天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

8話 始まりの街③

 夕食に入浴と用事を済ませた英達は夜のログイン時間を決めて街のゲート前で待ち合わせをすることを決める。家の遠い巧は美鈴が車で送っていくことが決まり、帰路につき始めたので英・香奈・奈穂の3人は二人が家に帰る着くころまで各々リラックスしてゲームでの事を考える。

 今はあの世界がゲームだと認識できるがゲームに入ってしまえば現実と大差がない。そういえばTAOが販売するにあたって雑誌が大きく取り上げられてて読んだけど、現実と仮想世界の違いについての記事で確か学者が感覚の部分で言うと情報量の違いがあるからそこは現実ではないと感じるけど同じ情報量であればそれはもう現実と区別がつかないって言ってたな。と言うことはあの空気感に物体の肌触りNPCの知能どれをとっても現実と納得する……TAOはゲームの枠を抜けてホントの意味でのもう一つの現実を体現したものだと言えるな。


 お兄ちゃん座禅組んで瞑想してるけど何を考えてるのかな?多分ゲームの事だと思うんだけど……それにしてもお兄ちゃんのステータスとスキルは想像以上だったよね……私も、お姉ちゃんもだけどそこそこ有名なゲーマーとしては例えお兄ちゃんでも負けたくないってのが本音ではあるんだけどもう流石の一言しか出ないよ~。お兄ちゃんは一般的なステータスがどれくらいかしらないんだろうな……さっきプレイヤー日記みて出てるステータス見たけど私と比べても半分以下くらいなのにお兄ちゃんときたらさ、もう笑うしかないよね。

 香奈は食器を洗いながらゲームでの食事について考える。

 ゲームで得た技術を現実に反映させることが可能ならきっと逆もできるはずよね?……今度手始めにハンバーグでも作ってみようかしら。もしかしたら職業に習熟があるみたいだから技術不足とかでなきゃいいけど。

 時計を見た英は8時を回ろうとしてる時計を見る。

「そろそろログインしようか」

「「はーい」」

 カプセルに入った3人はログインをする。



 ログアウトした月の宿の一室に三人は現れる。

「ログインするとログアウトした時の場所からなのね」

「そうみたいだな。下で軽く食べて約束してる広場に行こうか、まだ二人ともログインしてないみたいだしちょっと出店でも見ながら行こう」

「そうね現実の身体で食事してるからそれほど空腹じゃないけどせっかくドリューさんが作ってくれるみたいだし食べていこ!」

 カナはこの世界の食事に興味があるんだな。現実でも母さんを師匠と仰いで勉強してるのにこっちでも料理を勉強するんだな。まぁ俺も人の事言えないけどな。

 カナを見てまるで自分を見てるようでスグルは思わず笑ってしまう。

「お兄ちゃんどうしたの?」

「いや……なんでもないよ。タクミ達も、もうじき来るだろうし行こうか」

 スグル達三人はカウンターまで行くと厨房に朝食を作っているドリューが居た。三人を見たドリューはカウンターの席に座るように促す。すると野菜のサンドイッチに照り焼きの肉が挟まったサンドイッチが三人分用意される。

「ドリューさん私たちが降りてくるのが分かってたの?」

 カナはできたての朝食を見て思わず聞いてしまう。するとドリューは手作り野菜ジュースを三つもってカウンターまで顔を出す。

「音が聞こえたから仕込んどいた肉を焼いたりしたが降りてくるのが分かったかと言われると分からないな。旅人や冒険者は朝が早いから朝食はすぐ出せるメニューにしてるだけだな!」

 驚かせたことがドリューは嬉しいようでガハガハハと豪快に笑う。

「それは助かるな。これから少し市場を見ておこうと思ってたからすぐ出れるのは嬉しいな」

「そうか、スグル達はこの街に着いたばかりって言ってたな。じゃあ街の相場やちょっとしたお得情報を教えてやるよ」

「よかったら頼む。まだ知らないことばかりなんだ」



 ドリューから情報を聞いた三人は急いで朝食を済ませる。この時カナとナホは照り焼きのサンドが気に入ったようでカナが作り方を教えてほしいと頼み込んでいたがドリューもそう簡単には教えられないと断っていた。

