グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第53話 大空のニアミス 前編★


 賢治が眺めていた青空には、10機の戦闘機が飛んでいる。 主翼の菱形翼と水平尾翼が特徴の戦闘機はF-35B。
 この時代のB型は、機首右側に海軍式の空中給油プローブを装備していない。 何故なら、石油以外の精神伝導メンタルトランスが使われている為。
 囲まれているのは、最新鋭の旅客機ボーイング787-9ドリームカマー。 旅客機の割には、銃座が付けられ物々しい機体である。 何故なら、国連事務総長専用の機体だからである
 「隊長!こんな所まできて良いんですか?」
 「知るかよー!事務総長さんが、お望みなら仕方が無いだろう!」
 「もうすぐ、グンマーとの県境ですよー」
 「分かっている!全員、墜とされるなよ!」
 「「「「「「「イェス・サー」」」」」」
 戦闘機のパイロット達は、より警戒を厳重にする。
 グンマーとの県境では、国連軍の偵察機との接触インターセプトが起きている。 アッという間に、上昇して来た飛行部隊が追撃を始める。 少しでも県境に入った瞬間に攻撃を喰らう。 1ヶ月前にも、偵察機が大破した。
 そんな、戦闘機を窓から眺めているのは、国連事務総長。
 『此処が、グンマーとNEO埼玉の県境か……』
 彼の名前は、ダグ・ハマー。
 <a href="//19656.mitemin.net/i234871/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i234871/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 世界中で、起きているビースト対策の為に駆け回っている。
 『グンマーと日本政府、どうして此処までこじれた?』
 ダグは、呟く。
 10年前の日本国内で起きた内戦。 僅か一年間で戦闘参加者100万名、重軽傷者5千名、死者99万5千名。 民間人死傷者1000万名。
 被害は、日本だけでなく世界中に広がった。 不思議な力で、月基地と国際宇宙センターは核と水爆で蒸発。 各国の核ミサイルは、宇宙空間で爆発し人工衛星が全て消滅。 GPS・衛星画像等が使用不能で、近代戦が出来なくなった世界の軍は大混乱。 その為、ビーストの交戦で大損害を受けた。
 『何故、日本政府はグンマーを県として認めなかった?』
 『何故、グンマーは県として独立を求めた?』
 呟きながら、ダグは思考を巡らす。
 (その為に、私はグンマー首席と日本に来たのですから)
 そんな、彼の思考はブザーで途切れる。
 『どうした?』
 「わかりません」
 秘書が、慌てて答える。 窓を見たダグの瞳に映るは、巨大な機体が雲の中から現れた光景で有った。
 「隊長!アレは、旧ソ連の!」
 「まて、グンマー機体だ!」
 雲の中から現れたのは、黒に金色の線が入った機体。 H型尾翼、主翼に付いている大型の前縁と後縁のフラップ、大型の六発のエンジン。 更に、多数の重火器が装備されている。
 「フュー、こんな所でAn-225、ムリーヤに会うとはな」
 「隊長、こいつ等何しに来たんですかね?」
 「さぁ、分からんよ!国連総長を守れ」
 「「「「「「「イェス・サー」」」」」」
 黒に金の線が入ったド派手な機体、グンマー校の所属である。 生産は浪漫部で運用は、航空部である。 何故に、旧時代の輸送機がこんな所にあるのだろう。
 グンマー首席が仕事●●の対価で、設計図を貰った事に起因する。 それを浪漫部が、貰って一から作り直した機体。 グンマーと各国の移動には、この機体が多数運用されている。
 彼等の目的は、凛書記から命じられた少女達の回収である。 ジョン司令官が、連絡を忘れた為に彼等が来る事をパイロット達は知らない。
 「隊長!グンマー機、NEO埼玉に航行中」
 「無線で、グンマー機に所属と目的を問え」
 「無線に応答有り、我れグンマー校浪漫部!NEO埼玉に向かう」
 「NEO埼玉に向かう目的は?」
 「今、聞きま……」
 六機のエンジンから、膨大なマギウス光が生じる。 同時にムリーヤは、亜音速で動き始める。
 アッという間に、雲海の中に姿を消す。 浪漫部パイロットは、NEO埼玉に到着予定時刻に間に合わせる為に加速。
 米軍パイロットは、突然の加速に逃げたと判断。 追尾を開始する。 
 2100年4月18日12時30分の事であった。

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