~異日本転生~チーオタ少年はハーレムの為に国家魔法師に成る!

奈楼小雪

39「Re:元帥と会談」

 
 世間では、テレビにネットに連日に渡り、立少年のドレース元帥への要求事項について、喧々諤々の議論がされている。 その中で、やはり話題に成って居るのは5番目の【日米地位協定の破棄と9条変更の為の政治的工作活動を行う事】という項目。 自称憲法学者達は日米協定の破棄に付いては両手を上げて賛成をしているが、9条の変更に付いては反対をしている。 逆に、右寄りの有識者の一部は、日米協定における犯罪を犯した米兵の引渡しと9条の変更に付いても賛成をしている。 そして、米国大使館前では無く国会前で、両陣営が歌を歌ったりプラカードを持ったり、街頭宣伝車を動員したりしている。
 ネットとはどうだろうか?
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: 大空洞の管理者が、【一般女性の息子】とは……
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: だけど、1〜5のうちで米加国が呑めるのって5以外だろう?
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: まあ、そうなるわなーだけど、飴さんがこのまま大人しくハイソウシマショウ、何ていう訳が無い
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: 1,2,3も中々、飴さんとしては、認めたく無いだろう?
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: だけど、拒否している訳じゃ無いんだよ、譲歩しているだろう
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: この条件で開けて欲しいから、この条件を飲めとは等価交換だよなー
 名前:名無しさん@宇宙とピラミッドpaer250: おまえら、会談が始まるぞ!急げ!
 マスメディアのカメラの砲塔が、立とドレース空軍元帥を映し出す。 立と彼女が向かい合う様に話をし、声をマイクが拾う。
「先日の件についてですが、1〜4を条件付で受け入れる用意が、我が国には有ります」
「条件付きとは?」
「ええ、先日の貴方が持っています、魔術式アプリ泥人形ゴーレムの術式を我が国だけに、公開して貰う事です」
「それくらいなら良いですが、条件は有ります」
 立は、懐から彼女の前に、条件を書いた紙を出す。
 【魔術式アプリの公開について取り交わし】
 1.本、魔術式アプリ泥人形ゴーレムの使用権は、天野橋立あまのはしりつ緋色結衣ひいろゆい寧桜美雪ねおみゆきは3名と米加国政府が永久に持ち。技術移転・売買等の管理権は、米加国に一任する。
 2.魔術式アプリを使って生じた問題において、開発者3人の責任は問われず。管理者で有る、米加国が全ての責任を負う。
 3.魔術式アプリの売買で、得た利益等は開発者3人は放棄し、管理者が全てを受け取る。
 「まぁ、随分気前が、良いのですねー(この魔術式アプリの重要性を理解していない、とはまだ中学生ですね)」
 「魔術師は、自分が創った魔術式アプリが使えれば、文句は言いませんよ(嘘だけど)」
 「分かりました。其の条件で、行きましょう。(やはり、中学生の魔術師マジシャンですね)」
 「気に入って貰い、何よりです(掛かった!)」
 「大空洞を開けるのは、来月の第一土曜日でお願いしても良いですかな?」
 「分かりました。後、此れが泥人形ゴーレム魔術式アプリです」
 左手にデータが入った端末を出し、右手で握手を求める。 彼女も立の右手を握り、フラッシュが炊かれる。
***
 リムジンが構内から出て行くのを見送る。 立と結衣、美雪は屋上で持参した弁当を開ける。 中からは、煮物、ウィンナー、だし巻き卵、ハンバーグに梅干が顔を見せる。
