グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第81話 可哀想な羊《スケープゴート》後編★

 ――2100年4月23日19時00分首都校首席、寝室
 天蓋付きのベッド、ベッドの上に多数のお菓子が転がっている。 銀髪に紅い紅い瞳、赤茶に紅い瞳の美少女達が寝着姿で転がっている。 一人は熊のぬぐるみを持ち、もう一人はイチゴのぬいぐるみを持っている。
 <a href="//19656.mitemin.net/i235918/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235918/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> <a href="//19656.mitemin.net/i235920/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235920/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 熊のぬいぐるみを持っている方は、首都圏首席の乙姫。 イチゴを持っている方は、グンマー校十番隊隊長の宇佐美。
 細い躰に幼さが残る躰に白い下着姿は、男達の心をくすぐるだろう。 一方、豊満な胸に締まるところは締まった赤い下着姿は男達を野獣に変えるだろう。
 「乙姫ちゃんて、以外に可愛い趣味持っているのね」
 『私だって、女の子なんだぞ!』
 2人はあの後、退院し乙姫の部屋に来ているのだ。 彼女の部屋は、首都圏校内に首席専用に作られている。 一般社会では、首相官邸とか大統領の家みたいな物である。
 「普通のホテルでも良かったのに」
 『貴女が2年前に首都圏に来て、一般ホテルに泊まった時の事覚えている?』
 「確か次の日に、とある料亭に爆発物を積んだトラックが突っ込んだわよね?」
 2年前のある日、料亭に爆発物を積んだトラックが突撃。 その場にいた副総理と経済関係者、政経界重鎮が多数死亡した。 犯人は、芸術家の青年で有ったが背後関係や動機は不明であった。
 『で、私が調べた所、その青年と貴女は同じホテルに泊まっていたわ』
 「偶然だね」
 『そうだね、貴女はスイート、彼は普通の部屋に泊まっていた』
 そう言いながら、乙姫は宇佐美に資料を見せる。 青年が死亡する直前の脳波データ。 2人分の脳波が写っている。 片方は青年、もう片方は不明アンノウンとなっている。
 『っという訳で、貴女の能力だと思うんだけど』
 「ああ、夢を紡いだかも知れない、【芸術は爆発】っと」
 ニヤリと悪い笑みを見せる。 それは肯定にも受け止められる発言。
 『理由は?』
 「彼の岡本芸術への愛情●●からある感情●●●●を学びたかった」
 『どういう事?』
 「我々、第一世代の適合者フィッターはその感情を持たない」
 『そうだね、私はその感情回路をインストールしている』
 「ウチの首席も見習って欲しいわね」
 宇佐美は不満げな顔をしながら、ベッドに倒れこむ。 柔らかい躰がベッドに投げ出され、扇情的な雰囲気を感じさせる。 そんな宇佐美に、乙姫が覆いかぶさり両手を固定する。
 「な、何をするのかしら?同性愛の回路でも入れたの」
 『イヤ、本当の本当の目的を聞こうと思って』
 ぺろっと乙姫の舌が宇佐美の鎖骨を舐める。 ゾクッと躰を震わせ、躰を捩る。 が、躰が動く事は無かった。 両手は黒い何かで、覆われていたのだ。
 「そうね、適合者フィッター管理条項コントロールプロヴィジョン法って知っている」
 『ええ、2,3年前まで話題になっていた法律だね、あれ以来話題が無くなっ』
 「気がついたようね、我々を管理しようなんて1万2千年早いわ」
 『あれは、グンマー首席も賛成はしていたが……』
 適合者フィッター管理条項コントロールプロヴィジョンというのは、適合者フィッターの能力を纏めデータ化を目指す条項。 ビーストとの戦いへ共闘する為に、各校の適合者フィッターの情報を纏めようという物。 日本のみならず、米国と合同で考えられていた条項。
 体裁上はビーストとの戦いの為となっているが、実際はグンマー校の情報を引き出す条項。 適合者フィッターを管理するだけでは、グンマーも否定するがビーストの戦いなら否定出来ない。 グンマーの反発は必死と思われていたが、300箇所の修正を条件に受け入れた。
 ただ、修正箇所は条項を無効にする物で有った。 酷いのは、情報の開示依頼後に内容が適切かの審査期間を経て公開という項。 どの位の時間が掛かるのか、指定はされていなかった。
 【機密情報なので50年は掛かる】と言われた時点で、日米政府代表は激怒した。 賢治首席は、【貴国の国家機密情報を全て開示すれば開示しますよ】と各代表に言った。
 焦ったのは、日本の政治・経済団体関係者。 彼等は、不都合な真実を機密情報として多く隠蔽していた。 その事を含め、料亭で話し合いをしていた時に事件が起きた。
 「そうね、賛成していたわ」
 『っという事は、貴女の単独犯?』
 乙姫は宇佐美の端正な顔を舌で舐める。 宇佐美の躰がビクンと跳ねる。
 「そ、そうよ、私の単独犯よ」
 『相変わらず、可哀想な羊スケープゴート
 「私が望んだからね、それが私の首席様への忠誠」
 怯えた顔から一点、笑顔に変わり宇佐美の躰がシュッと解れ姿が消える。 そして、その糸は乙姫の躰に纏わり付き芋虫に変える。
 『なっつ』
 「貞操が危ないから、取り敢えず拘束させて貰う」
 『縛ってどうするつもりだ、さぁては私を調教つ……』
 口が塞がれ、乙姫はムームーと声を上げる。 そんな乙姫を抱きながら、宇佐美は布団を被る。
 「抱き枕にして寝たいの明日も早いし」
 ギュッと抱きしめるとスゥスゥと眠りに落ちた。 余計な肉が無い乙姫の躰をギューッと締める。 乙姫も諦めた様で、瞳を閉じて眠り始める。
 (ほまれちゃんもいいけど、ウサちゃんも良いかもね)
 っと乙姫は思いながら、背後の柔らかい二つの双丘を感じる。 普段は無い暖かさに、乙姫が夢の世界に堕ちるのに時間は掛からなかった。 

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