グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第99話 羽田空港狂騒曲 (5)


 ――2100年4月27日10時00分羽田空港
 羽田空港内の社長室。 豪華に飾られた部屋の中で、中年の男は頭を抱えている。 男の前には、一枚の書類が置かれている。 書類には、【暗殺者捕縛作戦】と書かれている。
 「社長、どうされたのですか?」
 『どうもこうもない、これをみろ』
 書類を秘書に見せる。 パラパラと書類を見た後に、秘書は思わず声を上げる。
 「こ、これは社長」
 『見たことは忘れろ、さもなくば東京湾に浮くハメになる』
 「は、はい。ですが、これは不味いですね」
 秘書が開いている書類にはこのように書かれていた。
 ~~書類~~
 本作戦は、連続襲撃者を捉える事に有る。 作戦場所は、羽田空港。 実行は、自衛隊特殊部隊及び警視庁特殊部隊。 囮として、標的を使う。
 不明確な情報だが、襲撃者はグンマー校の生徒。 目的は、先日の事件の報復。 依頼主は不明。
 我々の目的は、襲撃者の捕縛。 襲撃者から情報を得なければ成らない。 その為には、羽田を再建築する事も考慮している。
 ~~終了~~
 つまり三行で纏めるとこうである。
 【連続襲撃犯を捕まえるよ】 【自衛隊と警察が全力を上げて戦うよ】 【捕縛する為に、羽田空港を犠牲にするよ】
 『我社は終わりだ!このままだと来年は空港が無くなる』
 社長は髪の毛を掻き毟る。 日本で、東日本唯一と言っていい羽田空港。 そこが、使えなくなる。
 国家的損失も有るが、会社は深刻だ。 羽田空港は、多数の社員を抱えている。 それが無くなる……関係者を含めたら5万人以上が路頭に迷う。 そんな事を許可したら、社長の命すら吹き飛んで仕舞うかもしれない。
 社長は頭を抱えた後に、スマホで電話をかけ始めた。 宛先は、ケンジーと書かれていた。
 ◆  ◆  ◆
 空港前には、多数の警察車両が姿を見せる。 普通のスーツ姿も居たり黒ずくめやで目隠しをしている者もいる。
 「隊長!全員準備が出来ました」
 「全員、予定どうり行動にかかれ」
 「ハッつ!」
 敬礼をし、彼等は空港内に入っていく。  普通のスーツ姿の者は、手帳を見せ職質を掛けていく。 1人のスーツ男が寝ている少年の肩を揺らす。
 『ん、鉄斎?お前誰だ?』
 怪訝な顔で先輩少年は、スーツの男を見る。 手帳を確認し、自分の学生証兼スマホを見せる。
 「首都圏の方でしたか?此処には何故」
 『あんたらと同じ理由や』
 2人の間に、沈黙が流れる。 スーツ姿の男は無線で何処かに通信を入れる。 暫くの会話後、先輩少年の方を向きなおす。
 「我々の邪魔をしなように」
 『分かっている』
 先輩少年は再び、眠りにつこうした。 だが、鉄斎少年が居ない事に気がついた。
 『あいつ、巻き込まれて無いと良いけど』
 先輩少年は呟きながら、起き上がる。 その時、鉄斎少年はというと……。
 「で、君は元グンマー校で今は首都圏校だと」
 「ハイ、そうです」
 「放校処分になって、首都圏校に転入と」
 多数のスーツを着た男達に囲まれていた。 どうやら、元グンマー校生で有った事に疑わているらしい。
 スーツの男は、こう考えていた。 放校処分になって、首都圏校に潜入。 羽田に来て、何らかの行動を起こそうとしている。
 「とりあえず、君は拘束させて貰う」
 「そんな!僕はただ此処に居ただけだ」
 身を乗り出し説明した瞬間、スーツ姿の男が倒れた。 右手で、左手を痛そうに抑えている。
 「公務執行妨害だ!君を逮捕する」
 「そんな、バカな!」
 どうやら、転び公妨に有ってしまった様だ。 アッという間に、男達に確保され手錠を掛けられそうになった時。 ヒュンっと音がし、男達の首筋にナイフが当たる。
 「「「なっつ!」」」
 『我々も邪魔をしないので、邪魔をしないで貰いたい』
 「先輩!」
 どうやら、先輩少年が間に合った様だ。 先輩少年は、一番偉そうな男に詰め寄り言葉を吐く。
 『さて、君の管理者とお話しましょうか?』
 首筋にナイフを付けながら、冷たい笑顔で先輩少年は言う。 男は首を壊れた人形の様に、振るので有った。 

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