天才鍛治師は今日も…

96うさぎ

3話 購入

 待ち合わせ場所につくとそこにはすでにちょっと息を切らせている巧が待っていた。


「お待たせ巧。早かったな」


「はぁはぁ……そんなことないさ」


 距離にして車で移動した俺たちと同じくらいの距離があったあったはずなのに俺たちより早く走ってきたとはさすが巧。


「そんなに欲しかったのか?」


「ち、違う。待たせたら悪いと思ってちょっと走っただけだ」


 巧ほど鍛錬している人間がちょっと走ったくらいで息が切れるわけがないだろうに。

 可愛いやつめ。

 今回でたハードはカプセル型で大きいから購入できる場所が倉庫だったはずだけど何時からなんだろう。結局ハガキを見せてもらってないからわからん事ばかりだ。


「購入できる時間って何時から?」


「ゴーグル型はお店のオープンからカプセル型は物が大きいからお昼からだよね」


 香奈が今聞き捨てならないことを言った。

……ゴーグル型?俺が奈穂に見せられたチラシやCMでもカプセル型のハードしか見なかったぞ。

俺は聞かずにはいられなかった。


「なぁ、一つ聞きたいんだがゴーグル型とは何だ?」

 奈穂は気まずそうに顔をそらす。


「奈穂?」

 俺は怖がらせないようにニッコリと笑みを浮かべながら名前を呼ぶ。
 ギギギギと音がしそうな動きでゆっくりとひきつった顔をこちらに向ける。
 奈穂は目が合ったとたん今にも泣きそうな表情になる。


「違うの!だました訳じゃないの。最初は両方あるって伝えて出来たらカプセル型が欲しいなって言うつもりだったんだけど、お兄ちゃんにチラシ見せたらカプセル型の購入の話になってそれで……私がカプセル型が欲しいってのもあって言い出せなくて」

「ごめんなさい!」

 話を聞いていた香奈が1枚のチラシを見せてくる。


「英が見たチラシってこれ?」


 カプセル型のハードの写真が大きく写っており周りにはハードの詳細が少し書かれたチラシを香奈が見せてくる。


「そうそう。このチラシ」


「英くんこれ小さいけどここにゴーグル型のこと書いてるよ」


 確かにチラシの隅に申し訳程度にゴーグル型について書かれているな。
 んーこれはちゃんと見てなかった俺にも問題があるか。

「まぁ奈穂も悪気があったわけじゃないし、何より今回に関しては俺がちゃんと調べておけば問題なかった話だしな。奈穂も気にしなくていいよ」


 奈穂は泣きそうなのを我慢している。


「怒ってない?」


「怒ってないよ。それにせっかくやるんだ快適にやったほうが楽しいだろう」


「うん!ゴーグル型よりカプセル型のほうは身体情報を細かく読み取れるらしいからゴーグル型より全然ゲームでの使用感が違うらしいよ!」


 怒っていない事が分かった奈穂は機嫌よく二つのタイプについて説明を始める


「奈穂が知ってるのもあくまで情報だけだから実際やらないと分からない事は結構あるんだけどハードとしてはコラボってこともあって身体スキャンのレベルが桁違いでその日の体調とかもゲームに影響がでるみたい。それにオルタナでの初期ステータスは現実のスキャンから数値化して決まるらしくてバランスが現実の体と同じだからゲームでの種族が違っても使用感に全く違和感がないんだよ」


「それに現実の体の能力が細かく再現されるからゲーム内で得た体験を現実にフィードバックしやすいっていってたよ」


「フィードバックとはどういうことだ?」


「例えばゲームで剣術を会得して使い続けてたら現実の体でもゲームでの動きが可能になるんだって。ゴーグル型とカプセル型では体のスキャンの精度が違うから体へのフィードバック率が全然違うってこと!」


 奈穂はゴーグル型とカプセル型の大きな違いについて説明をしていると美鈴が補足を入れる。


「その説明について補足だけど、ゴーグル型が体とのシンクロ率が60%だとしたらカプセル型は90%って言われてるわよ。ついでに言うと英がやるテスト機は98%らしいわ」


「98%って……それってかなり凄いんじゃないのか?」


「そりゃ凄いわよ。もうほとんど自分体でゲームをしているってことだからゲームでの経験値を現実にフィードバックしやすいってことだわ。それにゲーム内の設定をマニュアルにした時の自由度も全然変わってくると思うわよ」


 なるほど。

 要するにまとめるとカプセル型は体とのシンクロ率が高いおかげでゲームでの体の自由度が高く現実へのフィードバックも得やすいと……

 ん?じゃあゲーム内で鍛冶のトレーニングをすれば現実に技術を持ち帰れるって事じゃん。

 そういうことなら俺もちょっと本気でゲームやってみようかな……一緒にやることは確定してるわけだし。


「お兄ちゃん!何を考えこんでるの?もう時間だから行こうよ」

「あぁ……」


 俺は二人の話を聞いて、ゲームのリリースが今週末でちょうど夏休み初日からだから今日ハードの購入をして身体スキャンが終わったらゲームについても分かる限り調べつくそうと心に決める。


「じゃあ行こうか」


 美鈴さんに受付に連れてきてもらった俺たちはいくつもある大きな倉庫の一角に案内される。

 ここどこだ?案内されたはいいけどどう見てもただの倉庫なんだけど。
 いや……よく見たら受付はこちらと旗が立っているな。
 ハードは大手電機メーカーが出しており電気屋での販売だからお店に行くつもりだったんだけど違うのか?
 皆口数が少なくなって戸惑ってるみたいだし俺だけじゃないな。

 戸惑っている英達4人を見た美鈴はあきれた様子をみせる。


「英達はまさか電気屋で受付をしてると思ってたの?」


 そのつもりだったんだけど違うのか?

