グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第22話 立山攻略 後編

  槍ヶ岳から北に25km、立山。 ビースト達は、豊かな自然の中、食事をし寝る。 そんな食って、寝て、住み心地良し。  理想の生活をしていた。
 猪ビーストの子供が1匹、親元を離れ遊んでいた。 プギャっと声がし、紫色の血が飛び散る。
 親ビーストが、子供のいた場所の匂いを嗅ぐ。 其処には、巨大な脚が有った。
 「何か啼いたかな?あ、猪型ビーストか?食料にしちゃえ」
 手が空から降り、丸丸太ったビーストを摘み上げる。 もう一つの手で、優しく挟み込み撫でるとプギャっと声を立てる。
 「まさに、屠殺される豚の悲鳴って奴だね」
 首をダランとし、血を流すビーストを眺める。
 「さて、安穏と生活をし牙を削がれたビースト達を皆殺よ!」
 「「「「「ハイ!!」」」」
 隊員達は、のんびりと草を喰んでいたビースト達を殲滅する。 中には、牙を向き抵抗していたビーストもいる。 飛び掛かるが、首を切られ永久の眠りに付く。
 だが、一応の弱肉強食の中で生き抜いたビーストもいる。 バチバチと雷音を立てる生き物は、立山名物の雷鳥サンダーバード。 体長は3m程で、躰中から放電している。 まさに、雷鳥サンダーバードに相応しい。
 隊員達の武器も金属が含まれている為、下手に近寄れない。 1人が銃型の外装武器ペルソナで、撃つが電気のシールドで止められた。
 「雷鳥サンダーバードですか……殺さず捕まてね、捕獲器有ったでしょ?」
 白衣ひゃくえが、上から指示を出す。 数名の隊員が、姿を消しバスカー砲の様な物を雷鳥サンダーバードに向け撃つ。 多数の黒い糸が巻き付き、黒い蹴鞠に変える。 転がされ、何処かに連れて行かれた。
 「生物部に、飼わせて見せようかしら?自家発電できちゃうかも」
 白衣ひゃくえが言っている間にも、立山の山頂はビーストの血で染まっていく。 猪、狸、熊、多数のビースト達が所狭しに並べられている。 何れも血抜きをされ、後方の陣地へ運ばれていく。
 「ようやく、立山も開放されましたか?あっけない」
 物足りなげに、白衣ひゃくえが呟いている。 そんな、呟きに呼応するかの様に、ピーピーと声がし、巨大な影が立山を覆う。
 その影は、巨大な風を作り隊員達を打ち付ける。 それは、槍ヶ岳をまるで羽休めの小枝の様に止まる。
 全長凡そ85m、全幅200m。 その獰猛な猛禽類の顔をした鷹はピービーと声を上げる。
 『ウチのシマ何アランドンじゃぼけ』 『くらぁああ、わしのシマにァランス、どう落とし前つけるんじゃ我』
 翻訳をするこんな感じに、抗議している。
 どうやら、口の悪い鷹は関西出身の様だ。 決して、関西人が全て、悪いという訳で無い。 口が悪いビーストを野放しにしている関西勢が悪いのだ。
 関西の悪口は此処までにしといて、鷹に目を向けよう。 巨大な嘴、硬そうな翼。 立山のボスと言っても良いだろう。
 「フフフ、鷹がボスとは素晴らしい!不肖、白衣加奈子びゃくえかなこ相手になります」
 巨大な観音像が、歩み始める、 多数の観音の手が、羽の様に集まり羽を作る。
 バサット音がし、全長100m程の観音像が空を飛ぶ。 鷹も隊員達も驚愕の顔をし、空を見る。
 「空を飛ぶのは、アンタだけじゃない!私達も飛べる」
 観音像は、空を飛んだ勢いで、鷹をぶん殴る。
 「神聖な剱岳に乗るんじゃないわよ!降りなさい!」
 鷹は岳から吹き飛ばされ空中で、体勢を立て直す。 ビービーと何か言っている。
 『オヤジにも、殴られた事が無いのに!』 『シマを荒らす人間なんて、修正してやる!』
 翻訳するとこんな感じの事を言っている。 どうやら、この鷹はオタクらしい。
 一方、白衣ひゃくえは、両手の親指と人差し指を合わせこう云う。
 「貴方と私の出会いに感謝ね」
 2100年4月17日12時00分。 親衛隊により、立山の占領完了。
 同時刻、ビーストホークと観音像、異種格闘技開始。 勝者には、剱岳が副賞として剱岳が手に入る模様。

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