天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

10話 初めてのスキル習得

 スグル達は入手した薬草などを冒険者ギルドで売ったお金を持って月の宿のドリューのもとに行く。
 店の扉を入るとスグル達を見たドリューはあきれたように頭に手をのせて空を仰ぐ。

「300Gだとっとと服の汚れを落としてこい!店が汚れちまうだろ。」

「ドリューさんすみません。今日もギリギリなんです」

 カナが申し訳なさそうにドリューに謝る。

「気にするな!無一文だった朝から一日で300G稼げる力があることは実証されたわけだからな」

 ドリューはガハハハハハと豪快に笑う。
 
 スグル達はドリューに言われたように服の汚れを落とし貰った湯で体を各々拭いていく。用事を済ませたスグルは今日の一角うさぎの捕獲を思い出しながらレベルの上がった隠蔽スキルを調べる。

 なんであんなに一気にレベルが上がったんだろう。そこが皆の習得への一歩だと思うんだよなあ……

 考え事をしながら足元を見るとそこには一角うさぎが座り込み体を密着させてくる。

 よくよく考えたらこの街大丈夫か?魔物であるこいつ普通に街に入れたぞ?質問すらされることなく帰ってこれたけど……まぁ門番にもギルドにも何も言われなかったから大丈夫なんだろうけどさ。そもそもなんでこいつこんなに懐いてんだ?我が妹情報だと大体魔物が懐くのはパターンがあるって言ってたな。たしかエサなど懐く確率を上げるアイテムをあげるもしくはかかわりの深いアイテムを使用する、もう一つが上下関係を築く……もう100%これだよな。

 はぁと思わず一角うさぎをみながら溜息をつく。

 こいつの事はとりあえず置いといてスキルの習得とレベルアップの条件に目途を付けないとな。レベルが上がった瞬間はもっと気配を薄くして近づこうとしてたらあがったからな。ん?……もともと初期スキルは現実の身体が出来ることをもとに作成されてそこから選んだはずだから元々俺は隠蔽が使えてたってことだからレベルⅢまでは現実の身体で再現できるからあんなにあっさり上がったと考えればつじつまは合うな。

 ドリューが作った豚の角煮の様なものを食べて皆が眠りについてからもスグルは考えるのをやめない。

 そもそもタクミはともかく他のみんなは能力的には種族補正が大きくて異常に見えるが現実の身体は普通よりちょっと性能がいいくらいで俺やタクミみたいに異常と言われるレベルではない。ならまずは気配を薄くするやり方を体が理解しなければそもそもスキルとして顕現しないんじゃないか?試してみる価値はありそうだな。

 明日試すことを決めたスグルは疲れを残さない為に寝床に着く。



「なぁ皆に提案があるんだけど……」

 タクミはスグルが考え事でその場にいないスキを見て女性陣を集める。

「どうしたの急にあらたまって」

「今日のあいつを見てて思ったんだが今の俺たちは完全に足手まといで足枷にしかなってないと思うんだ。そこで提案なんだが、隠蔽を習得したら一度各々でこのゲームと向き合ってみないか?」

 タクミは足手まといになってる悔しさを隠しきれず顔に出す。それを見たカナは表情を少し曇らせる。

「正直な事を言えば嫌と言いたいけどスグルがやりたいと思ってることの邪魔をするのは私も違うとは思ってるわ。だからタクミ君の提案には賛成ね……このまま何も出来ず置いていかれて金魚の糞みたいなのはゲーマーとしてもプライドが許さないし」

「私もゲーム初心者のお兄ちゃんに負けっぱなしは嫌だしそれにこのゲーム、クランシステムがあって1日一回クランメンバーの元に瞬間移動ができるらしいから会おうと思ったらすぐ会えるもんね!」

「クラン?ギルドみたいなものですか?そういうのがあるなら私もいいですよ」

 女性陣はタクミの提案に嫌と言う気持ちはあれどスグルの足止めをするのは、スグルに思いをよせてる3人の女のプライドがそれを許さない。

「じゃあ朝一で役所に行ってクラン作成の手続きをしよう」

「「「さんせーーーーーい」」」



 目を覚ましたスグル達は食堂に行きドリューの出してきた肉と卵の挟まったサンドイッチに舌鼓をうちながら今日の日程について話し合うとタクミがスグルに昨日話し合ったことを明ける。

「スグル昨日話し合ったんだが、隠蔽を習得出来たら一回別行動をしないか?俺達としても足手まといになるのは嫌なんだ」

 真剣な表情で話すタクミを見て軽い気持ちで決めたわけではないのを察したスグルは少し考える。

「別に足手まといなんて思ってないけど皆考えがあってのことだと思うから止めないよ。じゃあ予定より早いけどクラン作っておこうか?」

「「「え クランのこと知ってたの?」」」

 スグルがこのゲームについてそこまで調べていたことに驚きを隠せない。

「お前たちは俺を何だと思ってんだ!知らないことなんだから調べれるだけ調べてるに決まってるだろ」

「なんだ?お前たちスキルの習得に困ってんのか?」

 食べてる様子を見てたドリューは話し合いをしてたスグル達に話しかける。

「昨日思うように習得できなかったから今日は別の方法を試してみるつもりなんだ」

「だったら特別にうちの地下にある修練場を使っていいぞ」

「地下?修練場?」

 スグル達は何言ってんだこのおっさん?と失礼にも思ってしまう?