「わぁ、タコさんウィンナーだー」
「水筒の中には、お味噌汁が入っていますわー」
 美雪はカップに味噌汁を入れ、ごはんを一口食べてから味噌汁を飲む。
「ああ、美味しいですわ。固まり冷たいご飯が、味噌汁によって、パラパラと解け美味しいですわ」
「そうなの、美雪ちゃん?」
「ハイ、どうぞ!」
 自分の箸で、立の口に入れ、口を付けたカップを渡し立が飲むと、笑顔を見せる。
「美味しいね、美雪ちゃん!言ったとおりに、冷たいお米と熱々の味噌汁が合わさり、絶妙な美味しさ」
「立君、ハンバーグをどうぞ、肉汁と旨みが詰まっていて美味しいよ」
 美雪の抜けがけに、少しプクッと頬を膨らませ、結衣が半分欠けたハンバーグを立の口へ入れる。 味噌汁でリセットされた口の中を肉汁が浸透し、舌の上で撥ね肉の旨みがより伝わる。
「美味しいよー結衣ちゃん」
 立が笑顔で結衣に言い、パッと花が咲いたような笑顔に成る。
「立君に気に入って貰って何よりだよー朝頑張って作った甲斐が合ったよーそういえば、元帥さんに渡した魔術式アプリって私たちのMODをベースにして作った物だよね?」
「うん、そうだよ」
「でも、アレって使えるの?」
「使えない訳じゃないだけど……ね美雪ちゃん?」
 フッと悪い笑を浮かべ、美雪は胸元のペンダントを出す。
『ああ、そうじゃ大量の魔力を使えば、我らと同じ様に出せない訳では無い。しかも、作動させたらあるだけの魔力を吸い尽くし、止まらない』
 中のMODいや彼女は、蒼い宝石をチカチカさせながら答える。
「魔力は、ある意味で人間にとって酸素の様な物……其れを吸い尽くされると」
「死んでしまう……」
「だから、軍用に使用される心配は無いんだよね?」
 タコさんウィンナーを持ちながら、結衣が嬉しそうに聞く。 美雪は、おにぎりを食べながら頷き、肯定をする。
「(よこせと言われたから出した訳で、どうなるかも聞かれませんでした。全ての責任は、米加国が負うわけですから)」
 立はおにぎりの中から顔を出した小女子の煮付けを見つめながら思った。
 先週、絹漉きぬごしさわやかから貰った直筆の秋葉の同人誌には、米加国がどの様な提案をするかの日本政府の高官との大体の打ち合わせ内容が書かれていた。 内容には、泥人形ゴーレム魔術式アプリを軍用に転用し、魔法騎士マジカルナイトを使用しないで戦力として投入できないか米加国が考えている事が記されていた。 あわよくば、使用権を3人から取り上げて幾ばくかの資金を渡して独占しようという情報も書かれていた。 それを知った3人は、使用権を得る替りに独占権と得られるであろう利益を放棄、尚かつ利益を得るという事で、課せられるであろう責任を回避する事に成功をした。
 だが、利益というのは使えて売れて始めて生む。 3人が、普段使っているMODの魔法騎士マジカルナイトをMADの魔術式アプリで再現すると、どうなるか? 魔法騎士マジカルナイトを形成し動かす際に、膨大な魔力を急速に使用するという魔術式アプリで、使用者が死にかねない物に変わる。 貰った米加国としては、文句を言いたい所。 だが、彼ら3人は死んでは居ない事から、使用する事は、出来る事が証明されている。 しかも、責任は米加国が持つと記されている、その為、3人を追求する事は出来ない。
 卑怯だと思うが、此れが政治という物で有り、取引でもある。 こんな事は、普通の中学生は考え付かない。 だが、国家的傍聴システムから転生して来た立からしてみれば、良く有る事だった。 国家・企業交渉の一種で、完成されたシステムや製品OSに不具合を仕組まれ損失を被る企業、敢えて仕込んで、開発費を浮かせる企業などを見てきた。
「(汚いですが、まあ良いでしょう。見抜けなかった方や、条件を甘くした方が悪いのですから)」
 心の中で思いながら、だし巻き卵を口に運ぶ。 そして、土曜日は、どんな人達が来るのかを想像するので有った。

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