天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

7話 始まりの街②

 夕暮れが迫っている事もあってゲート前をスグル達はあとにする。
 
 それにしても宿がどこもいっぱいだな。お腹も空いたということは空腹も現実と同じように存在するということだから気を付けないと。

「お兄ちゃん!ここ空いてるみたいだよ」

 先に走り出していたナホが大きく手を振って場所を教えてくる。

 店の前まで行き建物を見るとそこにはあきらかに周りの宿より高級感がある建物があった。言い表すとすれば隣の宿は平民用でこの宿は貴族用と言っても通用するたたずまいである。

 これは一応宿ではあるけど……初期の持ち物しか持ってないからお金足りなくないか?

 スグルは気になってメニューを開いて所持金の確認を行うとそこには300Gの文字がある。

 所持金少なくないか 普通最初は最低限の装備を購入できるくらい持ってるもんじゃないのか?

 所持金の少なさに驚くスグルだが、スグルが所持金を最初から少なからず持っているはカプセル型の購入特典のおかげでありゴーグル型だと所持金は0からの始まりである。

「この際泊まるのには賛成だが所持金足りるのか?」

 疑問に思っても誰も口にしなかったことをあっさりと聞いてしまうタクミはやっぱり凄いな。

「多分、大丈夫だよ……」

 ナホの言葉が最後にいくにつれて不安で尻すぼみに小さくなる。

「とりあえず店員さんに聞いてみましょ?」

 話を進めるためにカナはとりあえず入店を促す。

 扉を開けて中に入ったスグル達に待ち受けていたものは内装とは明らかにミスマッチ感のある身長190㎝はあるゴリゴリの大男が険しい顔にタンクトップ姿でカウンターに立っていた。

 何だあのゴリ……大男は。

「すいませーん。この街に初めて来たんですけどここって一泊いくらですか?」

 ミレイは大男への違和感を無視して尋ねる。

「一泊300Gで食事つきだな。最近じゃ貴族が稀にくるだけなのに冒険者とは珍しい」

 一泊で全財産無くなるのか……泣けてくるな

 ほかの宿は空いてないしちょっと交渉するしかないか……

「おじさん。一つ頼みがあるんだが……」

「俺はおじさんではない。ここ月の宿の店主兼看板娘をやっているドリューだ」

 ???……看板娘?……それは無理があるんじゃないかな。

「うちも商売だからなこれ以上の値引きは出来んぞ!」

「俺の名前はスグルです。そこを交渉するのがほんとの交渉でしょドリューさん」

 このスグルとかいう小僧、俺と目を合わせてるってのに臆することもないか……

「小僧の胆力は認めてやるが値引きは限界までしてこの価格だからできんな」

 なるほど、なにか事情がありそうだな。

「ドリューさんこの店にはホントの看板娘がいたりしないのか?」

「なぜそれを知っている?小僧を町中ですら見たことが無いってことはおそらく外から来た冒険者だろう」

「簡単な事さ、まず価格を限界まで落とさないとやっていけない状態にもかかわらず最近までは繁盛してたように食器に掃除と色々と揃い過ぎてる。それに最近・・はって最初に話したからほぼ外れてないと思ったんだけどハズレではなさそうだな」

