女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第二十三話 冒険者登録 





 一介の市民として、私、サンダーは、街の中を歩いている。 先日までの爆撃機や銃、装甲車が嘘の様に、馬が主流な交通手段。
 この、大陸はドラゴ伯との戦いで、負けたアエルフィンカ合衆国との干渉地域。 時代は、中世仕様。主要都市以外は、中世の外観にしている。
 豊富な資源に、未知の魔獣。 アエルフィンカ合衆国からも、冒険者が一旗上げようと訪れる。 だが、多くの者が命を落とす大陸。 帰らずの大陸、とも言われている。
 私は、冒険者登録をする為に、冒険者ギルドに入る事にした。
 ギルドの中は、マントを着た男やハンマーを持った大男がたむろしていた。 私は、ギルドで唯一居た、女性に話しかけた。
 「こんにちは、冒険者登録をしたいのですが、良いでしょうか?」 「はい、登録は、此方です。貴女歳は?」 「十四歳です」 「ギリギリ、登録可能な年齢ね、此れに必要事項を記入して」 「ありがとうございます」
 私が、記入していると男達が、何か言っている。
 「あい、あんな、小さいガキが、冒険者登録だとよ!」 「死に急ぎすぎだよ」
 記入を終えて、ギルドカードに魔力を流すと登録が、完了した。
 カードを持ち、依頼が貼られた掲示板に向かうと、男達が私の前に立ち塞がった。
 「嬢ちゃん、一人じゃ不安だろ、俺が、手とり足取り教えてやろう」 「嬢ちゃんが、冒険者に相応しいか、見てやろう」
 私は、二人を暗器で、スパッと切ると二人は床に驚いた顔の侭転がった。 冒険者は、登録すれば、死んでも死に損ない。 殺しても、殺されても、罪に問われない。
 私が、掲示板に向かおうとすると、後ろから多数の男達が、声を掛けた。
 「貴様、良くも殺したな!」 「「「「殺す」」」
 うん、冒険者って素晴らしい。 こんなに、人を殺しても文句言われないんだから。
 振り下ろされた、ハンマーを素手で受け止め、もぎ取った。 やったと思った確信の顔が、恐怖に変わる。 実に、気味が良い。 ブチャっと音がし、男がミートソースに変わる。
 恐怖した冒険者達が、一斉に私に迫って来る。 いいね、恐怖を越えようとする努力。 でも、無駄。 だって、皆、もう死んでるよ?
 最初の男は、小剣を振り上げると腕が取れ、足が落ちる。 二番目の男は、杖を振り上げるが、杖と躰が真っ二つ。 みんな、思い思いの死に方をしていく。
 暗器は、銃や刃物じゃないよ、日用品の糸だって使えるんだから。 そして、誰も居なくなった。
 私は、掲示板に見に行くと、依頼が沢山貼られていた。
 【植物採集】、【害獣の駆除】、【護衛】。
 お、沢山有る……誰も触っていないみたいだ。
 【指名手配犯】って項目の奴をとりあえず、全部取って持っていく。
 「お姉さん、宜しく、お願いします」 「……」 「お姉さん!」  「あ、はい、指名手配犯ですね、首が証拠なので、宜しく」
 私は、ギルドを後にした。
***
 ――ギルド内(受付嬢視点)
 可愛らしい、女の子が出て行った。
 鼻腔に突き上げるのは、鉄が錆びた匂い。 血血血の匂い。  床に転がるのは、冒険者だった者達の死体。
 さっきまで、二十人の冒険者があっという間に、肉片に変わった。
 あの子、あの子、笑っていた。 今まで、色んな冒険者を見てきたけど、あの子は異常、異常すぎる。 何なの、有れは……
 「さて、今日の売上はどうだい?」
 ギルドマスターが、顔を見せ、吐いた。 両手を床に付き、吐いた。
 「な、何が、あったのじゃ!」
 全てを吐き終え、臭い息で、私に話しかける。
 私は、今まで有った事を全て伝えると、ギルドマスターは、信じられないという顔をした。 だけど、私はこのギルド内の惨状をどう説明するのか問うと、マスターも渋々納得した。
 私と、マスターは死んだ男たちを袋に詰め、荷馬車に乗せ、ギルド内を掃除し始めた。 喧嘩で血が飛び散る事は、多々ある。 だが、此れ程、血染めの床を磨いた事は無かった。
 やがて、自分の顔が見える程に磨かれた床をうっとりと眺めていると、カランと音がした。 先程の少女が、戻って来た。
 流石に、大量の指名手配犯は荷が重かったのかと思ってると少女は、風呂敷を私の前に広げた。
 「一応、近隣の指名手配犯は、持ってきたわ、遠くのは此れから狩るわ」
 風呂敷から赤い液体が、磨かれた床に落ち広がる。 中には、男や女達の首が有った。 全員が、何れも、直前まで恐ろしい恐怖を感じた様に、歯を食いしばっていた。
 「彼は、右足、左足、両手を切って、中味を出して上げた。彼の子供は、発狂していたわ」
 少女は、一人の男の首を取り、私に向けた。 首だけの男は、カッと目を開いていた。
 「死にたくない、金は幾らでも払う。頼む、もう足は洗ったんだ」 「分かったわ、足を切って上げる。悪い事出来ない様に、手を切って上げる。お腹の中も見て上げる」 「ヤメて、ヤメて、くれ、子供の前だ」 「ねぇ、坊や、パパは悪い事をしたんだ、だから死ぬの」 「ヤメぐぇーーーー」
 一人二役で、その時の様を細かく説明してくれた。 一人一人、全てを詳細に…… 少女が全てを語り終え、報奨金を受け取り出て行った。
 私は、吐いた。 思いっきり、吐いた。 何も出ないのが分かっても、吐いた。
 おぞましい……何て子なの…… マスターは、どうしてるかと思い振り返ると、白目で、股間を濡らしていた。 毎回、あんな、報告を聞いていたら、躰が持たない。
 どうしようか?でも、受付は私だけ…… 頑張るしか無いわ、転職出来る年齢でも無いし。
 騎士団に報告する為、台の上に置かれた首を袋の中に入れた。 そして、騎士団にあの子が言った内容を報告する為、紙を手に取った。
 此処で、仕事をして三十年……こんなに忙しく、やり甲斐があるのは嬉しい。

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