女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第十六話 四伯爵会議




 「で、お主は、こやつめを粛清したと」 「イエイエ、我が屋のメイド達が、成しました」
 伯爵は、私サンダーの方へ手を向け、銀盆の上に置かれた首だけの元伯爵を撫でる。 今日は、急遽、開催された四伯爵会議。 伯爵が、話しているのは東部辺境伯、アルザス・ロレーヌ伯。白い髪に長い髪で目元が隠れている老人。 老人は、高位の魔法使い。ヒシヒシと彼の魔力が、私に寄ってくるのが分かった。 私は、魔力を使い老人の魔力を弾き返す。ピシッと、何かが割る様な音がした。
 「フォフォフォ、久方ぶりに良い、魔力の反射を受けた。中々良い手札をお持ちの様で……」 「お褒め戴き、光栄に御座います」 「ですが、お陰で準魔法使いの私が、伯爵に繰り上げですよ」
 太った金髪、金眼の男が服をキツそうにフウフウ言いながら、抗議の声を上げる。 男の名前は、西部辺境伯のサン・マロ伯爵。 人族の間で、準魔法使いがどの様な物だかは不明。 だが、魔族でいうと中級の魔法を使える程度なのだろう。
 「北部も此れから大変ですが、南部の僕の所も大変ですよ」 「ああ、先日のマルセイル港の事件ですか?」 「ええ、多数の市民も巻き込まれましたし、アエルフィンカ合衆国の勇者も瀕死の重体です」 「勇者というのは、そんなに弱い者なのかね?」 「詳しくは分かりませんが、教会で発見された勇者は、両手両脚がへし折られ、十字架に括られていました」 「何と、神を恐れぬ恥知らずな者の仕業ですね」
 糸目の金髪の好青年は、南部辺境伯、ラ・クロワゼット伯。彼は、風の魔法を得意としている。 伯爵は、私達が先日の神を恐れぬ者だと知ったらどんな顔をするだろう。 でも、童貞勇者君を卒業させて上げたんだよ? よく、貴族社会の闇の一つ、あてがい女って奴をしたんだよ? しかも、後腐れ無い様に、その場で心臓を抜いて上げて処分したんだよ? 偉い私達、っと思っていると大きな扉が開いた。
 「ジャン・ルイ国王陛下のおなりー」
 四伯が立ち上がり、私と妹と傍の執事達は膝を付き頭を下げる。 まったく、マスター以外の人間に最敬礼をするとは、屈辱だ。 だが、大事の前の小事。此の様な事で、イラついていても仕方が無いと自分に言い聞かせる。
 「全員、面を上げ、座るが良い」
 私は、伯爵の横に立ち上がった。 ジャン・ルイ十四世は、金髪碧眼の王族という感じで、絵映りが良い顔をしている。
 「ジル、先日の件、大義で有った。褒美は要らぬか?」 「いりませぬ、私は、陛下の忠実な犬めに御座います」 「犬と申すか?犬で合っても、忠義を示す者には、褒美を与える。宰相頼む」 「北部辺境伯ジル・ド・レ、汝に白金貨二千枚と対アエルフィンカ合衆国、ブリタニカ海賊王国との全権大使に命じる」 「ハハッツ、承ります」
 褒美を受け取った伯爵は、何とも言えない顔だ。 白金貨二千枚といえば、北部軍を総動員する金額。 そして、対アエルフィンカ合衆国、ブリタニカ海賊王国との全権大使、つまり二ヵ国と関係は、伯爵の手に有る。 伯爵の領地は北部、戦争が始まれば、真っ先に戦禍に飲み込まれる。 褒美という名の、厄介事を全て押し付けた形だ。王は、次は、南部伯の方へ顔を向けた。
 「先日の件は、何処の国の者だか分かったか?」 「勇者の証言によると、族は、サン・バルテルミ語を話したそうです」 「それは、本当か?」 「ハイ、しかも訛りのある、共和国の特定地域の人間しか、話さない言語だそうです」 「裏は、取れているのか?」 「ハイ、私の部下の情報ですと多くの市民が、その言葉を聞いたそうです。その地域ですが……」 「申してみよ」 「ハイ、共和国でも総書記ドゥーチェが、政治犯の子供達で、親衛隊が実験をしている噂が有る、軍事都市地域です」 「フム、という事は、子供達が反乱を起こしたと?」 「イエ、合衆国の高官によりますと、反乱を起こせない様に、奴隷化してるそうです」