 スグルの高い観察能力に元高ランク冒険者のドリューも驚きを隠せない

「確かにこの店の看板娘はいたがそれがどうした?」

「いや困りごとなら協力する代わりに安く、もしくは贔屓にしてもらえないかと思ってな」

「っはっははははは。スグルよ交渉のカードはちゃんと持っておくものだぞ」

「すまんな。俺達はここに来たばかりだからカードを持ちようがないんだ……でも交渉はしたい、そうなると頼むしかないからな」

 スグルは駆け引きをする手持ちのカードが無いこともあって開き直る。

「ドリューさん部屋を一つとみんなの食事で500Gでどうだ?」

「部屋を一つでいいのか?」

「あぁ手持ちが少なくて人数分は借りられないし他の宿は満室だったからな」

 なるほど、女もいるようだし野宿は出来るだけ避けたいというのはしょうがないな。

「ほんとはそんなサービスしてないが今回は特別だ!一泊一部屋5人分の食事つきで300Gでいいぞ」

 さすがに500Gでも厳しいと思ったんだがな……

 スグル達は一人分の価格になったことに驚きを隠せない。

「お前たちは装備を見るにまだ駆け出しだろうからそんなにお金も持ってないだろ。持ってないなりに何とか女たちを安全な宿に出来るだけ泊めようとしたスグルに負けたよ」

「俺も元冒険者で女がパーティーにいたから少しは気持ちが分かるってのもあるな」

 ここはお言葉に甘えておくほうがいいかな……

「今後も可能な限りこの宿を使うから400Gで今後も同じ使い方をさせてもらえないだろうか?」

「ん~とりあえず今回は300Gだな。今後の事はちょっと考えさせてくれ」

「あぁそれで頼む」

ドリューからカギを一つ貰い部屋の鍵を開ける。そこには大きなベッドが二つにソファーがあり部屋もかなり広いつくりになっていた。

「これがこの宿の標準なのかは分からないからとりあえず置いておくとしてご飯前に情報共有を先にすませないか?」

「そうだね!この宿にまた泊まる為にもお金貯めないとねお兄ちゃん」

 ナホはドリューを気に入ったのかな?……まぁ人が良さそうではあったけどさ。

 タクミが最初に話始める。

「じゃあ最初は俺から話そう。俺が最初に出会った神は見た目がTHEおじいさん風の神様だったな」

「話した内容は皆とさほど変わらないと思うけどステータスにこの世界の話・システムの話を少しした後自分のステータスを決めていったって感じだったな。みんなはどうだったんだ?」

 その場にいる全員が目配せをする。

「私も大体同じ感じね。違うとすれば青いショートヘアーの女神が担当だったって事とちょっと雑談をしたってくらいかな?あと最後に一つ質問に答えてくれるっていうから料理人などの生産職でも戦闘行為が可能かきいて可能と答えてもらったわ」

 タクミに続いてカナが自分の始まりについて話した。

「ミレイさんやナホはどうだ?」

「私も似た感じね私の場合はピンク色のロングヘアーをした商業系の女神だって言ってたわ。質問はこの世界は誰かに管理・調整されているのか?よ」

「答えは監視者・・・として私達神がいます。ですって」

「監視者ね……流石ミレイさん良い質問をするね」

「俺はこのゲームをゲームと思って過ごすと必ずしっぺ返しが来ると思ってるんだけど可能性が上がったな」

 スグルの発言に皆は事の重要度を再確認して思わず息をのむ。

「お兄ちゃん私もいい?」

「あぁ頼む」

「私はね肌黒でボインボインの赤紙の女神だったよ!自分では闘神だっていってた。」

「質問は現在いる職業で一番強い職はなに?って聞いたら笑いながら『現在発言している職での一番は暗殺者だぞ!……でももうすぐ壊れた見習い鍛冶師が来るのが確定したみたいだから純粋な戦闘なら見習い鍛冶師になるかもな』って言ってたけど、これって絶対お兄ちゃんよね……」

 闘神の喋り方をマネしながら困ったものをみる目を向けてくる。

「俺は確かに見習い鍛冶師を選んだけど俺ではないかもしれないだろ。世界はひろいんだぞ」

 話をそらすようにスグルは話始める。

「俺も似た感じだが俺の場合は世界を自分の目で見て確かめたかったのもあって最低限の情報のみ教えてもらって質問は女神の名前を聞いて名前がないって言ったから名前をアテナってつけてあげたら喜んでいたぞ」

「あぁあと、容姿的な事で言うなら金髪碧眼で美人だったな」

3人の女達から嫉妬の視線がスグルに送られる。

「そっそれは良いとして皆は本名で登録したのか?調べた感じだとニックネームのような感じで遊ぶってネットに書いてあったぞ?」

「ここがもう一つの現実と言うなら私たちも同じ名前で遊んでも違和感ないでしょ。それに絶対スグルは本名で呼んじゃうでしょ……それなら初めから本名でいいと思うのよね」

カナはしょうがないでしょ!と言いたげな表情で答える。

「「「うんうん」」」

「はははは……」

 スグルは思はず乾いた笑みを浮かべてしまう。

 確かに俺は無駄なことは一切覚えないけど……みんなの名前くらい覚えれるんだぞ?まぁ同じにしてくれたおかげで覚える手間が省けてうれしいけどさ。

「みんなの種族とステータスの確認をしないか?」

 カナとナホが瞬時に反応を示す。

「「いいわね!「皆の強さが分かってるほうが遊びやすいよね!」」

 ゲーマーな二人だけあってステータスには目がないんだな……目を輝かせすぎだろ。

「じゃあ一斉に見せ合ってみるか!」

「いいよーーー」

「「「「「3・2・1・はい!」」」」」

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【名前】スグル  Lv.1
【種族】龍神族EX
【職業】見習い鍛冶師
【スキル】剣術Ⅰ 鎌術Ⅰ 隠蔽Ⅰ 魔力探知Ⅰ 気配探知Ⅰ 鑑定Ⅰ 状態異常耐性Ⅰ 火魔法Ⅰ 空間魔法Ⅰ 威圧Ⅰ
【固有スキル】聖者の領域Ⅰ

【基礎ステータス】(種族補正込)
・物理攻撃力  550(300+250)
・魔法攻撃力  330(100+230)
・物理防御力  400(250+150)
・魔法防御力  400(100+300)
・敏捷     550(350+200)
・器用     350(250+100)
・運       30(10+20)


【名前】カナ  Lv.1
【種族】ハイエルフ
【職業】見習い料理人
【スキル】火魔法Ⅰ 水魔法Ⅰ 魔法攻撃力上昇Ⅰ 魔力隠蔽Ⅰ 魔法学Ⅰ 弓術Ⅰ
【固有スキル】魔法適正上昇Ⅰ

