大統領フルスイングで殴ったら異世界に転生した件。

慈桜

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「じゃあ気をつけて行くんだよ。」「あぁ、でもやっぱり猫の人形は持って行くんだな。」「・・・。ふん、この前のくま・・に続いてうちの主力商品にするんだよっ」「くまたんって言えばいいのに。」「あんた帰ってきたら覚えときなさいよ!!」
姉御、俺のハートをブレイクしてくれてありがとう。キッカッ!な気分だぜ。あまぁぁぁぁい!!!まじで感謝してるぜ!!
「コナンさん!!早く帰ってきてくださいね!!」「コナン坊!!約束だぞ!!」「わかってんよ、元気でな」
船で一日中遊んだからさっぱりした挨拶だなぁ。っでどうしたらいいんだっけか?なんか言ってたんだが違う事考えてて聞いてないわぁ。姉御にもう一回聞いたら怒るかな??つか中まで案内しろよ。何処だよここ。
「あんた何物欲しそうな顔で見てんだい??まさか忘れたってかい?」「いやぁ、ははは。協力者に会うまでは覚えてるんだけどね」「全部忘れてるじゃないさ!!ここから川沿い真っ直ぐ行けば協力者が来るからスラムの外壁まで一緒に行くんだよ!イース、じゃなくて協力者は頭に青いバンダナ巻いてるから!!こんな簡単な話し忘れるんじゃないよ!!」「忘れたなんてとんでもない!!聞いてなかっただけだよ!」「もっと悪いねぇ!!!!!」
いつものノリで別れの挨拶を済ませ協力者とやらに会いに行く。青いバンダナってどんなんだろう。マー○ーみたいなの来たら怖すぎるんですけど。
あっ、いたいた。青いバンダナ、両切りタバコなんか吸っちゃってやだー。って・・・・はい?俺の眼がおかしいのか?幻術の類か??
「あのぉ。」「お前か?フォルカの姉御が言ってた奴は。」
うん、ワイルド。ツンツン藍色の髪に青いバンダナ。どっから見ても盗賊ルック、でも・・・・。俺は何を見ているんだろう。
「何見てんだよ!ついてこい。」
小3ぐらい?良く見積っても9歳ぐらいかな。いや・・・・。子供じゃん。大丈夫?俺今から結構この国相手に戦うんですけど。従兄弟と遊びに来た親戚とかと勘違いしてね?
「俺の名前はイース、はっきし言っておくが俺の事を女を見る目で見たら殺すからな。」「うそつけぇぇぇい!!!」「ひぎゃ!!」
あかん、初対面でドロップキックしてもた。だって子供なりにそれなり筋肉ついてるし、怪我してなさそうなのに上半身包帯グルグルでボロいベスト着て厨ニ患者度数は楽勝で北半球駆け抜けてるようなヤツなのに、女の子だなんてとんでもない。
「いい蹴りくれるじゃねぇかテメェ!!!」
これは早急に確認をとる必要がある。殴りかかる動作はまるでスローモーション。首筋から舐めるように指を滑らせ後頭部を掴み引き下ろす動作と共に両足を前から蹴り上げる。イースとやらは綺麗に円を描き一回転して地に転がる。ふむ、強めにしすぎたようで立ち上がれんようだな。さて、本題の確認だが。ズボンの上からでいいだろう。
「ていっ!!」
イースとやらは口をあんぐりとあけてバンダナで隠した瞳から汁を垂れ流しに・・・。意外と綺麗な目してんだな。つか泣くとか。マイケルポコチの掴み合いなんて子供の挨拶みたいなもんだろ。
「な、ない・・・・だと・・・?」
・・・・・・・・・・・・・。
「バカァァ!!!!!」
イースさんが落ち着くまで少々お待ちください。
大変だった。俺は初めて二トロと出会ったあの日の修羅場を思い出したね。俺は号泣するイースにただひたすら呪詛を唱え続けた。アレン撃退の為に身につけた早口連発無心の文言が役に立ったって言う皮肉。
『男に見えた男に見えた×1000』
ってな具合にね。中盤から何故か泡を吹いて倒れたんだが気にしたら負けだろう。呪詛のおかげでニョキニョキっと何かが生えてこない事を祈るまでだ。
「まぁ、いい。俺はユニークスキル魅了香チャームパルファムのせいでいい匂いがしちまうらしいからな。男に見えたってんなら嬉しいよ。」「今は女の子にしか見えないけどな、けど男に見えるなぁ。おかしいなぁ!確認しなきゃ!!」「てめぇ!!それ以上近寄ったらマジで刺すからな!!マジだぞ!!!」「じゃあ俺もなんか刺しちゃおっかなぁ?ぐへへへへ」「うぅぅ、えぐっ。うぐぅ」「・・・・・・・冗談やんけぇ。」
こうして姉御の協力者と無事?合流を果たしスラムの崩壊した外壁からフィンブルスル内部に潜入した。ここまでの道のりを考えると感慨深い気持ちが押し寄せてくる。短いようで長く、長いようで短い日々。俺はスラムの空き家で生活するらしいが正直予想だにしてなかった。鎖国をした戦時国のスラムはここまでひどいのかと。俺は正直外壁の中は夢が詰まってると思ってた。それはフィヨルム然りフリーズ然りだ。しかし見てなかっただけで国の裏側はこんなものなのかも知れない。フリーズのスラムに当たる東下門の栄えが俺の感覚を麻痺させていた。このフィンブルスルのスラムは俺が生まれた当時の故郷である、あの村と変わらない。かろうじて生きているが、ただ迎えを待つ腹を空かせた人間。全てを奪い尽くしてでも生きてやる決意をした獰猛な目を宿した人間。
そこにあるのは生への執着と黒く渦巻く怨鎖の念。
しらんけど。
まぁ、この先ここで暮らして行く上、何か縁があるのであればそっと助力はしてやってもいいかと思う。六次の隔たりってので、こんな奴等でも敵の本丸を炙り出せる人脈のヤツも居るかもしれないしな。なんにせよ、そこまで考えれるって事は大いなる一歩を踏み出したって言う事だろう。
「おい、ここがお前の家だ。」「おい、殴んぞ。犬小屋じゃねぇか。」

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