グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第59話 地獄の傀儡師 前編★


 警報が鳴る、NEO埼玉基地内。 ブレナンは、病室で少女達の診断をしていた。
 「緊急警報!早く彼女達も避難させないと!」
 そう呟くブレンに呼応するかの様に、ドアをノックする音がする。 外には、屈強な米軍の兵士達が立っている。 ブレナンは、ドアを開け彼等に声を掛ける。
 「早く彼女達を避難させて」
 男達は、ベッドを移動させて運び始める。 ベッドが向けられた方角は、避難所と逆方向だ。
 「避難所はこっちよ!」
 ブレナンが言うが男達は、少女達を運び始める。
 「彼女達をどうするつもり?」
 とっさにブレナンは、彼等の前に立ちはだかり声を上げる。
 『回収するつもりですが?私は、宇佐美うさみ
 背後からの声に振り向くと兎耳が、目の前に映る。 下を見ると、赤茶髪に紅い瞳の美少女が顔を見せる。
 『ブレナン博士ですね?貴女も回収予定です』
 宇佐美は、ブレナンの前に手板マリオンを出す。 手板マリオンとは、マリオネットを操る十字型の道具。 その先には、糸のみが存在している。
 糸がブレナンの方へ向かうが、途中で止まってしまった。
 『貴女?友達とか家族いないの?』
 「なっつ!」
 『成程、希薄な人間関係……三十路でぼっちとは、かわいそう』
 「余計なお世話よ!」
 『仕方が無いわ、そのまま連れて行くわ!』
 「ぐふっつ」
 ブレナンの腹に宇佐美の腕がめり込み、ブレナンは意識を失う。 倒れたブレナンを宇佐美は、横の兵士に渡す。
 『さて、みなさん。運んで下さいね』
 手を叩くと男達は、ベッドの少女達を運び出す。
 『さて、次は楽しいパーティの始まり!書記様も面倒な依頼をしてくれる』
 文句を言いながら、宇佐美は嬉しそうに口角を上げる。
 ◆  ◆  ◆
 その頃、賢治は乙姫の部屋で林檎を剥いている。 林檎といっても只の林檎では無い。 果実の所に、口がある【噛み付き林檎ビーストアップル】。
 「賢治首席、ビースト化した林檎を何処から持ってきた?」
 「君が寝ている間に、県境に生えていたのを持ってきた」
 「NEO埼玉では、ビースト化した生物は持ち込みは禁止」
 「良い言葉を教えてあげよう」
 「なんだ?」
 「犯罪はバレ無い様に、証拠は他人に隠滅させる」
 乙姫の口に、切りそろえた林檎をブチ込む。 驚いた顔をするが、シャクシャクと食べる。
 「君も此れで、共犯だね」
 「ふががうがうが!(謀ったな!)」
 2人は言い合っていたが、会話をピタッと止めた。 同時に、壁からバリバリと音がし壁が剥がれ落ちる。 剥がれた壁から姿を見せるは、銃を構えた男達。 男達の手がトリガーを引き銃が発射される。
 「任せて下さい」
 動いたのは、秘書の中居屋銃子なかいやじゅうこ。 手元に出していた銃は男達に向けられている。 弾を受け、蜂の巣にされたのは男達の方だった。
 「おみごと」
 「お褒めにいただき、光栄でございます」
 スーツの両端を掴んで礼をする。
 外からは、銃撃戦の様な音が聞こえる。
 「賢治首席、一体何があったのだ?」
 「分からないけど、クーデータって奴なのかも」
 「全く何を考えているんだ!ビーストとの戦いが有るのに!」
 「それを僕たちが言う?」
 「ハハ、確かに10年前は殺しあった中だね」
 賢治は傍に掛けられた、乙姫の白地の金線が入った制服を渡す。
 「見るなよ!」
 「見ないよー」
 「AAAカップに欲情する変態は、いません」
 壊れた壁の方に賢治は躰を向けている。 乙姫は、病院服を脱ぎ制服に着替える。
 そんな事を言い合っているとテレビに映像が映る。 映像の主は、白人のスキンヘッドの男。
 <a href="//19656.mitemin.net/i235180/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235180/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 【私はダグラス副司令である!基地を占拠した】
 「乙姫首席、面白い事になったね」
 「そうだな、賢治首席!かつての関西動乱の様だな」
 「なんの事やら」
 「私に操り糸マリオンが見えないとでも?」 
 「さて、正義の乙姫首席さん!革命クーデータ犯を倒しに行きましょう」
 賢治は、左手を刀の柄に当てて飄々と答える。 返事の意味を理解した乙姫は肩を竦め、右手に大剣を取り出す。
 3人は、銃撃戦が未だにする通路を歩き始めた。 

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