グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第157話 介入する者たち

  ――2100年6月01日10時00分 ペンタゴン
 彼らは今日も先週からの中東アラブでの件について意見を纏めている。
 『で、向こうの混乱はどうなっている?』
 「第六艦隊は現在、ヒューストンへ帰投中、全アラブでは大混乱です」
 第六艦隊の旗艦エンタープライズは空中艦である。 所属は空軍だが艦のメンテナンスは宇宙基地があるヒューストンで行う必要がある。 イタリア半島にも海軍基地は存在するがそこではメンテナンスは出来ないのである。
 「また、各地域においてインフラの破壊及び部族長が暗殺されております」
 『で、それは我が国の空軍がやったのというのか?』
 「イイエ、記録上では存在していません」
 『では、何故?わが国のマークが映っているのだ?』
 とんと机の上に各新聞紙を見せる。 新聞にはインフラや各勢力の重要人物達が襲われた事が書かれている。 写真には、F-35と青に白い星が描かれ米国所属を示す物が映っている。
 結果として中東全域から非難を受けている。
 『で、奴らはどうしている?』
 「奴らとは、アラブの連中ですか?」
 『違う、グンマー校だ!奴らは何をしている?』
 「彼らならスイスにいますよ?」
 映像展開され、巨大な飛行船が停泊しているのが映し出される。 スイスのベルンに到着した機体はメンテナンスに入ったのだ。 巨大な機体がイタリア上空で話題に成らないはずはなく取材が殺到したのだ。 勿論、グンマー校は彼らを招待し機体の見せられる所を見せたのだ。
 『長期に渡って、無限に航行可能か……食料プラントまで装備だと』
 「ハイ、5年間に渡り処女航行を行っていたそうです」
 『っという事はイタリア半島開放にも?』
 「ハイその様です。もうすぐ二番艦も建造が終了するそうです」
 『そうか……』
 ジッと目を機体が映る写真に目を落とす。 彼が目が止まったのは機体の後部、精神伝導メンタルトランスエンジン付近。 そこには何か黄色い粉の様な物が少しだけついている。
 彼にはそれについて心当たりが有った。 砂漠で戦闘機のフィルターに詰まる砂である。
 (まさか、奴ら今まで中東にいたのか?)
 っと思うが彼の論理的思考がそれを否定する。 論理的に考えれば十二・三歳の時から彼らは中東に干渉していた事になるのだ。 そんな事は米国的には考えれない事である。
 が、彼はグンマー校の彼らが適合者フィッタ―であり第1級の兵士である事を失念していた。 これは米国及び世界各国に見られる風潮であるが、適合者フィッタ―を命令に従う人型兵器と思っているのだ。
 『続けて監視しとくように、我々は大統領閣下に報復作戦を提案するぞ!』
 「ハイ、わかりました」
 彼らは如何に野蛮なテロリストや敵と戦うかの作戦を練り始めた。
 ■  ■  ■
 ――2100年6月01日14時00分 スイス ベルン
 米国との時差は凡そ6時間、中東部アラブはスイス・ベルンに来ている。 ベルンの位置は北にドイツ、西にフランスを見る都市であった。 現在は対ビーストの戦いで最前線となっている。 その為に一般人はおらずいるとすれば、ニュース目当ての記者や聖騎士団位である。
 空港内には多数の外装武器ペルソナや武器弾薬がグンマーやイタリア本土からピストン輸送されている。 物資は抱負だが、人員不足の為に記者すら武器を持たされ最前のバーゼルで激闘中。
 「我々、宗教《ジ―サス》部は貴方を歓迎します」
 『我々、中東部アラブは凛書記の指示により、応援に来ました』
 黒髪の少年と翠髪の少女握手をしている。
 「すでに十数名が前線に移動しているようですね」
 『ええ、彼らは基本は戦闘狂バトルジャンキーですからね』
 中世・近代古今東西研究部、 中東部アラブは歴史を研究している。 研究している時代は各国が覇権をめぐって戦う時代、彼らも自分達が当時の戦闘の格好で戦うのだ。 最初は研究の為に当時の武器で慣れない戦いをしていたが、適合者《フィッタ―》だけあり直ぐ慣れた。
 現在は浪漫部と連携して、戦術・戦略的を用いて実戦を行っている。 しだいに、彼らは戦闘狂バトルジャンキーっと為っているのだ。
 「中東情勢はもはや止められない」
 『我々の計画道理です。凛書記も貴女も満足いく結果でしょう?』
 中東情勢は先日の各部族の首長が暗殺され、第六艦隊の空母が攻撃された。 これにより米国と中東各国の関係は悪化の一途を辿っている。
 「だが、我々、宗教ジ―サス部はまだ足りないのですよ」
 『強欲ですね』
 「全ては、神という存在を調査する為です」
 宗教ジ―サス部の役割は神という存在を研究する部活である。 日本人は元から信仰心が余り無いが、適合者《フィッタ―》にはそういう物は無い。
 『神という不確定な存在を引きずりだすのが目的でしたっけ?』
 「あら?歴史はHISTORYと書いて彼の歴史なのよ?一体誰の事なのかしら」
 『だからこそ、ヴァチカンを開放したのですね』
 「その通り、だが我々の求める神への解は得られなかった」
 『聖遺物を調査しても得られなかったのですね』
 「ええ、神を名乗り磔にされた男の槍とか布を見ても有機生命体にんげんであった事は確認できた」
 何故にグンマー校がイタリア半島及びヴァチカンを開放したか? それは宗教ジ―サス部の思惑が入っている。
 彼らの願いは一つだけ、【神の存在を確認する】である。 が、彼らは神の存在を確認する事が出来なかったのである。
 そして、次のターゲットは……。
 「顔の無い、偶像崇拝を禁じる神の存在を確認するのです」
 『我々、中東部としても文化レベルを歴史を中世に戻せるなら安い物です』
 恐るべき事である。 神という存在を引き出す為に、中東を戦火に巻き込むつもりなのである。
 『首席が聞いたら怒りそうですね』
 「勿論、あの方は知らないわ!優しい方だから反対するわ」
 『誰かが幸せになる為には誰かが犠牲になる必要があるのは歴史の事実』
 常に歴史という物は残酷である。 過去の二度の大戦から始まり人類の歴史は勝者と敗者を創っている。 勝者は富み、敗者は貧しく奴隷の様な生活を送らされる。
 『歴史を直視し反省するには、我々は負け組を創る必要がある』
 「そして、米国とは表向きは程良い関係を維持する」
 『全ては、我らの愛する』
 「グンマーの為に」
 『さて、私は凛書記へ報告書を書きます』
 「私も戦いへ参加してきます」
 少女は背中から翼を生やすとその場から消えた。 少年はスマホを取り出し報告書を書き始める。 

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