 何たって俺はいまだにハガキすら見ていないからな。


「あなた達頭が悪いわけじゃないのに変なところが抜けてるわね。カプセル型の大きなハードが一般の家電と一緒に販売してる訳ないでしょ!」


 確かにゴーグル型の方なら販売可能な気がするけど、人一人が寝転んで使用するカプセル型じゃあ店に数入れれないもんな。

 歩いて受付に向かうとそこにはまだ時間前だというのに人の列がそこには出来ている。

 凄いな。まだ受付開始30分も前でこんな高価なハードなのにもかかわらず70人近くの人が並んでるぞ。


「お兄ちゃん凄い人の数だね!一か所の受付にこんなに人が集まることを想定してるのかな?」


 言われてみればそうだな。

 カプセル型は高価で数も世界でコラボ機3000合わせて1万しかないというのにいち電気メーカーの倉庫一つにこれだけの人が集まることを想定しているとは思えないけど……足りるかな?


「とりあえず列に並ぼうか」


 列に並ぼうとすると、もうすでに巧がわくわく顔で列最後尾に並んでいた。


「巧……どんだけ楽しみにしてるんだよ」


「巧さん私よりわくわくしてる~」


「「巧くん……」」



 巧の様子を見た皆は、思わず笑ってしまう。


「ち……違うぞ!皆がいつまでたっても並ばないから場所取りのために並んでただけだ」


 巧が照れてるのを見て周りのお客さんは可愛い子ねって感じだ。

 何か身内としてはあまり気にしないけど客観的にイケメンが照れてるのとかあんまり面白くないな。

ボソッ……


「巧じゃなかったら切り飛ばしたくなるな……」


香奈と奈穂は顔色を悪くする。


「「何を!?冗談でもそんなこと言わないで」よ」


美鈴は香奈と奈穂の様子の変化に戸惑う。


「二人ともどうしたんだ?」


「いいから早く並びましょ!」


 香奈と奈穂は英の背中を押して列に向かう。

 受付開始から30分もすれば番が回ってきた。


「美鈴様お待たせしてしまって申し訳ありません」


 受付の男性スタッフは心配そうに美鈴さんに謝罪をする。


「気にしなくていいわよ。私は一客としてここに来てるのだから他の並んでる人と同じだわ」


 美鈴をみた英達は感心した眼差しを向ける。

 へぇ~以外にしっかりしてるな。多少文句の一つも出てもおかしくないのに。


「あなた達今失礼なこと考えなかった?」


美鈴は怒ってるぞ!言わんばかりの表情をみせる。


「あのねぇ!確かにパパは偉いけど私が偉いわけじゃないのよ。」


「私が威張れる要素なんかまったくないんだから」


 美鈴はあきれた様子で話す。


「そんなことよりハードの購入をして英のハードを見に行きましょう」


 男性スタッフはどう対応したらいいのか迷いながら話が終わるのを待っていた。


「ここに購入手続きをするための書類に記入をお願いします」


 英を除く4人は必要事項に記入をすると近くの部屋に連れていかれ、機械の安全性や使い方など最低限必要な説明を受ける。

 その際、英達だけで4機も当選してることに驚きを隠せない様で自分も応募したけどダメだったなどと悲しそうに語っていた。

 皆が説明を受けてる間暇になってしまったけどどうしようかな……

 辺りを探索すると近くにゴーグル型の販売をしている店舗がありどんなものなのか自分の目で確認するためにその場を少しの間離れる。

 見てみるとゴーグル型は確かにコンパクトだが配線も多く、起動させると意識がゲームに行き体が動かせないので大きな不安も残る。


「ゴーグル型の価格がゲームとセットで7万円って……カプセル型のコラボが8万円でソフトを入れてもおよそ10万円って考えるといかにカプセル型のコラボが凄いのかがわかるな」

 どうやらカプセル型はダイブ中の現実の身体を保護する機能もついてるようだしそういう意味では安全性を買ってると思えば数万円の差なんて安いもんだ。

 他にも付属品やパンフレットなどを見て、オルタナの情報を集めていると説明を聞き終わった皆が部屋から出てくるのが見えたので合流することにする。

「英!どこ行ってたのよ。出てきたらいないからビックリしたじゃない!」


「ごめんごめん。話が長くなる気がしたから情報収集してたんだよ」


「何?ずいぶんやる気出してるじゃん」


 珍しい英を見て香奈が茶化す。


「おう!今身につけている技術をゲームで行ったりゲームでの経験を現実で体現できるとなるとやってみたいことも多くあるし、何より鍛冶師としての感がやったほうがいいっていってるからな。」


「俺はやるとなれば本気でやるし本気で楽しむさ」


「英らしいなー」

(英らしいなー)

(英君らしいな)

(お兄ちゃんらしい)


((((けど本気はほどほどにしてほしいな))))


 この後、英の使う予定のハードを作った会社に赴きハードの説明に始まりテスターとしての情報開示の契約など様々な手続きを完了させて後日発送から設置までを行うことに決定する。

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