グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第122話 第一いろは坂 強行偵察


 ――2100年5月8日09時30分 第一いろは坂 
 2100年のいろは坂はクネクネ曲がってはいるが、片側二車線になっている。 これは、一般車両の物資を円滑に運ぶ為に舗装されたのだ。 米軍の軍事車両は男体山からの専用戦略ルートを通っている。
 普段は車で溢れている通りは、今日は一台も通っていない。 綺麗に掃除されたかの様に何も存在していない。
 立っているのは2人の男たち。 矢路一男やるかずお屋良凪男やらないおである。
 「ヤラナイオッ、誰もいないお」
 「道路だから当然だろう」
 「それにしても、車や検問の隊員が居ないのはおかしいだお」
 「そうだな、誰かが片付けたとしか思えない」
 そう言いあいながらクネクネ曲がる道を歩いていく。
 NEO中禅寺湖は、PKO国連軍の基地。 それを良く思っていない勢力もいるわけで、プロ市民が道路を封鎖したりする。 分かりやすくいうと沖縄のヘリパットへ続く道を封鎖する団体と同じ感じである。
 彼らは日頃こんな感じの事をしている。
 「ビーストは半知性体である話せば分かる」 「日本に侵略している国連軍は出て行けーーー」 「自衛隊は九条の平和憲法に違反している!」 「LOVE&PEACEと酒を呑み交わせば分かるーー」
 そんな事を言いながら、プラカードを持ち抗議活動をしている。 活動に参加しているのが、日協組やリベラルと呼ばれる集団である。 得意なのは、【差別だ!】【ヘイトスピーチだ!】とレッテルを貼り。 そんな連中だが2100年の世代が入れ替わった時代では、絶滅危惧種となっている。
 多くの日本人は、PKOや自衛隊が日本を守ってくれている事は知っている。 が、いつの時代も異端や異質が正しいと誤認する連中はいる。 そういう連中を飼っている組織や国家もいるわけで……。 お隣の国とか二重国籍議員の子孫が所属する政治結社が絡んでくるで、政府も潰せ無いのだ。 オイタガ過ぎる連中は、G型トラックが発注され神奈川県警が事故死で片付けるのだ。
 G型トラックを受注された、とある校の首席はこう言ったらしい。 「神奈川県警は優秀です、大抵の不自然な死も自殺にしてくれます」 「まぁ、政治家名義でビール券を送っとけば大丈夫」 「送った方も否定するし、送られた方も否定ので誰も不利益を被らないwinwinです」 言ったらしいが詳細は不明である。
 話は逸れたが、ヤルオとヤラナオイの2人はイロハ坂を歩いている。 突如として霧が出てきたが、2人はそのまま道を進む。 霧が晴れると道の真ん中に、小学校で使う様な多数の机が道路上に並んでいる。
 「一体なんだお?」
 「分からないが、常識的に触らないのがベストだろう」
 「そうだお」
 そう言い合っていると足音や車の排気音が聞こえた。 2人が向かって行くと銃を構えた兵士達がいた。
 「「みかただお」」
 「手を見える所にだせ」
 言われるがままに、2人は手を上げると拘束される。 相手からしてみれば、敵か味方か分からない状態で拘束するのが一番手っとり早い。
 「不自然な事をすると撃つぞ!正直に答えろ」
 「「はい、わかったお」」
 「お前らは、どこの部隊だ?あと、この机は?」
 「日光の部隊で、強行偵察で来たお。この机は知らないお」
 「詳しくは、俺の持っているスマホを見てくれ」
 ヤラナイオに言われ、腰に付けれられたスマホを隊員が確認する。 隊員はスマホの中身を確認し、周りの隊員に首を立てにふる。 向けられていた銃が下げられる。
 「どうやら本当のようだな、すまんな確認の為に拘束させて貰った」
 「仕方が無いだお」
 「所で本当に机の事は知らないのか?」
 「知らないな、俺たちも丁度ここに来たんだ」
 『教えて上げましょうか?』
 少女の声がし、全員が銃を構え声の方を見る。 いつの間にか、黒髪短髪、切れ目で蒼い瞳の美少女が机の上で胡坐を組んでいた。 着ているのは、立折襟で二つの胸ポケットに二つの裾ポケットをもった緑色の服。 いわゆる人民服という物である。
 <a href="//19656.mitemin.net/i246840/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i246840/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 「お前は一体何者だ?」
 『ただのプロ市民ですけどね』
 「無駄な抵抗はやめて拘束されるんだ」
 『出来る物なら、やって貰いたいですね』
 少女は両手を挙げながら、笑顔を見せる。 同時にドーン、ドーンっと音がしヒュルヒュルと大気を引き裂く音がする。 ダーーーーン、ダ―ーーンっと爆音がする。
 爆音がしたのは、彼らの遥か後方。 そこには、先遣部隊が展開していた。 人が文字通り吹き飛び、戦車が亀の様にひっくり返る。
 『120mm砲の威力は中々ですね!人が吹き飛んでる』
 無邪気にぞっとする笑みを浮かべながら嬉しそうに声を上げる。
 「貴様!何をしたのか分かっているのか!」
 『勿論だよー、君達を敢えて生き残らせたのは伝言を伝える為だよ』
 「我々はテロリストと交渉はしないヤレー」
 頭に血が上った隊長は隊員に攻撃を命じる。 銃を構えた隊員達は少女へ向けて弾を撃つ。 が、放たれる弾は少女に当たる事は無かった。 周りにあった机がバリケードの様になり、少女の前に塞がったのだ。
 玉は弾かれ大地に落ちる。 隊員達は思わず呆然とし立っている
 『うーん、通常弾で私に勝てるでも思ったのかな?じゃ私のターン』
 バリケードの机を飛び越えて別な机が姿を見せる。 その机は教科書を入れる所に牙が生えていた。
 「撃て!撃て」
 トリガ―に手が掛かる前に、机の口から黒い手が出て隊員達を襲う。 ギャ、ワァーという悲鳴と共にバリバリっと嫌な音と共に肉片が飛び散る。 飛び散った肉片も黒い手が綺麗に舌の様に舐める。
 『綺麗に掃除終わったね、アレ生きている人がいるよ』
 そう言いながら少女はバリケードを飛び越え呆然としている饅頭と細長い頭の元に来る。ヤルオとヤラナイオである。
 『ふむ、2人は私に攻撃をしなかったのね。向こうさんに伝言お願いしてもよいかな?』
 「「……」」
 饅頭頭のヤルオは、股間から液体を流し白目を剥き立ったまま失神していた。 ヤラナイオも失神している。 少女は2人をデコピンすると2人ともズザザっと10mほど吹き飛んだ。
 『んーー?起きないか?まぁ、イイや伝言をお願いしよう』
 2人を机の上に置き少女は懐から封筒を取り出し、2人の懐に入れる。 その他にも、スマホ等の通信機器をポケットに入れる。
 『じゃ、2人を敵さんの前線まで持っていってね』
 分かったと机は体を震わせ2人を連れて行った。 机が運んでった先には、爆発で吹き飛んだ先遣隊の後続がいる。
 「うぇーひでーな」 「ササッさと転がっている障害物を退けるんだ」 「お、お前ら何かが来たぞ」 「構えろ!」
 隊員達は銃を構える。 机は彼らの前で止まるり、上に載っていた2人を振り下ろし去って行った。 
 「よし、拘束して後方につれて行くぞ」 「何か手に持っているぞ」 「後で良いからとりあえず撤収だ」
 彼らは2人を装甲車に乗せ、部隊が待つ所へ戻る事にした。 

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