【基礎ステータス】(種族・職業補正込)
・物理攻撃力  100(30+70)
・魔法攻撃力  500(200+300)
・物理防御力  150(100+50)
・魔法防御力  350(100+250)
・敏捷     300(250+50)
・器用     300(250+50)
・運       70


【名前】ナホ  Lv.1
【種族】ハイドワーフ
【職業】見習い革職人
【スキル】身体能力強化Ⅰ 器用さⅠ 回避Ⅰ 剣術Ⅰ 盾術Ⅰ 運Ⅰ
【固有スキル】神の指先Ⅰ

【基礎ステータス】(種族・職業補正込)
・物理攻撃力  280(30+250)
・魔法攻撃力  100
・物理防御力  400(50+350)
・魔法防御力  250(100+150)
・敏捷     150(120+30)
・器用     700(100+600)
・運       90(80+10)


【名前】ミレイ  Lv.1
【種族】獣人EX 
【職業】見習い商人
【スキル】身体能力強化Ⅰ 回避Ⅰ 体術Ⅰ 算術Ⅰ 話術Ⅰ 短剣術Ⅰ 
【固有スキル】獣神の加護Ⅰ

【基礎ステータス】(種族・職業補正込)
・物理攻撃力  350(50+300)
・魔法攻撃力  100
・物理防御力  250(50+200)
・魔法防御力  200(150+50)
・敏捷     500(50+450)
・器用     200(100+100)
・運       60(30+30)


【名前】タクミ  Lv.1
【種族】ハイヒューマン 
【職業】見習い錬金術師
【スキル】身体能力強化Ⅰ 刀術Ⅰ 体術Ⅰ 錬金術Ⅰ 歩法Ⅰ 抜刀Ⅰ 
【固有スキル】英雄の相Ⅰ

【基礎ステータス】(種族・職業補正込)
・物理攻撃力  400(200+200)
・魔法攻撃力  300(170+130)
・物理防御力  350(150+200)
・魔法防御力  300(150+150)
・敏捷     200(150+50)
・器用     250(100+150)
・運       50(30+20)

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 みんながレア種族らしきものになれたのは良いんだが俺だけ運低すぎじゃないか?ナホにいたっては90あるぞ……

「お兄ちゃん!レア種族だからそんなに差がないと思ってたのに!」

「俺も同意見だな……見た目は人間だからてっきり同じハイヒューマンだと思ってたわ……」

「「スグル……ゲームでも大人しくできないのね」」

 いくら何でもみんな酷くないか!?

「みんなも多分そこまで変わらないと思うぞ……と言うか戦闘職誰もいないんだな」

「戦闘職での能力補正は欲しい気持ちはあったけどその分はレア職で補正受けてるし何より自分で生産出来ればスグルと物々交換できそうだしね」

「「「ねぇー」」」

女達3人は俺から武器を入手するつもりなんだな。

「俺はスグルと同じ状況で戦いたいからってのと、このメンバーだと錬金術は誰も選びそうになかったからな」

「言われてみれば見事に誰も職も種族もかぶらなかったな……結構凄いんじゃないか?」

「そうね街を見てきた感じほとんどがヒューマンか獣人と亜人ね。まぁスグルみたいにそう見えるだけって可能性もあるけどね」

 カナが街の様子を話してくれる。

「もう夜も遅いしご飯食べに降りてねるか!……今現実だと何時だ?」

「メニュー画面にあった気がする」

 ナホが現実の時間を調べてくれる。

「今は大体夕方の4時ね」

 今日は母さん居ないからご飯しないとな。

「じゃあ俺は夕飯の準備に一回帰るよ」

「じゃあお手伝いするよ!」

 奈穂が元気に手伝いを申し出る。

「駄目よ!今日は私が腕を振るうんだから!」

 そういえばカナもナホもすぐ隣にいるんだったな。

「じゃあ二人に頼んで風呂の準備でもしますか」

「みんな一回落ちるって事でいいのね」

 ミレイさんが残念そうな表情をする。

「ミレイさんも一緒にご飯食べない?」

 しょぼんとしたミレイを放置するのは忍びなくてスグルは食事に誘う。

「いいんですか?」

 ミレイは明らかに目が輝いた様子で見てくる。

「まぁ作るのは俺ではないけどいいよな?」

 カナに同意を求める。

「えぇいいわよ!多少増えても手間はたいして変わらないからね」

「待て!皆集まるなら俺も行くぞ!」

「タクミは家遠いだろ……」

「走っていける距離だろ!」

 確かに走れる距離ではあるけど片道20km近くあるだろ……飯のために来るか普通?

「分かった分かったじゃあ6時に家集合な」

「「了解」よ」

 こうして最低限の情報交換を終えた皆はスグルの家に集まる約束をする。

 しかし、この時自分たちのステータスの異常について気が付いているものはいないのだった。

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