「もういいだろ。また食べて少しずつ技を盗めば済む話だ」

「ん~良くはないけどスグルの言ってることも一理あるわね」

「しょうがねぇなぁ、隠し味を理解してある程度作れるようになったら照り焼きサンドの作り方教えてやるよ」

 ドリューはカナの料理への熱に負けて条件を出す。

「ドリューさん約束よ!」

 獲物を見つけた肉食獣の様な目をドリューに向ける。

「二人とも置いていくぞ!」

「あ……待ってーーー」

 スグルを追いかけていった二人を見送ったドリューは深いため息を吐く。

「カナの嬢ちゃんの料理への執着は異常だぜ……俺これでも元AAAの冒険者なんだぞ。ちょっと怖かったな」

 ドリューは出入口に顔を向けて思わず遠い目をする。


 
 散策をしたあと冒険者ギルドにも少し顔を出して色々調べているとタクミからゲームのシステムでフレンド間でのみ使用できる念話がかかってくる。

「3人はどこに居るんだ?俺達ずっと待ってるんだぞ!」

「すまんすまん!待ってる間にちょっと市場やギルドの下見をしてたんだけど思ったより時間たってたみたいだな。近くにいるからすぐに向かうよ」

「了解~」

 ギルドをでたスグル達は待ち合わせのゲート前に向かう。

「遅いぞ!ギルドに行くなら全員が揃ってからでもいいだろう」

「時間があったからちょっと下見と外の情報を集めてたんだよ」

「何か収穫はあったのか?」

 スグルは一旦頭の中で情報を整理し今必要な情報を話す。

「まずはスキルについてだがその人才能によって後々発現するみたいでスキルや職業には習熟度があってやり込むことでレベルが上がるらしい。二つ目にこれが一番大事だから肝に銘じてほしいんだが俺たちのステータスはどうやらかなり異常みたいだ……これを見てくれ」

 スグルは一般冒険者のステータス例をメモしたものを全員にみせる。

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【名前】冒険者A  Lv.1
【種族】ヒューマン
【職業】見習い剣士
【スキル】剣術Ⅰ 解体Ⅰ
【固有スキル】なし

【基礎ステータス】(種族・職業補正込)
・物理攻撃力  120(100+20)
・魔法攻撃力   50
・物理防御力  100(70+30)
・魔法防御力   80(50+30)
・敏捷     120(100+20)
・器用      80
・運       50
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「ここから種族や現実の肉体レベルに応じて変更されていくんだろうけど自分たちが異常なのは一目瞭然なんだ。そこでこの場で決めておきたいことがある」

 タクミ達四人はスグルの次の言葉を待って固唾を飲む。

「自分たちのステータスは外に漏らさないことと、この世界を満喫したいなら自分の名前が残ることを極力避けたほうがいいだろうな」

「確かにゲーマーは妬むだろうし、何より私たちは全員本名だものね」

 スグルの話の意図を読み取ったカナは直ぐに同意を示す。

「そこで全員に隠蔽のスキルを早急に覚えてもらおうと思ってる」

「所得条件は分かってるのか?」

 至極真っ当な疑問をスグルに投げかける。

「何のためにギルドでここまで調べてたと思ってんだ……結論から言うと俺も分からん!」

 キリっとした表情でスグルは言い放つとタクミ達四人は思わずこけそうになる。

「厳密には分からんが最初に行ったスキル選択に表示されたスキルと習熟度のシステムの事を考えるとおそらく隠蔽にかかわりそうな行動を行って経験値を稼げば才能次第で入手できるってことだと俺は思う」

「なるほど……」

 皆、最初選択肢に現れたスキルを頭に思い浮かべてその可能性はあるなと思いお互いに顔を見合わせる。

「納得してもらったところでこの街の近くの森にすばしっこいうさぎのモンスターがいるらしいから隠蔽を意識しながら狩にいこうか。お金が無いから武器も買えないから素手だけどな!」

「「「そうだね……」」」

 四人はスグルの発言に思わず遠い目をする。

「街に入るのに身分証が無ければ一人50G必要みたいだからしっかり狩らないと今日は野宿だぞ~」

 初めて行く場所でテンションが上がってるスグルはそそくさと門に向かって歩き始める。

 テンションの上がって珍しくウキウキしたスグルを見た四人は驚きで顔を見合わせる。置いて行かれそうになった四人は急いで東門に向かうスグルを追いかける。

「お兄ちゃん待ってよーー」

「「スグル待ってーー」」

「置いていくんじゃねぇ」

ばたばたしつつも、スグル達はスキル『隠蔽』を覚えるために動き始めるのだった。

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