グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第31話 沿岸部イエ炎岸部
旧富山県氷見市、富山県西隅にある富山湾を望む都市。 その氷見港が、ジュっと音を立て蒸発する。
2085年のビースト侵攻以来、住んでいる人間は1人もいない。 現在は、1人の少女が氷見漁港だった所に立っている。
だったというのは、目の前の富山湾と氷見漁が、消失した為。 業火絢爛の炎に、飲み込まれている。
超高温の炎により30km圏内の海は干上がり、塩の大地を作る。 海水が流入し、塩の大地を作っていく。 その塩も蒸発し、高純度の塩を作っていく。
「わぁ、鯛の塩焼きだー」
炎の中を散策中に、見つけた獲物に声を上げる。 声を上げ近くで塩を割っているのは、朱音副首席。 ゴツンと音がし、塩の塊が割れる。
中から2m程の巨大な鯛が現れる。 ビースト化し、巨大化した様だ。
「割り箸、割り箸無いかな」
「どうぞ、有りますよ」
上空から2本の金属の棒が、落ちてくる。 朱音は、棒をキャッチしながら降りてくる人物を見る。
巨大な観音像に乗った少女。 金髪と腰までのロングヘアと朱い瞳、桜の髪飾りが目印。 親衛隊隊長、白衣加奈子だった。
「白衣親衛隊隊長、ご苦労様」
「お疲れ様です。流石ですね、富山まで開放させるとは」
「イヤイヤ、皆が立山に、ビーストを引きつけたから出来たの」
箸を使い、塩を取り中の白身を取り、口の中に入れる。 塩味と凝縮された魚の美味しさが、朱音の口内に広がる。
「おイッヒー」
っと声を上げほっぺたに手を当てる。 百衣は、仕方が無いですねという顔をする。
「朱音副首席、で1週間は、この状況が続くのですよね?」
「ウンそうだよ!此れは、1週間全てを燃やす技」
「移動は、出来ないのですよね?」
「出来ない、固定だよー」
「放っておけば、良いよ!」
「ですが、むふ」
百衣の口の中に、鯛の白身が突っ込まれる。 流石、親衛隊隊長、動じずデータを展開する。
~~データ~~
現在は、富山市周辺は業火絢爛の炎で覆われている。 半径30kmの超高温の台風が滞在している様な状況。 開放部隊は、高山を前線基地を作っている。 高山は、先程のビースト鷹の攻撃で焦土化した。
インフラが壊滅している為、黒部ダムを拠点化している。 富山市周辺は、水で流された為、基地化は時間が掛かると判断。 高山と立山の整備が終わるのは、1週間掛かる。
~~終了~~
「フーン、1週間か!大丈夫そうだね」
「ですが、関西勢が火事場泥棒的に、侵攻する可能性が有ります」
「福井とか石川を狙ってきそうだもんね」
「岐阜を狙う可能性は?」
「低地の水郷地域は編入済み、山岳地域には来ないわ」
岐阜は、圧倒的な山岳地域の多い。 北部の平地は高山盆地しか無い。 南部の美濃地域は、名古屋に編入されている。
「副首席そうすると、福井側からですね。目的は」
「日本海側の制海権を得るため」
「後は、グンマーへ圧力を加える為」
「西は関西連合、南部の首都圏連合、東の栃木」
「グンマーは圧力を受け続け、崩壊」
「っという訳で、私は関西連合を封じてくる。後は、任せた」
朱音副主席は脚の裏から、炎を吹き出し名古屋の方へ飛んでいく。 残されたのは、巨大な鯛と観音像に乗った百衣。
「まだ、魚の塩焼き有るかな?皆に持ってて上げよう」
百衣は、鯛を観音の1つの手に収め、炎の中めぼしい物を探す。 まさに、炎岸漁業。 良い子は、真似しちゃだめ。 彼女達は、グンマーで特別な訓練を受けた為に平気なのだ。
何時の間にか、観音は多数の手の中に焼けた魚を持っている。
「さて、私も1度返って、魚を持って帰ろう」
観音蔵は、ドシンドシンと音を立て走り始める。 その様は、炎の観音の様。
2100年4月17日15時30分 旧富山市及び富山湾が消滅。 半径30kmは、猛烈な熱風で襲われ生物は生きてない。 尚、グンマー親衛隊の夕飯は塩焼きの魚が振舞われる予定。
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