グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第89話 忘れ難き孤児院(ふるさと)後編★


 ――2100年4月25日13時30分東京某所
 ザーザーッと雨が振り、ガラガラと雷が鳴っている。 そんな中で、鉄斎少年は少女と向き合っている。
 『貴様!孤児院をどうした!』
 「燃やしたわ」
 『中の先生や子供達は!』
 「みんな、(グンマーに)イカせて上げたわ」
 ゴウゴウっと炎を上げる孤児院を指差す。  閉じられた窓から、炎が吹き出す。 その様は、煙と炎から助けを求める手の様。
 「イエ、どうしてこんな事をした!」
 『だって、明日の食事にも困り、地域住民からも邪見にされてたので』
 「だから、殺したのか!」
 『ええ、(東京都の住民登録から)抹殺しましたが何か?』
 目を閉じ再び開き、鉄斎少年はメンタルギアの刀を展開する。 両手で構え、そのまま少女に飛び掛かる。
 『アラアラ、突然飛び掛かるなんて野蛮ですわね』
 「っつ」
 紙一重の所を嬉しそうな声で少女は避ける。 その言葉で、鉄斎少年は頭に血を登らせる。
 「貴様!!ッツ」
 刀を振りまわりし、少女に切りつける。 大粒の雨を切り裂けど、少女を切ることは無かった。 暫くの大立ち回りの後に、鉄斎少年はバランスを崩し地面に膝を着く。
 『弱いねーほーら』
 「ぐほっ」
 鉄斎少年の腹部に、少女の細い脚先が喰い込む。 ただ食い込むのでは無く、胃の物を逆流させる様に抉り込んでいる。 ゴロゴロと大地に転がり、胃の中の物をぶちまける。
 『能力を使うまでも無いわね』
 呟きながら、鉄斎少年の元へ向かうが後方に飛んだ。 ウサ耳少女が向かっていた先には、ナイフが刺さっている。
 「全く、可愛い後輩が気になって来てみれば」
 『やはり、気配があると思えばいたのね』
 「せ、せんぱい」
 少女が見る方には、首都校の制服を着た男が立っている。
 <a href="//19656.mitemin.net/i236405/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i236405/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 白地に金色の線が入った服は雨に濡れている。 が、雨に打たれた先輩少年は良い男だ。
 「なぁ、質問良いか?」
 『なんでしょうか?』
 「どうして、君は濡れて●●●●いない●●●?」
 『さぁ、どうしてでしょう?質問はそれだけ』
 「追加でもう一つ、なぜ弾に糸を付けている?」
 パチっと音がし、先輩少年が躰を逸らす。 背後に立っていた木が根元から倒れる。
 『眼科行った方が、良いのでは?』
 「私の目に間違いは無い」
 カキンっと音がし、ナイフと銃弾が大地に落ちる。 どうやら、ナイフで銃弾を落とした様だ。
 『……』
 「地獄の傀儡師ヘルズマリオンを上手く演じてはいた」
 先輩少年が、親指をパチンと鳴らす。 ウサ耳少女の周りを多数のナイフが囲む。
 「どうやって、人を操るかは君を確保してから聞こうか」
 『確保出来るでも?』
 「するさ」
 右手を振り下ろした瞬間、ナイフが少女の腹に刺さる。 アッという間に、少女の躰中にナイフが刺さり地面に倒れる。 先輩少年が近くに寄り、倒れた少女を確認する。
 赤茶色に紅い瞳は、黒髪黒目の少女に変わる。 適合者《フィッタ―》とは違い顔にはアバタが広がっている。 しかも、息をしていない……つまり死んでいる。
 「違う!こいつは、適合者フィッターでは無い」
 先輩少年は身構える。 全てが偽り、この少女はターゲットの一人なのだろう。
 『そうですわ、此れは神父の隠し子です』
 死んでいた少女から声がする。 しかも、死体が動き出す。
 思わず先輩少年は、後ずさりする。
 「し、死体を操っていたのか!」
 『イエイエ、生者でしたよ?殺人犯は私の目の前にいます』
 血だらけの少女は、ニヤリと笑みを浮かべる。
 <a href="//19656.mitemin.net/i236415/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i236415/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 後ろから、パトカーと消防車の音が聞こえ始める。
 『だから、言ったでしょ確保できるのって?』
 「き、貴様!!っつ」
 『では、ではさようなら。鉄斎君強くなってね』
 死体が手を振ると頭が弾け飛び、脳漿が2人に飛び散る。
 「せん、ぱい」
 転がったままの鉄斎少年声を無視し、先輩少年は死体を見つめる。
 (くっそ!してやられた!俺に一般人を殺させたな)
 先輩少年は、メチャクチャ悔しがっていた。 冷たい雨が2人を濡らし、パトカーと消防車が停止した。 先輩少年は逃げる様にして、鉄斎少年を抱え闇へ消えた。

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く