天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

6話 始まりの街①

 女神アテナに見送られた英は始まりの街の中心に位置する大きな祭壇の様なポータルに転移する。英は着いてすぐに辺りを見回すも近くにプレイヤーはほとんど見られず大きな祭壇にポツンと一人立たされている図が出来上がっていた。

 物珍しそうに色々見てるプレイヤーが数人に、自分のステータスなどを確認しているそぶりを見せる奴、目的地を探してポータル近くにある地図の様な案内板を眺めている奴と英が見た感じ初期エリアには残ってないんだな。と言うかリリース開始と同時にログインして一緒のスタートのはずなのにすでに出遅れてるような様子なところを見るとアテナとは本当に長話をしてたんだなと実感する。

 まぁ色々ステータスなどで悩んだから遅かったと言う線もあるんだけどな。とりあえず巧達も見当たらないし自由に遊んでみるかな。

 この時、現実と差が分からないレベルのこのゲームに感動と同時に言いようのない興奮に英は襲われていた。

 少し立ち止まって考えてると遠くから見覚えのある雰囲気を持っているグループが歩いてくる。

「ほらーーーーお兄ちゃんの事だからステータス作成で悩んで遅れてるだけって言ったじゃん!」

「ナホちゃんごめんってば……」

 巧に奈穂に香奈の面影があるプレイヤーが近づいてくる。

「スグル!遅いじゃないか!ほかのプレイヤーはみんな始めちまってるぞ!」

「お前……巧か?」

「タクミだぞ。何言ってんだ?頭の上のバー見ればわかるだろ……」

「あぁ俺はここをもう一つの現実と実感するために一部の例外を除いて現実と同じようにしてるからプレイヤーと町の人の区別がつかないんだ。操作方法も完全マニュアルに設定しててゲームアシストが発生しないようにしてるよ」

 それを聞いた3人は驚いて開いた口が塞がらないと言わんばかりの表情をする。タクミ達はスグルがこの世界を満喫する気満々なのはリリース前から分かっていたことだが、ゲームとしてではなく自分の現実として本気なんだと改めて実感する。

「なるほどねぇ~せっかくお兄ちゃんと一緒に遊べるんだし私も同じようにしよっと」

 スグルの話を聞いて二人は、何の迷いもなくすぐにゲームの設定を見直しほとんど現実と同じ視界になるように変更を加える。

「お兄ちゃん……これでゲームやっていくの?」

 設定をスグルと同じように変更した二人はさっきまで見ていた視界との差に驚きを隠せない。なんせ今まで見ていたHPなどのバーに始まりプレイヤー・NPCを表すアイコンやゲーム特有のバックをショートカットで開くボタンなど本来ゲームに必要なアイコンなどがほとんど存在せず視界の隅に申し訳程度に小さくステータスやログアウトに必要なメニューを開くアイコンがあるのみで簡素なものだ。

「確かにこの視界じゃプレイヤーとNPCを見分けるのは難しいな」

 巧も設定して初めて自分がいかにこの世界をゲームとして見ていたのかを実感してしまう。

「俺達プレイヤーはここに降り立つ前にこの世界は『もう一つの現実・・』と説明を受けているにもかかわらず本当に理解できている人間はログインできた第一陣に何人いるんだろうな……」

「他人がこのゲームをやる上で何を考えてるかなんて興味ないな……俺はここも現実と思って本気で生きるし、やりたいことを満喫すると決めてる」

「ゲームという言葉を盾に俺の邪魔をする奴が現れるなら容赦はしない」

 スグルは無意識のうちにスキルの威圧を発動させてしまう。

 威圧をまともに受けてタクミは足が重くなり、ナホは尻もちをつく。

「スグル!ナホちゃんがビックリしてるだろ!」

「ん?あぁすまん無意識・・・にスキルが発動してたみたいだ」

 スグルはナホに手を貸して立たせると服に着いた汚れを払ってあげながら軽く謝る。

「しかしそのスキルか?それ凄いな、俺の身体が鉛みたいに動かなかったぞ」

「多分発動したのは威圧のスキルだろうな。俺自身もそれほど効果があるものだとは考えてなかった」

 そんなこんなでポータル前の立ち話をしていると多少の違いはあれどどう見ても香奈と美鈴にしか見えない二人が大きく手を振ってこちらに向かってくる。

「「スグル遅いよ!!」」

「ごめんごめん。ちょっとおしゃべりな神がいてな、遅くなった」

 くちゅん!この感じはスグルが噂をしてるのかしら。

 女神アテナは神々と会合中にくしゃみをした後一人幸せそうな表情で頬ける。

「「おしゃべりな神?」」

「私の案内してくれた人は淡々としてたわよ」

「そういえば二人はどこに行ってたんだ?」

 一緒にいなかったカナとミスズに問いかける。

「スグルが直ぐに来ないから何を最初に行ったほうがいいのか情報収集してたのよ」

「何か分かったのか?」

「大体のプレイヤーは冒険者ギルドで身分証にもなるギルドカードを作ってるみたいね」

「大体のってことはそれ以外にもあるのか?」

スグルの疑問にカナが答える。

「一つ目は他に存在するギルドで同じように発行してもらう。二つ目が自分の身分証のみをお金で国に発行してもらう。三つ目が身分も関係なく普通に装備だけ整えてスタートを切る。大きくこの三つに分かれてるみたい」

 なるほどな。ここも現実である以上何かあったときに身分を証明できないというのはかなり大きなでめりとになりそうだな。とりあえず身分は何かしらの手段で入手するとして最初何をしようかな……

「冒険者ギルドに行くんじゃないのか?」

タクミは多くのプレイヤーが行った冒険者ギルドでカードを発行してからなにをするか決めるつもりだったのだ。

「もちろん冒険者ギルドでの発行も悪くないんだが、俺の職業は見習い鍛冶師だからな職の利点を生かせる様にしたいと思っている。それに身分証も兼ねてる以上重複した発行はおそらく難しいだろうから落ち着いてからでもいいと思う」

 この後どうするか話し合ってると気が付けば空が夕焼けから闇色に染まり始めていた。

 タクミは暗くなり始めた空を見てこのままじゃ完全に夜になりそうだと感じ提案をする。
 
「暗くなり始めたし一旦、宿でも探して話をしないか?」

「そうだな!カナ達が街を見てきた感想も聞きたいし、とりあえず宿を取って現状持っている情報のすり合わせをしようか。みんな案内された神も違うみたいだから持ってない情報があるかもしれないからな」

「そうしよ!そうしよ!」 

 ゲームの中とはいえ初めての外泊の決定にナホは舞い上がる。

「そうと決まったら早くーーー」

 スグル達は喜ぶナホを見て微笑ましく思いお互いに目を合わせながら笑いながらナホの後を歩いて付いて行く。

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