大統領フルスイングで殴ったら異世界に転生した件。
28
Sクラス冒険者氷剣のアレンとまで言われた俺がただ一人の子供にかき回されている。まったくあいつは底が見えん。このフリーズに到着するまでに要した9日間。寝る間も無く、非常識な妨害の連続だった。
あの謎の魔物との交戦は30を越えた頃から数えていない。悪質な罠と昼夜問わずの襲撃。馬を守りながらの道中は過酷を極めた。
ようやくフリーズに到着し5日が過ぎようとしているのだが完全に消息が掴めなくなった・・・・・。だが、手がかりは見つけた。数色の緑と茶色を混ぜた面妖な柄の服に身を包み台形の帽子を深く被ったあいつがいる。
「オウ、クサレウマドロボウ!ベリーファックネ」
ぐっ、装備が、しかも服だけが変わっただけでこんなに威圧感が変わるモノなのか?だがコイツ相手に引くわけには行かない。戦う度に俺の癖を見抜き力をつけてくる謎の人間。コイツにだけは俺は勝ち続けねばならないと本能が叫んでいる。
「その馬を基本殺す勢いだった奴には言われたくないな。」「シャラップ!クサレチ○ポメェェェン、ジャパニーズクンロクイレテヤルヨ」「待て、落ち着け。こんな街中で戦闘するわけにはいかない」「オォォウ、コシヌケネ。マァイイ。ボスニハイタツヲタノマレテイタカラナ」
配達。やはりコナンはここにいるのか。その配達物は誰に届ける物なのだろうか・・・。あの人見知りと言うか人を寄せ付けないコナンがこんな短期間に交友を持てるとは思えない。素直に聞くべきか・・・。
「それは誰に向けて贈ったモノなのだ?」「アレントカイウバカニダ、ダケドソンナキモチワルイヤツオレシラナイ。コマッタナ」「俺だよ馬鹿。」「HAHAHAHAHAHA!!」
まぁ、こちらの行動はお見通しってわけですか。小箱を渡されたが・・・何を贈ったと言うのだ。コナンの事だ。ろくでもない物である可能性が高い。
うん?石?
あぁ、なんだあいつ。グンスラーにいるのか。しかも困ってて助けて欲しいとか。かわいいとこあるじゃねぇか、よしグンスラーに急ぐか!!ってなるか!!
あいつまた俺の知らん能力だな。伝言付与?いや催眠、洗脳の類か?呪術?。なんだこれ。まったく新しい。相変わらず楽しませてくれるぜ。
これは、多分だが、コナンはフリーズにいるだろう。ギルドで人探しの依頼に半金貨1枚って言う破格の依頼料も払ってるし、様子を見るのもいいだろうと考える。しかし、態々俺に助けてくれとは何かあったのか?やはりグンスラーに向かった方が・・・・、違う、これは俺のスキル直感が否定しているが盟約印が邪魔をする。俺はコナンを裏切る事は出来ない。これはこの世界の神が干渉する原初から存在すると言われる古代魔法だ、理解と本能が交錯する。
だが、盟約印は俺の直感を掻き消して・・・・。駄目だ、いくら頭痛に行動の制限がかけられようと、俺はコナンの為にコナンの暴挙を止めねばなるまい。
ギルドだ、まずギルドに行かなければ・・・。
冒険者ギルドフリーズ支部に到着すると、ギルド特有の慌しさはそのままに、何か違和感を感じる。焦りの色と言うのか、見た感じでCクラス以上のベテラン達の顔色が悪い。
「おい、なんかあったのか?」
受付は光を失った目を輝かせる。
「氷剣のアレン殿でございますね?」「あぁ、そうだ、質問に質問で返すのはよせ、何かが起こってるのだろう?」「申し訳御座いません、実はですね・・・・」
クソ!!!またコナン絡みだ。1つはフリーズ最大の盗賊団フォールンが全勢力を挙げてグンスラー便とフィンブルスルの臨時便を襲い国家主体での厳戒態勢に入った。最近は本業の動きが極端に少なかった事から、数年に一度の狩り入れ時を迎えたって事だろうと推測されているが・・・。恐らくコナンだろう。あいつは金を複製できるし、こんなにも人口密度が高い巨大都市でSPに困る事は無い。しかし相手が悪い。女頭目フォルカ・・・あいつは先の戦いで旦那と子供を人質にされながらも、暴力と強奪を繰り返し実行し、終止優勢であったフィヨルムへその牙を剥き読んで字の如く戦況を引っくり返した。フィンブルスルへの物資搬入の阻止の為に旦那子供を人質にとった愚行のせいで、大陸中の盗賊が連なり事実上の壊滅まで追い込んだ女傑。あのずば抜けた統率力と武力、そしてあのスキル・・・。俺も地を舐めさせられた苦い思い出がある。国の緊急招集依頼とは言え、あれを相手にするのは無謀としか言えない。いっそ大陸各国で国家予算を捻出して隠居してもらえばいいんだ。そしてあわよくば乳を揉ませてほしい。切実に。
そしてもう一つは、フィヨルムで多数討伐依頼の見られる新種のゴブリンが、分布を広げ、遂にフリーズ内部での目撃情報が出た事。結界を簡単に抜け、更には人間社会に溶け込み人語を理解する事から、ギルドでは早急に下位魔族への認定をし討伐難易度の繰上げを行った・・・か・・・・。コナン、もうあいつらを作るな、事態はお前が思ってるより深刻だ。Sクラスの俺に平気で一太刀入れてくるような化け物を量産するな。
「それで?俺の依頼の方は?」「ええ、恐らくグンスラーの方へ大きな馬を駆って行ったと言う目撃証言しかわかっていません」
やはりグンスラーに・・・・?あぁぁもう!!わかんねぇぇぇ!!!!!
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