 周りから、息を呑むような声が起こる。 妹も頬に両手を合わせ、信じられないとポーズを取っている。 両手の下では、口角を上げ【計画通り】と思っているのだろう。
 妹は事前に、サンバルテルミ民主主義人民共和国に潜入しこういう施設が、有る事を突き止めた。 そして、施設に潜入し、親衛隊の任務時の髑髏仮面を奪い、今回使用した。 口の中から法撃をする、という物もそういった実験されてる、少女を見て思いついた様だ。 あ、因みにその少女は、曲線の砲身が付いた魔銃を無理やり胃に入れられ、試し打ちされ、失敗。 少女の上半身は消滅、残った下半身は、研究員が使っていたそうだ。
 「で、合衆国側の動きは?」 「現在、共和国への全ての支援の停止、人族連合の査察を求めてます」 「受け入れるのか?受け入れない場合は?」 「受け入れる可能性はゼロでは、無いですが……最悪、戦争が起こるかと……」 「フム、その場合は、我が王国は、アエルフィンカ合衆国を最大限に支援すると伝える様に」 「ハッ、分かりました」
 まぁ、受け入れる事は、無いだろう。 アエルフィンカ合衆国とは、戦争が始まる。 何時まで続くかな?共和国で、泥沼戦争をしてくれればいいや。 先軍主義国家の中心の頂点は、ゴールド・トルゥー・クラウド総書記ドゥーチェ
 戦争に負けたら、裁かれるのは彼等。 だから、こそ足掻く。足掻いて、貰わ無いと面白くない。 何百、何千万人が死ぬかな?楽しみだな……
 その思考は、王が東部伯に聞いた声で止められた。
 「所で、東部の情勢は?共和国との戦争が発生した場合は、ドラゴ伯の魔族は介入するのか?」 「イイヤ、ドラゴ伯は人族に紛争には、介入しない。っというか我が国等は、見ていない」 「アエルフィンカ合衆国とブリタニカ海賊王国か?」 「ウィ、我が君、彼等の仮想敵国は、この二ヵ国です。我が国が三百年前に出来た経緯もソレですから」 「そうか、という事は我軍は南部に兵員を増強できるか?」 「ウィ、出来ます。魔族から見れば、人族の争いなど、珍妙な奇祭にしか見えぬでしょうから……」
 まぁ、間違っては、居ない。魔族マスターは、介入はしない。 だけど、私達は祭りを準備した。母と父と、私達を殺した国や人族を殺す為に!
 この大陸全土が、戦場に変わってもイイ。 憎しみ・悲しみ・怒り、全てを皆が共有すればイイ。 男達が殺し合い、女子供が犯される世界に変われば良い。 私は、母を殺した時から、自分を殺した。 だから、奴隷自ら進んで堕ちた。 そして、マスターに、人で無い躰にして貰った。
 何なのだろう……この気持ち。 自らの躰を捨て去り、脳が求めるのは、心休まる綺麗な世界?違う!
 【血と肉で薄汚れた、一心不乱の大戦争】
 そうだ、人族の発展は血塗られた犠牲の上に有る。 私は、人族を憎みながら、発展を願う人族! 自ら、全ての行動原理を把握した。 だから、私は争いを創り、助長しなければ……
 バンと扉が開き、文官らしき人物が息絶え絶えで、入室した。
 「アエルフィンカ合衆国が、共和国に宣戦布告、戦争が始まりました!」
 バタッと倒れた。
 私は此れを聞き、人生で始めて、絶頂した。 横の妹も、恍惚とした顔を何とか、隠していた。
 さぁ、人族よ愚かで、無知蒙昧で、現実を見ない平和主義者くず共よ!
 【戦争ショウタイムだ!】
 と心の中で呟きながら、険しい顔をしている伯爵の元に立ち続けた。

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