「てめぇら今何か失礼なこと考えなかっただろうな?……まぁいいついてこい!」

 厨房の奥の物置に行くと下へ続く隠し階段があった。ドリューに連れられるまま階段を降りるとそこには東京ドームが収まりそうなほどの広さがある空間があった。

 おいおいおいゲームってのは何でもありなのか?こんなバカでかい空間が地下にあったら上が崩れるだろ普通……

「言っておくがこの空間は魔法で拡張・固定してるから崩れたりしねえぞ。この修練場は俺の運動不足解消に普段使ってるだけだからお前たちには泊まってる限り自由に使わせてやる」

「ありがたく使わせてもらうよ」

「そういえば聞いた話だから何とも言えないが来訪者は体が覚えてないことはスキルとして覚えることが出来ないって聞いたことあるぞその辺は大丈夫なのか?」

 昨日その可能性にやっと行き着いたってのにここにきて答えを貰えるとは何ともよろこびにくいなぁ。

「なんとなくそうなんじゃないかと思ってたよ」

「まぁ才能次第だってことだな!ぼちぼち頑張れや。昼飯は作ってやるから上がって来いよ」

 ガハハハハと笑いながら帰っていくドリューを見送りスグルはさっそく隠蔽習得に向けてやることを説明する。

「今日皆にやってもらおうと思っていることはいたってシンプルでマネをするだけだ。マネをして繰り返すことで体が覚えたらスキルとして覚えられると思う」

「なるほどさっきドリューさんが俺達は体で覚えないとスキルとして覚えられないって言ったのはそう言う事か……」

 タクミは直ぐに理解したが、普通の生活を送ってきたミレイやカナ・ナホがこれを習得するするのは大変なんじゃないか?と思ってしまう。

「まずは各自リラックスできる姿勢をとってくれ。そしたら深く呼吸をしながら目をつむって周りの気配を探っていくんだ、そこまでできたら周りの空気に自分の気配を混ぜ込むイメージでとこませようとしたらいい」

 皆やってみるもなかなかうまくできない。特に女性陣が抽象的な表現が体で理解できず悪戦苦闘をしいられる。

「分かりやすいかどうか分からんが、かくれんぼの時に息をひそめて鬼が通り過ぎるのを待つだろ?あんな感じをイメージするといいかもな」

「お!俺は隠蔽スキル覚えたぞ。それのおまけみたいな感じで探知も覚えたな……」

 どうやらタクミは棚から牡丹餅のように探知スキルを習得したみたいだな。分かっていたことだけど3人は苦労しそうだ。

 そのまま4時間ほど習得に励み昼過ぎには何とか全員習得までこぎつけた。タクミに至っては隠蔽を使ってスグルと鬼ごっこやってたら隠蔽のレベルが一つ上がった。

「てめぇらいつまでやってやがる!」昼には上がってこいつっただだろ!まったく。それでスキルの習得は出来たのか?」

「何とか無事に全員終わったぞ」

「そうかそれじゃ飯食ってこれ持って騎士団の詰め所に行きな」

 月の宿のロゴが入った手紙をスグルが受け取るもののこれが何なのかわからない。

「これはなんだ?」 

「ん?それはクラン作成の推薦状だ。作るんだろ?お前たちもしかして誰でもすぐクランが作れると思ってんじゃないだろうな?」

 違うのか?てっきり誰でも作れるんだと思ってたわ。

「そんなことしたらクランだらけになるだろうが。クランは最低5人集めて推薦状がないと作成不可能だ、詰所に行っても門前払いだぞ。クランはお前たちが何か功績を遺すたびに使われる名前になるからよく考えて名前を決めたほうがいいぞ」 

「ドリューさんありがとうございます!色々教えていただいて」

「「ありがとうございます」」

 カナ・ナホ・ミレイは元気よくドリューに頭を下げる。

「いいって事よ!ついでに言っておくと今日はもうクランの受付やってないから明日になるんだけどな」

 ドリューは照れを隠すようにガハハハハと笑う。

「え!?もう受付やってないのか?まだ昼だぞ」

「クラン作成時に作られるカードが時間かかるらしくて昼前に受付しないと無理だって噂だ!残念だったな。まぁ今日はスキル習得で疲れてるだろ今日は俺のおごりだゆっくりしてろ」

「そうだなそう言う事なら仕方がないか……お言葉に甘えるよ」

 女性陣は疲労が濃かった為、昼食後部屋でゆっくりする事になる。スグルとタクミは丁度いい修練場があるので現実でもやっていた模擬戦を行うことにする。各々がスキルを習得することで自分と向き合ってゲーム開始3日目にして休憩を入れる事となる。

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