グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第41話 運動は豚の塔にて 前編★


 新六本木は、東京港区の旧六本木に建設された。 現在は、高級繁華店が軒並みを連ねる。
 かつての六本木のゴミゴミとした、街並みは無い。 綺麗に、区画された街並みが連ねる。
 夜のイルミネーションに照らされ、少年少女の姿が見える。 グンマー校首席の至誠賢治しせいけんじ。 首都圏校首席の白虎乙姫びゃっこおとひめ。 2人は急ぎ足で、街の中を通る。
 「凄いね、10年で此処まで復興するなんて」
 「此処は、完膚なき迄に破壊されたからな」
 銀髪を流し、乙姫が言う。
 10年前は、六本木は超高級住宅街で有った。 だが、群馬独立戦争グンマーワー時に大空襲を受け消滅した。
 文字通りの消滅。 各国の大使館以外は消滅した。 地下に避難していた民間人も多くが、犠牲になった。
 空襲時に各国の大使館員及び人員は、大使館に避難し無事だった。 それ以外の施設は全て、灰塵に帰していた。 空襲後、各国の大使館員が自国に【完璧な空襲だった】と報告している。
 特に酷い攻撃を受けたのは、六本木のヒルズタワー。 作戦総指揮官の妙義凛みょうぎりん書記は、【豚の塔】と呼び破壊を命じた。
 ビースト侵攻以降、日本の金持ちの多くが六本木と田園調布でんえんちょふに居を構えた。 何れも、羽田から近く国外脱出が早期に可能で治安が良いという理由だった。
 これらを日本への裏切り、安全圏に住む【資本主義の犬、豚】と凛書記は非難。 また、グンマーの県として独立否定派を支持する反群馬分子と非難。 反群馬主義ファシストを支持する財閥の解体を指示。
 文字通りの解体。 六本木の住宅街は、銃撃と砲撃で吹き飛んだ。 上級市民から寄付を受けている政治家は、上級市民の保護を自衛隊に指示。 【一般市民の保護】を名目に、グンマーに反撃を開始。
 結果として、反撃は失敗。 上級……一般市民を保護する事は出来なかった。 一般市民は、シェルターの中で1年間眠れない時を過ごした。 戦争終結後、彼等は文字通り一般市民になった。
 上級市民で無いのは、彼等の全資産が消滅した為。 資産も口座も全てが、消滅していた。 長年に先祖から受け継いだ土地、証券、資金。 全てが、売られ消えていた。
 警察も訴えから調査をしたが、スイス銀行に移動後は、資金は消息不明だった。 合計金額は、30兆円とも100兆円とも言われている。
 戦後は、昔を取り戻すという政府方針でより高級な繁華街が出来た。
 「さて、此処が、【白豚の塔】ですか?」
 「豚では無く、【象牙の塔】と言ってくれませんか?」
 2人は、中央の最も高いタワーの前に立つ。 白い壁が、繁華街の明るさで暗闇にぼぅっと浮かび上がる。
 入口には、スーツを着た男達が立っている。
 <a href="//19656.mitemin.net/i234713/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i234713/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 『オイ、ガキども!帰って、ママの乳でも吸ってな!』
 暗闇で、2人の制服が見えていない様だ。 首席を示す、五芒星ペンタクルに……。
 銀髪に朱い瞳の少女、乙姫はそのまま歩いていく。 賢治も同じ様に、歩いていく。
 『お前ら、死にたく無かったら動くなよ!』
 男達は、懐から何かを抜こうとする。
 「死んでるのに、どう殺すのかな?」
 乙姫は、大剣を右手に持ち首を傾ける。 バキッツと上から押す音がし、男達は血と肉の塊に変わる。 その様は、押しつぶされた、ひき肉の様だ。
 「姫ちゃん、めちゃ怒っている?殺しちゃって良かったの?」
 「ええ、とれも!派遣社員なんだから良いのよ!」
 乙姫は、肉片を蹴り上げる。 蹴り上げられた肉片は、更におち潰される。 2人が、エントランスに入ると警備員達が現る。
 「じゃまね」
 「今度は、僕が」
 賢治が左手で、刀の柄に触れる。 警備員達は、パタッと倒れ口をパクパクさせる。
 「何したの?」
 「口の周りを二酸化炭素で、覆った」
 「目的は?」
 「効果的でしょ?原因不明の死因だよ」
 「流石、自殺を創る達人。イヤ暗殺者かな?」
 言いながら、乙姫と賢治はエレベータに乗り込む。
 「賢治首席、何階だっけ?」
 「最上階の50階だよ」
 「みんな、待っていてね!」
 「さて、最上階の豚共に討ち入りだ!」
 「オー」
 入口の郵便受けには、こう名前が書かれていた。 50階:阿倍野来都あべのらいと
 一体何者なのだろう……。 

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