天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

13話 蹂躙

 いつもより早起きをしたスグルはドリューに朝食とお昼の弁当を貰って南門に向かう。門に向かっている途中すれ違うプレイヤーと自分を見比べて自分の装備の薄さを確認し、近場にあった寂れた雰囲気が出ている武器鍛冶屋に入る。

「すみませーん……やってますか?」

 手入れの行き届いていない店内を見て営業しているのか気になるスグルは声をかけつつ辺りを見わたす。すると店の奥から背が1mと小さい筋肉ダルマの様な男が出てくる。その姿は公式ページでみたようなドワーフそのものだった。

「あー?客か?珍しい事もあるもんだ!」

 出てきたドワーフは片手に酒を持ちながらガハハハハハと大きな口を開けて笑っている。

「ちょっと武器を見せてもらいたいんだがいいか?」

「笑わせんじゃねぇよ!てめえみたいなガキにはこいつで十分だろうよ!」

 笑いながら1本の錆びれた剣を投げてくる。

 投げられた剣を掴んだスグルは剣を試し振りを行い剣のバランスを確かめる。

 この剣錆びてはいるがこれを打った鍛冶師は相当な腕だと見ただけで分かるなぁ。この爺さんが打ったのか?

「これを打ったのは爺さんか?」

「それは酔っぱらった勢いで作った駄作だ!」

 ドワーフはガハハハハと笑う。

「いい腕してるな。バランスも良く鉄に粘り気もあって頑丈そうだ。いくらになる?」

「へ~いい目してんじゃねぇか!ちょっと待ってろ」

 ひょうきんだったドワーフの爺さんは急にまじめな表情になり裏から一振りの長刀を持ってくる。

「小僧がこの刀を使えるならただでやってもいいぞ!持ってみな」

 カウンターに出された一振りの刀を見て明らかに周りに置いている剣とは似ても似つかない出来だと一目で分かる。スグルは恐る恐る刀を握ると見た目では考えられない重さを実感する。思わずスグルは鑑定を行う。


【武器種】妖刀   【等級】ユニーク  
【名前】妖刀 アカツキ 
【製作者】ガンツ=グラッツェ
【スキル】??? ??? ???
【固有特性】成長EX(魔素を吸うことで成長する)

【武器ステータス】
・物理攻撃力  0
・魔法攻撃力  0
・物理防御力  0
・魔法防御力  0
・敏捷     0
・器用     0
・運      0


 何だこれは……鑑定を行う前から異常だとは思ってたが鑑定を行って改めて異常だと認識する。俺のステータスは種族補正もあってかなり高いというのに、この刀は武器ステータスが全て0と上昇無しでこの重さは異常でしかない。

「ほう……その刀を持つたぁやるじゃねぇか!その刀は俺が全身全霊で打った武器の1本でかなりの出来だ。しかし頑張りすぎたせいか妖刀化しちまって最近じゃ持ち主が見つからず困ってたんだ」

 またもやガハハハハハと大きな声で笑う。

「その武器貰ってくれねぇか……その武器はまだこれから強くなるから後悔はさせねぇと思うぞ」

「逆にこちらからお願いしたいくらいだよ。こんないい刀貰っていいのか?」

「あぁ是非貰ってくれ。タダにする代わりと言っちゃなんだがたまにでいいから武器を店に来てくれねぇか?」

「了解した。同じ一鍛冶師として自分の打ったものがどう成長するか気になる気持ちは分かるからな」

「なんだお前も鍛冶師なのか!ならここの鍛冶場を貸してやるからそん時に見せてくれたらいいぞ!後俺は言っておくがまだ190歳で爺さんじゃねぇ!覚えとけ!」

 ガンツからこれから長くお世話になる愛刀を頂いたスグルはお礼を言い長刀を腰に差して門に向かう。

 足早に門を出たスグルはまっすぐ森に向かって歩き始める。現実での戦闘行為は慣れているとはいえゲームでとなればスグルは童貞だ。現実であれば紛争地域での戦闘も行ったこともあればマフィアのアジトを妹の為に潰したこともあるが相手はあくまで人間でこの世界に存在するような魔物(モンスター)ではないのだ。

