グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第158話 国連本部にて


 米国ニューヨーク州ニューヨーク市、イースト川が見える建物。 此処こそ、クソでゴミの戦勝国による戦勝国の為の世界秩序を維持する場所。
 そこに一台の車が停止する。
 『メンドクサイですね、何故に私が来る必要になのですかね』
 車から降り立ったのは、灰色のショートヘアに蒼い瞳、小動物の様な可愛さの少女。 藤岡言葉ふじおかことのはである。
 「まぁ、仕方が無いわよ。これも外交の内だしね」
 言葉の後ろに立っている少年がいう。
 彼らが言い合っている所は安全保障理事会議場前。
 中では、先月からの中東情勢について喧々諤々の議論がなされている。
 【わがロシアは米国の行動は主権国家への侵害と判断する】 【大漢民国も米国の軍事行動を非難する】 【フランスは中東の安定の為に指示する】 【英国は米国の行動を支持する】
 地中海にて第六艦隊旗艦エンタープライズが攻撃された事で米国世論は沸騰。 ただちに、地中海とアラビア海に展開している艦艇から報復攻撃を開始した。 結果として、シリア・エジプト国内の空軍基地に大規模なミサイル攻撃が行われた。 空軍基地に置かれた戦闘機等や軍事施設の破壊に成功。
 ここまでは、良くある国際情勢……。
 『米国もビーストを甘く見ていましたね』
 「半知性体がこのチャンスを逃す訳は無いのですよね」
 空軍戦力が消失した事により、ビーストが中東の各地に出没を始めたのだ。 主にサソリやトカゲ・ラクダが巨大化した様な物であり戦闘力が非常に高いのだ。 これの影響を受けたのが米国であり、大漢民国とロシアなのである。
 『全く、バカバカしい。何故に我々グンマーが呼ばれなければならないのでしょうか?』
 「それだけ、注目されているのでは?一部では我々の仕業だという声も」
 『バカバカしいわ、世界の新聞だと米国機が映っていたでしょ?』
 どこかの国の代表が拡大された新聞の写真を見せている。 青地に白の☆マークは米国を示すシンボルである。
 【我が国はその日、その場で軍事行動を起こしていない】
 それに反応したのはエジプトの国連大使。
 【我が国もその軍事行動を起こしていない!】
 額に青筋を造りながら反論している。 勿論、彼らが言っている事は何れも正しい。 何故なら、全て中東部アラブが引き起こした物である。
 『まぁ、我々を呼んだのは別な方ですけどね』
 「ようこそ、ミス言葉ことのは
 白人の壮年男が少女の傍に座る。
 『あら、フェアチャイルドさん。中央情報局カンパニーの社長さんが来るなんて』
 男の名前はマイアー・フェアチャイルド、世界の裏側を握っていると言われる男である。 元は18世紀にドイツから銀行家から大成した企業家である。 二度の目の大戦で不遇な環境に置かれたかが今は金融界の重鎮を占めている。
 1001クラブ等のという高度なビジネスコネクションを持っていた。 過去形である……。過去形……。 10年前に彼らのコネクッションは壊滅的な損害を被った。
 それは、10年前の月面基地での世界自然保護基金でのセレモニーでの事。 セレモニーは月面のテラフォーミング化が一段落した事でのパーティだったのだ。
 その日、月面基地はメルトダウンし消失した。
 何者かによって、ハッキングされた原子力施設がメルトダウンし対隕石用の水爆が爆発したのだ。 多数の政治家、経済、軍事関係者及び市民が命を失った。
 彼は運よく、地球に外せない仕事で来ていて助かったのだ。 月面にいた娘や孫、妻は帰らぬ人と成った。
 彼は何故にこの様な事が起き何者かが起こしたかを独自に調査し、グンマー校に至ったのだ。 復讐の鬼と化した彼は中央情報局カンパニー長官となり、グンマーへあらゆる妨害行為や破壊工作を指示した。 対して凛書記率いるGPUはというと米国の裏庭で中南米や中東・アジア地域での反米・政府運動へ秘密裏に介入。 米国への安全保障や経済への大打撃を与える事になった。
 結果として、5年前の首席暗殺未遂件に行きつく結果となる。 凛書記やその他女性陣の報復で、シリコンバレーや軍事基地等を色々致命的に破壊されて現在は休戦状態である。 そして互いに互いをテロ組織として非難してあっている。
 【テロリストと交渉】しないという名目で彼らは絶交関係にあり連絡しあう事も無い。 そんな中で唯一の窓口として、開かれているのが討論ディベート部である。
 『全く、私も暇で無いのですよ』
 「ええ、分かっています。今回はこれを見て貰いたいのですよ」
 言いながら、封筒の名から写真を見せる。 砂漠の中にポツンと一つの建物が浮き上がっている。 いずれも不鮮明な映像である。
 『イラクのオシラク旧原子炉ですね、それがどうかしました?』
 「稼働しているのですよ」
 『アレは貴方の友達シオニストと湾岸戦争で爆撃されて使用不可に為ったのでは?』
 「ええ、そのはずですが、これを見て下さい」
 もう一枚の写真を見せると青い周りの中で赤い光点が光っている。 何も無いハズの為、普通なら青い映像である。 が、光っている。
 『どうであれ、我々を認めなかった荼毘手シオニストがどうなろうと知らない』
 「ですが、中東へ干渉している貴校の関与が……」
 『我々はそのような事に関与していない、失礼する』
 ペコリと挨拶をすると言葉ことのはは彼の横から去って行く。 歩きながら言葉は彼女の後ろに立っている少年へ顔を耳元へ近ずる様に仕草をする。
 『急いで機体を廻して、此処は盗聴されているわ凛ちゃんと連絡とるわ』
 少年は頷くと人ごみの中で姿を消していく。
 (まずいわね、アレは宗教ジ―サス部が秘匿していた物)
 思案しながら歩いていると全チャンネルのテレビが緊急番組に変わる。 アナウンサーが緊張した声で映像と共に話し始める。
 【イラク、バグダット郊外の旧オシラク原子力炉で大規模な爆発が起こったそうです】 【詳細は不明ですが、中東全域で電子機器が使用不能になっている様です】 【一部の専門家の間では電磁パルス兵器が稼働したのではないかと疑っています】
 呆然と言葉はこのニュースを見る。
 (なんで?GPUの計画はもっと後だったはず?)
 そう思っている言葉のスマホが鳴り、メールが表示される。 本文も差し出し人は無くただ【らいと空っ風義理人情】と書かれていた。

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