グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第123話 デキルオとゴア・ビル大佐


 ――2100年5月8日11時30分 馬返し
 2時間たっても、第二イロハ坂の偵察部隊は戻ってこなかった。 照貴琉男できるおは悩んでいる。 後方の日光東照宮基地に送った負傷兵達の代わりに、新たに5個大隊5千が送られてきた。 同時に正式な作戦指示も持ってきた。
 ~~作戦指示書~~
 明智平要塞を攻略せよ、ランクGの派遣社員は犠牲も払って構わない。 また、貴殿を現時点で正式にD社員とする。 必要な物資・資源等は要請すれば送る。 また、特別顧問として元米軍大佐のゴア・ビルを送る。 彼はサーフィンとクラシックが好きな大変優秀な指揮官である。 第一優先は彼の指示に従う事にある。
 ~~終了~~
 彼の前に立っているのは、カウボーイハットにサングラスを掛けた白人男性。 デキルオは彼に右手を出し握手をする。
 「宜しく、ゴア・ビル顧問どの」
 『宜しく、デキルオ。顧問では無く大佐と呼んでくれ』
 「では、大佐。どの様に明智平要塞を攻略すればよいでしょうか?」
 『聞いた話では、対空砲や7000門からなる陣地で塹壕もある要塞だと』
 「ハイ、その通りです。内部はほとんどが自動化されています」
 『ならば、圧倒的な歩兵と戦車で押しつぶすしか無い』
 そう言いながらゴア大佐は、馬返しからクネクネと曲がる第二イロハ坂を示す。 道順に辿って行き、最終的には明智平要塞で手を止める。 敵側に航空戦力が有る今は、歩兵と戦車部隊しか使える方法が無い。
 「では、威力偵察で1000名程」
 『イヤ、3000を使え!後方には増援を求めるんだ』
 「は、ハイ分かりました」
 『さらにだ、部隊はこのように展開させる』
 3000の部隊を3つに分けるて威力偵察をさせる。 1つ目は国道120号の第二イロハ坂を通る部隊。 2つめと3つ目は、山を登って行く部隊。
 「分かりました、そのように指示を出します」
 デキルオは部隊を編成し、威力偵察をさせる。 残った2000の部隊には塹壕等の陣地を増築を命じた。
 4時間後……戻って来たのは僅か3部隊で30名であった。 全員が重軽傷であったが、持ち帰った映像から分析を可能にした。
 1つ目の第二イロハ坂を通る部隊は、最初のイの所で猛烈な攻撃を受けた。 いずれも塹壕からの迫撃砲等を含む攻撃であった。 また、空からの攻撃もあり部隊はなすすべなく銃雨に晒された。 そらから攻撃しているのは、ランドセルの様な飛行装置を付けている。 機体は赤と水色が塗られ、赤い所には黄色の星と八一の文字が見える。 いずれも、中国人民解放軍空軍の軍事用旗である。
 『何故に、中国の航空部隊が来ている?』
 「ああ、多分そういう事にしたいんでしょうね」
 『ではあれは、中国軍では無いと?』
 「ええ、ハッキリ言ってコスプレでしょうね』
 『その根拠は?』
 デキルオは、拡大された映像を見せ縮尺を入れると縦横比が5:4と表示される。 自分のスマホを出し、本物の人民開放軍空軍機の縮尺を入れると4:5と表示される。
 「国旗に誇りを持つ彼らが間違える訳が無いのです」
 『なるほど!だが、これだけでは不十分だ』
 「一番は……この機体を扱えるのは有る県しか無いのです」
 『グンマー校か?だが、各国の部隊でも使えるだろうに?』
 「イエ、各国は戦闘機が主です。後、中国には適合者フィッタ―がいません」
 そう適合者フィッタ―という存在は、中国には存在していないのだ。 適合者フィッタ―は場合によっては、一個師団以上の力を持つ。 つまり、三国志でいう呂布みたいな存在だ。 いつか寝首を掻かれて、権力者になってしまう可能性がある。 軍上層部はそういった存在を恐れ、適合者フィッタ―を導入しなかった。
 しかも、2100年の現在は20億もの人口が中国大陸にいる。 ビーストの戦いは、人海戦術と飽和物資で対応できている。 だから適合者フィッタ―は、公式上では存在していない。 いても党の元で厳重管理されており、この様な場に飛んでくる訳が無い。
 『ふむ、っという事は適合者フィッタ―と戦うという事だな』
 「そうです、下手したら世界さいきょうの部隊です」
 『世界最強ワールドストロンゲストは、我々米国海軍だがね』
 「イエ、世界最狂ワールドクレージスです」
 『なるほど、同意しよう』
 そう言いながら第2と3部隊の映像を映す。 人民服を来た少年少女達が、銃で撃っている。 いずれもランドセル型の背嚢を背負い、マニュピレータから盾を出している。 隊員達達から撃たれた銃はシールドの様な物で弾かれ、全く効いていない。
 「外装武器ペルソナのシールドですね」
 『どうやって、これを破れる?』
 「大量のマギウスジャマーを照射するしか無いですね」
 『山岳地域で、制空権が無い所で軍用の物を照射できるのかね?』
 「難しいでしょう、そこで提案があります」
 デキルオが示すのは、大量の砲撃をしながら突撃をするという物。 外装武器ペルソナというのは精神に左右される。 防御用の外装武器ペルソナは大量の砲弾を防御しながら、小型弾の防御は難しい。 精神の認識差があり大型の弾を防ぎながら小型弾を弾く事は出来ないのだ。 普通ならその様な事が無いように、ペアを組んで対応する。
 『全面に火力を加え、砲弾だけを外装武器ペルソナで守らせます』
 「で、兵士たちを突撃させ敵を撃つという事か!』
 『なるほど、出来るだけ兵士の数が多い方が良いな』
 「そこで、中禅寺湖側部隊に提案するのです」
 『ふむ、あっちに手柄を持ってかれるが良いのか?』
 「彼らの10万では、疲れさせるのがいっぱいでしょう」
 『そういう事か、我々は美味しい所を貰う!』
 「大佐どのには、その案を彼らに提案して貰いたいのです」
 ゴア顧問は何も言わずに首を立てに降った。 デキルオは、スマホでさっそく作戦提案書を作り始めた。

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