グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第1話 プロローグ

 
 桜舞い散る、4月。 此処は、浦賀水道うらがすいどう上空。
 ピカピカとネオンの様に点滅させ、何かが浮いている。 迷子の飛行船か?
 イヤ、25mプール程のサイズの生き物。 それは、アンコウの様に提灯を光らせている。 周囲には、3m程のイカが触手を動かし、空を飛んでいる。
 近くには、夜光虫に照らされて、別な影が見える。 影の正体は、少年少女達。 背中にリュックサック型飛行装置を付け、空を飛んでいる。
 中央には、何も付けず空に立つ少年がいる。 彼はとある学園の首席で、賢治けんじという。
 「首席!敵ビースト発見、大型1、小型50、指示願います」
 「全員、敵小型ビーストを叩け、大型は俺が狙う」
 「了解!全員突撃します」
 彼等は武器を手に空を切り、突撃を開始する。
 イカたちも彼等の存在に気がついた様で、触手を向ける。 彼等は持っていた武器で、触手を切りイカを落としていく。
 アンコウは、提灯を大きく光らせ、光を収束させる。 どうやら、賢治に向けて照射する様だ。
 賢治は、持っていた刀の柄を右手で触る。 空間に一筋の閃光が走り、提灯がポロリと落ちる。
 「また、つまらぬ物を切ってしまった……」
 光を収束させていた提灯は、アンコウの目の前で爆発。 アンコウは頭部を失い、海に落下していく。
 「キャーッツ」
 という声で賢治が振り返ると一人の少女が、イカに触手で絡まれていた。 触手は腐食性が有る様で、服が溶けていき少女の服を顕にさせる。
 「見ないでー」
 少女は精神が動揺したのか、持っていた武器を消失させる。 可愛い制服は、みるみる溶かされていく。 溶けた制服の下には、フリルが付いた下着が見える。
 「大丈夫だ!俺は、君の下着に興味は無い。今助ける!」
 賢治が柄に手を掛ける前に、イカが燃え上がり塵に変わった。
 「この炎、朱音あかね副首席か?」
 「その通り、もうそろそろ、彼等が来るわよ」
 燃える様な腰までの髪。 ルビーの様に赤い瞳、丹精な顔立、右目に眼帯をしている美少女が言う。
 「首都圏と南関東勢力が、ビーストの反応に気がついた様だ」
 「俺たちには、気がついてないよね?」
 「まだ……気づいていないみたい」
 「さて、どうやって帰ろうか?」
 「栃木ルートが、一番早いけど」
 「イヤ、駄目だ!栃木上空で、栃木勢と戦闘が起こる可能性が有る」
 「だが、戦力の大半が房総半島だ!栃木など、恐るに足らずだろう?」
 「確かに、そうだね!全員、栃木ルートで戻るぞ!魚を引き上げろー」
 「「「オー」」」
 少年少女達は、トロール網を引き上げ始める。 大量の魚が、ビチビチと網の中で跳ねる。
 その様子を見ていた賢治が、刀のさやを右手で上に翳す。 ガキーンと金属同士が衝突する音がする。
 月の光に照らされ光る銀髪、朱い瞳の美少女。 制服の上からでも分かる華奢な躰に似合わない大剣を持っている。
 「こんばんわ!首都圏首席、白虎乙姫びゃっこおとひめさん」
 「なにゆえこんな夜分に、グンマー勢が此処にいる」
 「最近、グンマーでは魚が入荷し無かったので、収穫に来ました」
 「その様な事が、許されるとでも?」
 「昔ならね!全員目を閉じろ」
 声と共に、全員が目を瞑る。 賢治は左手で、つかを少しだけ抜く。 眩しい閃光が、夜空を昼間の様にする。
 「目が、目が……卑怯な!グンマー首席!勝負しろ」
 「全員撤退!栃木との交戦に備え、各自武器を確認」
 「「「「ハイ!」」」」
 「それでは、乙姫さま、Good night」
 賢治は乙姫に手を振り、夜光虫で輝く太平洋を歩いていく。

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く