半身を前に突きを出す。狙いは刀山ではなく、刀山の持つ“得物”だ。


 ──飛鳥が攪乱してから、ここぞというタイミングで奇襲を掛ける。ただそれだけだと剣太郎には通用しない。普段の刀で普通に剣太郎を狙えば、返り討ちだ。ただし、今の刀ならば、勝機はある。

 ──最悪、剣太郎の攻撃を止められればいい。徒手格闘の間合いで近付けるなら、その短くなった刀なら得物を取回す関係上、先手が取れる。……まぁ、そこまで近付くのが一番大変なんだが、飛鳥の『飛燕脚』を相手にすれば、いくら『剣聖』といえど、接近を許してしまう。そこから先は真田さん次第だ──今回の作戦目的“武器破壊”の成否は。


 桐条のおかげで前提は達した。後は“当真流剣術を使えないという御村の勘違い”を正すだけ。講堂で使うつもりがなかったその技は──

「──『炎竜』」

 『不知火』の加速を充分に後押しに放たれたその突きは、刀山の得物を狙い違わず命中した。

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