 初めての魔物狩りに心をわくわくと躍らせながら歩いていると目の前には一匹の魔物の狼がこちらに向かって走ってくる。戦意のある魔物の気に当てられスグルは思わず口元が緩むと同時に集中力を引き上げる。

 っは!っと掛け声と共に踏み込んで飛び出しアカツキを抜刀した勢いで狼の首を跳ね飛ばす。

 初めての狩りってのもあって緊張したな。アカツキに傷も入ってないし問題なさそうだから次からはどんどん狩っていけそうだ。

 その後も時たま出てくる狼やゴブリンの頭を切り捨てながら森に駆け足で向かう。スグルが森に着いた頃にはレベル3に上がりステータスも上昇していた。森に足を踏み入れると魔物のものと思われる気配が感じられる事もあってスキルの気配探知と魔力探知・隠蔽をフル稼働させつつ奥に向かう。

 森自体はそんなに生い茂ってる感じなくて普通の森なのに何でこんなに暗い雰囲気なんだ。奥に行けば行くほど大きな気がはっきりと感じるようになっているし大丈夫かこれ……問題のゴブリンは森に入ってから見かけないし……

【隠蔽がレベルⅤにアップしました】
【気配探知がレベルⅤにアップしました】
【魔力探知がレベルⅢにアップしました】

 おぉスキルのレベルってこんなに上がりやすいんだな。ここにきてずっと使っているとはいえ2レベルずつ上がると体感でも結構スキルの恩恵を感じる。となるとやはり森の中心にある大きな気配は俺の気のせいじゃないんだな。

 スグルはあっさりスキルレベルが上がったものだから気が付いていないが本来はそれに見合った熟練をへてレベルが上がっていくようになっている。しかしこのTAOは現実の身体に染み付いた経験・才能も反映させるので現実でこの程度素でできてしまうスグルはレベルが上がりやすくて当然なのである。

 どうする……あの大きな気配を無視して一度報告に帰るのもありだが、まだ物足りないんだよな。せっかくここまで来たんだし行けるところまで行ってしまうか。

 進むことを決めたスグルは出てくる魔物を切りながらゴブリンの巣である岩山を発見する。そこには横穴があり大きな気配と異常な数の気配も中からする。スグルは更に集中力を上げると不意に背後に悪意を察知する。スグルはすぐさまアカツキを抜き後ろから飛びかかってくる素早いゴブリンの首を切る。

「何でこんな近くまで気が付かなかったんだ……」

 近づかれるまで気が付けなかったことに驚き鑑定をしてみる。

【ゴブリン忍者 Lv.10】
   スキル:隠蔽Ⅳ 短剣術Ⅱ

 なるほど、このゴブリンは隠蔽を使っていたのか……ここに来るまでに気配探知をⅤまで上げてなければ危なかったな。しかし今後もこんなスキル持ちの魔物が出てくるならかなり気を引き締めないとヤバそうだ。

 気を引き締めたスグルは一気に入り口にいるゴブリンに近づき声を発する前に首を刎ねる。すぐさま次の気配に向かって走り次々と切り落としていく。

 「195・196・197・198・199……次でクランクエストの討伐分は終了だな……」

 近くに敵がいないのを確認して持ってきていたお弁当と一緒に持たされていた水筒を取り出し水分補給を行い一息つく。

 それにしても本当にここは初心者に優しい狩場なのか?スキル持ちのゴブリンをはじめ連携を組んでくるのから魔法を使って攻撃してくるゴブリンメイジなんてのもいた。こんなところ普通一人で来れる一般人がいるとは思えないんだが……この森に入る前はちらほらプレイヤーらしき人たちも見かけたが森に入ってからは一人も見かけていない。いや、ずっと後ろをこそこそつけてきてるやつが一人いるが悪意を感じないから放置してるがどうしたものか。

 すこし考え事をしていると前からどすどすと大きな音をたてて一匹の大剣に鎧を纏ったゴブリンが姿を現す。ここにきて未知の敵と戦う時には鑑定を行う癖をつけたスグルはすぐさま鑑定をする。

