グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第103話 羽田空港狂騒曲 (9)★


 ――2100年4月28日14時00分羽田空港
 羽田空港内駐車場内の装甲車内。 黒いミリタリースーツを着た男達が顔を合わせている。
 <a href="//19656.mitemin.net/i237241/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237241/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 『先の戦いで散っていた仲間の敵を討つぞ!』
 「「「オウ!」」」
 声を上げている。 彼等の正体は、自衛隊の対適合者部隊トゥフィッター。 多くの隊員が、元特殊作戦群からの生え抜きである。
 その前に、対適合者部隊トゥフィッター部隊について説明しよう。 彼等は、近年増加する適合者フィッターの犯罪に対応する部隊なのだ。 適合者フィッターの多くが、第一世代でも16歳の少年少女達。 彼等が悪事を働いた時に、鎮圧する為の部隊である。 練度は高く、1人で10人の適合者フィッターを鎮圧出来ると言われている。
 が、対適合者部隊トゥフィッターは一度壊滅している。
 5年前のグンマー校首席暗殺事件の際に投入されたのである。 結果として、投入された200名全員が帰らぬ者となった。 たった、1人の適合者フィッターに全滅させられた。 それが、彼等には深い傷となっている。
 「隊長!グンマー校の奴、来るのですかね?」
 『おい!まだグンマー校と決まった訳では無いぞ!』
 「ですが……先日の件はグンマー校の地獄の傀儡師ヘルズマリオンは」
 『すでに、偽者とグンマー校と政府で一致している』
 先日の新橋で会った、要人暗殺事件。 メディアでは、赤茶髪に赤い瞳の少女が話題になっていた。 多くの専門家が、地獄の傀儡師ヘルズマリオンこと前橋宇佐美まえばしうさみと確認していた。 これに対して、世論が過敏に反応したのだ。
 宇佐美には、10年前に西日本で500万人の殺害に関わった疑いが有るのだ。 そんな存在が、東京で再び姿を見せた。 同じ事が再び起こるのでは?っという思惑で動いたのは経済市場。 1日にして、円が売られアッという間に円安に代わり1ドル150円までドルが50円あがった。
 日本政府はグンマー校へ公開質問状を送った。 【今回の襲撃は、グンマー校による物か?前橋宇佐美まえばしうさみは襲撃犯なのか?】 実に正直な疑問をぶつけたのだ。 世論は、【グンマーがこんな正直に答える訳が無い】という評価だった。
 次の日に、グンマー校から返答が公開された。 【今回のは、宇佐美では無い。彼女は任務で東京に滞在しているが関係は無い】 驚く事に、グンマー校も正直に答えてきたのだ。
 特に世論の憶測を生んだのが、【任務で東京に来ている】っという点だ。 憶測が勝手に進み、皿に円安が進み1ドル200円まで50円上昇した。 僅か2日にして、100円の異常な上昇を相場を経験した。
 ここで、首都圏校がコメントを発した。 【宇佐美は、乙姫首席と共に居りグンマー校の代表として打ち合わせをしている】 この様な簡素でありながら、意味深なコメント。
 首都圏首席という対グンマー首席の最終兵器であり、日本最強のブランド。 乙姫が宇佐美を抑えているという安心感が、世論に広がった。 これにより、市場は乱高下を繰り返し1ドル100円までに僅か2日で戻った。
 『今日こそ!我らが国民を守る組織という事をアピールするのだ』
 「ハイ、先日の様に言われるのは懲り懲りです」
 ここで、世論から生じたのがある疑問である。 【政府や自衛隊より、首都圏校の方がグンマー校とやりあえるじゃないの?】 【そもそも、自衛隊は適合者フィッター相手に戦えるのか?】 政府や自衛隊に、向けられた疑問である。
 自衛隊は日々、東京や世界中でビーストの探索や迎撃をしている。 表に出ないが、人々の生活を守っている。 しかも、グンマー校や首都圏校と違い、政治的目的で作戦行動する事は無い。 そう考えると自衛隊は、忠実に国民を守っているといえる。
 が、国民の多くがビーストより適合者フィッターの集団であるグンマーの方を見ている。 政府も10年前の紛争以降、グンマーを目の敵にして来た。 お隣の国で、やっていた反日教育なみの叩きをしたのだ。 その結果が、全てグンマーに目が向くという悲劇。
 流石に、政府は不味いと思い始めたが止められる訳にも行かない。 そこで発生したのが、要人暗殺事件。 何とか、自衛隊を活躍させ対ビーストへ目を向かせようと政府は舵をとり始めた。
 『目的は、要人の護衛でも無い。自衛隊の存在を世に見せる事だ』
 「実際に行うのは、我々対適合者部隊トゥフィッターですね」
 『その通りだ!我々の成果が、自衛隊の成果になるのだ!それでは、解散』
 全員の姿が、霞の様に消えて見えなくなった。 彼女と彼等が会敵するまで、あともう少し。

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