大統領フルスイングで殴ったら異世界に転生した件。

慈桜

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やっと、やっと母ちゃんに会える・・・・・・。
オバナの手から山の頂上へ送られ大聖殿の扉を開ける。そこは大きな教会のような場所で中心にポツリと人影がある。水神であろう彫刻に祈りを捧げる女性の姿。後ろ姿でわかる。
「お母・・・・さん・・・・・・」
距離的に聞こえるはずの無い小さな声だったにも関わらずオカンはゆっくりと振り返り大粒の涙をダラダラと流し始める。
「コナン!!!!!コナン!!!!!!!!!!!!」
長く長く感じる短い距離をおぼつかない足で走る母親に思わず俺も駆け寄る。そして互いの手が届き強く抱きしめられる。
「ごめん、ごめんねコナン・・・・・・。」
母親の温もりに俺も大粒の涙が溢れ出す。
「会いたかった、会いたかったよ母さん」「ごめんねぇ、ごめんねぇ」
生暖かい涙が俺の頬に流れてくるが何故かとても心地がよかった。
そこにパンッパンッとゆっくりとした嫌な拍手が響き渡る。
「こんな結末ならお前を待った意味がなかったよアレン、計画が台無しだ。」
「アルフレッド・・・・クソッ」「待てコナン。」「アレン!!どけろ!!」
俺はすぐオバナを呼びに行こうとするが呼び止められる。あいつとやりあうのはまずい、今はオカンもいる。
「いやコナン話しを聞こう、なにやら様子がおかしい。アルフレッド、計画とはなんだ?」
そう言って恐る恐る振り返るとアルフレッドは小さく悲しそうに笑っていた。
「アルフレッド様・・・・。」
オカンがそれを悲しそうな顔で見守る・・・・。なんだ?なにが起きてるんだ?
「俺の計画を話すには、まず死んで虚無の世界へ行った事へ遡る」

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俺は、生きる全てを戦いに注いできた。それは幼き頃より苦楽を共にした親友と幾度と刀を交えようとも変わらなかった。アレンは俺に戦う事をやめろと口うるさく言ってきた、お前のは戦いでは無く虐殺だと、それでも俺はやめなかった。アレンの前に命を散らしたと同時に俺は後悔をした。国の為に戦う事の愚かさ、意味の無い人の生き死に。俺はなんの意味も無い人生を生きていたのかと。自分の命を軽視し、死に場所を求める毎日。だが、アレンと戦っている時だけは俺は生を実感していた。だが、俺は何かに気付き始めていた。この国に対する不満と行き場所の無い征服欲を巫女を犯す事で満たしていた。ただ性欲の為に。だがその感情が次第に感じた事の無い感情に変わるのを感じ、俺は恐怖した。そして俺の子供が出来たと聞かされた。笑えるだろ?戦に行く前に犯し続けた女に自分の子供が出来たと聞いて体が震えて仕方無かった。そして死への恐怖は俺の死へと繋がった。虚無の世界で俺は後悔した。愛の為に生きていればどれだけ幸せだったのかと・・・・。何も存在しない無の空間で永遠に彷徨うのはいい罰だとは思った。俺のような人間にはお誂え向きな罰だと笑った。だが、この国は無謀にも俺を禁術を用いて生き返らせようとした。俺の10人の部下が生き返らせられたのを本能的に理解すると同時に虚無の世界から俺の体が薄れていくのを感じた時、神が目の前に現れた。
「呪いで縛られるぐらいならワシと契約をせぬか?」
渡りに船だった、そしてこの世界の現状を聞いて憤慨した。
「ならば神よ、俺がこの国を変える。呪いを解いてくれ」「ではお前の強い願いを対価としよう、お前は何を差し出す?」
許せなかった。しょうも無い戦争の為に愛する者の命を使い使者を蘇らせるこの国が。そして俺は呪いを解き力を手にする為に対価を支払った。俺に助けを求め願う者、シルビアのおかげで俺は力を手に入れた。そして神はアレンとコナンの間にある盟約を俺に施した。計画の邪魔をされない為に・・・。神の後継者であるコナンをただの殺人鬼に変えない為に。当然あの時の俺の攻撃はお前に当たらんかった、スキルも使えず圧倒的な差を知れば馬鹿げた復讐なんぞ諦めてくれるかと思ったんだがな。親子喧嘩にとんだ邪魔が入ったものだ。