【ゴブリンジェネラル  Lv.25】
  スキル:身体強化Ⅲ 威圧Ⅲ 大剣術Ⅳ 体術Ⅱ

 これはヤバくないか?……スキルレベル平均値が俺より高い上にレベルも差がありすぎだろ。

 スグルはここまでの狩りでレベル5まで上がっていたがそれをふまえても20の差があるのである。

 ゴブリンジェネラルからの威圧を受けて冷や汗がでるが強敵との遭遇と自分の愛刀であるアカツキがどこまでできるのかと言う好奇心で思わず笑みがこぼれる。

 3m近くありそうなゴブリンジェネラルの巨体からは考えられない速度でスグルの間合いに踏み込み大剣を上段から振り下ろしてくる。スグルはそのスピードに驚きつつも何とかアカツキの刃先を大剣の腹にあてて攻撃をそらせるもゴブリンジェネラルのパワーが上回り完全に回避しきる事は出来ず腕に傷をつくる。

「っく……まさかこれほどのパワーがあるとは思わなかったな」

 スグルは今までのように相手の動きを見てから動くようでは間に合わないと察して、横薙ぎを始めた大剣を回避したあとすぐさまスグルがゴブリンジェネラルに間合いを詰めて大剣を握っている右手にステータス任せの回し蹴りを放つ。

 指関節を折られたゴブリンジェネラルは痛みに思わず大剣を手放しそのまま投げてしまう。ゴブリンジェネラルは無事な左手で大剣を取ろうとしてスグルから目を切り飛んで行った大剣を拾いに行こうとする。

「そんな隙だらけな敵を待ってやるほど俺はお人よしじゃないんでね」

 背を向けたゴブリンジェネラルに向かい全力で間合いを詰めて跳び、ゴブリンジェネラルの首を刎ねる。

 ゴブリンジェネラルを討伐したのと同時に多くのシステムメッセージが流れる。

【レベルが8に上がりました】
【鑑定がレベルⅡにアップしました】
【威圧がレベルⅢにアップしました】
【気配探知がレベルⅥにアップしました】
【魔力探知がレベルⅤにアップしました】
【隠蔽がレベルⅥにアップしました】
【条件を満たした為、刀術を習得しました】
【刀術がレベルⅡにアップしました】
【条件を満たした為、抜刀術を習得しました】
【抜刀術がレベルⅡにアップしました】
【条件を満たしたため称号:「強者を狩る者」を入手】

 刀術と抜刀術はおそらくアカツキを使って狩っていたから習得したんだろうけど……この称号はなんだ?

 敵が周りに居ないこと確認して称号に鑑定をかける。

【称号:強者を狩る者(レベル20以上の差をものともせずソロ討伐をした者に贈られる称号。自分よりレベルが高い敵との戦闘において全ステータスに+200の補正)

 ……レベルが上と言う条件があるとはいえこのステータス補正はいわゆるチートに感じるのは俺だけか。ほぼ普通の種族補正しか受けてない駆け出しがもしこの称号を持ったらステータスがほぼ2倍に膨れ上がってる事になるぞ。

 システムメッセージの確認を済ませたスグルは腕の傷の応急処置を済ませた後、スグルが来た道に視線を向けてそこで気配を消して立っている人間に声をかける。

「いつまでそうしてつけてくるんだ?出てこないならこちらからいくぞ」

 気づかれていると思っていなかったのかビク!と驚きゆっくりと歩き始める。

「行く!今行くよ……まさか気が付かれているとは思わなかったよ」

 やれやれといった様子で出てきた。

「ずっと気は付いていたが害意を感じられなかったから放置してたがここからは下手についてくるとケガじゃすまないかもしれないよ」

「なるほど忠告と言うわけね……」

「そう言う事だ。とりあえず一息つくつもりだからその仮面をとって話でもしないか?」

 スグルは物腰は柔らかだがしっかりアカツキにを握り威圧を使用している。

「分かった!分かったから。私はあなたに害意も敵意もないからそんなに威圧しないでくれない?」

 負けを認めて諦めた様子で手に何も持ってないのをアピールしながらスグルの前に座る。

 スグルもその様子を見てアカツキから手を放し、威圧もやめる。

 仮面をかぶった人間はスグルの様子をみて一安心したのかゆっくりと仮面に手を掛ける。

 

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