まぁ、それからはただこの国を陥れる為に動きまわった。そして今日、十神衆と王を殺した、後はお前らが俺を殺すだけでよかった。俺はアレンにこの国の英雄王になってもらおうと画策していたのだ。だが、バカな息子のせいで台無しだ。
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「だが、もう過ぎた事だ、神よ見ているのだろう?」
アルフレッドの話に放心状態だった。正直意味がわからなかった。そして呼びかけに答えるように爺が祭壇に現れる。
「契約違反と言う奴だのう。」「あぁ、俺はお前との約束を破らせてもらう」
アルフレッドは俺を抱きしめる。
「アレン、これからもこいつの事を頼む。」「あぁ・・・・任せとけ」
さらに強く強く俺を抱きしめたアルフレッドは眉間に皺を寄せ目に浮かぶ涙を零れさせまいと無理にぎこちない笑顔を作る。
「コナン、俺のかわいいコナン・・・、シルビアは長生き出来ないかもしれない。だが、悲しい顔はせずに笑顔でいてやってくれ。」
「・・・・・。」
そこにオカンも抱きついてくる。
「駄目です、駄目ですアルフレッド様!!」
その言葉、涙に首を静かに横に振り。
「こんな父親ですまん、コナン。その大いなる力は人を笑顔にする為に使うんだ・・・愛してる・・・コナン・・・・愛してる」
その言葉と同時にアルフレッドは緑色の煌きとなり消えて行く・・・。駄目だ、なんか言わなきゃ駄目だ!!!
「おやじ!!!!!俺も・・・・俺も・・・・・」
言い切る前にそっと優しい笑顔を残し消えて行った。
「おい!!ジジイ!!やり直せ!!もう一回アルフレッドを・・・親父を呼んでくれよ!!!」
だが爺は首を横に振る。
「あいつはお前に愛を伝える事を対価に力を手に入れ蘇生した、契約を破ったからには相応の罰がいる」「どんな罰だよ!!対価なら俺が払ってやるから呼び出せよ!!!!」「無理じゃ、あいつは魂ごと消滅してしまったのだからな。
俺は何故か恐怖し恨みすらしていたかも知れないアルフレッドの、オトンの深すぎる愛にとめどなく涙と鼻水を垂れ流した。オカンがそれをなだめるように抱きしめてくれるが俺はずっと泣き続けた。深くはわからないが魂の消滅は文字通りなのだろうと理解するが俺の心は否定し続けたからだ。
「コナン、これを」
アレンがオトンの籠手を差し出してくる。
「あいつに負けねぇいい男になれや」
「お前まで泣くなやぁ!!!!!」
しばらく泣き続け、いつの間にか神は消えていた。抱きしめた籠手の裏に一枚の手紙があるのを見つけた。
「アレン、読んでくれないか?」
『親愛なるコナンへ魔拳プロミネンス、お前は正しく使ってくれると願っている。この手紙を読んでいる頃には俺は消滅しているかも知れないが、俺は常にお前と共にある』
「クソ、あいつ最初からコナンに話すつもりだったんじゃねえか・・・・」
そうだな、俺の為に・・・見た事も無い息子の俺の為に、あなたは尽くしてくれたんだな、なら俺は期待に応えねばならないだろう。母親と幸せになる為に、俺はあなたの分も母を幸せにしよう。
「母さん・・・行こう。」
こうして長く短い旅は終わった。

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