10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?
105
星持ちのダンジョンアタックは凄まじモノであった。
抗う事の許されない天変地異ですら裸足で逃げ出す程の快進撃に50階層と規模は出来たての迷宮で深くは無いが強力な魔物達や極悪な罠など物ともせずに最下層に辿り着いていた。
「さぁて、だだっぴろいだけってわけではなさそうだけどな」
一星の言葉に一層気を引き締め星持ち達はその中心に立つ。
「一の旦那ぁ、こりゃあ前の島みてぇな事になりそうな予感がするんですがね」
「それだとわかりやすくていいんだけどな、さぁ何が出るや……」
一星の言葉は途中で遮られる。
何故なら何も無いただ広いドーム型の空間は突如姿を変え、暗闇に染まり、己の目を疑う程に巨大な黄金の仏像の掌にいる事に気がついたからである。
「ちょ!なにこれ!!二星!なにこれ?」
「我に問われても…しかし一星殿…何やら途轍もない力だけは感じますが」
「一の旦那ぁ俺なんか寒い気がするんですがね」
肌に突き刺さる得体の知れない波動に寒気を感じ始めた頃、五星が核心をつく。
「三星殿はこれが何か知っておられてか?」
「もう答えは出てるぞ」
キョロキョロと辺りを見渡す三星を除く4匹の鬼が三星の目線を追った先、自分達の輪の中に一人見知らぬ老人がいる事に気づき言葉を失った。
「お前達がここに辿り着き私を見つけるとはな」
老人と言えばそれまでだが、星持ち達はその声を聞いた事があった。
「深淵の主…」
「いかにも。だが閻魔よ、少し話しを変えさせてもらう…そこの火車、何故お主は私の知識を持っている?」
優しそうなお爺さん…と言われても仕方のないような老人が三星に言い放つと三星は小さく一礼をしてから言葉を放つ。
「次元兎を喰らいました。」
その言葉に老人はポカンと口を広げ目を見広げた。
「……いや、待て。言いたい事はわかるのだが、あの封印はあの者にしか解く事は出来ぬ…なれば堕神の5柱は滅びたのか…」
「いえ、管理者は」
バキッ。
三星が言葉を返そうとした直後に空間に亀裂が入る。
そして亀裂から手が見えた直後に空間が破り広げられる。
「あははぁ!!おじいちゃんみっけぇ!!」
そこには赤と緑のオッドアイの少年が陽気に嗤う姿があった。
「蟲神…なれば世界は奴らの手に落ちたと言う事か…しかしサリーシュは消えていない…何が起きているのだ…」
「あは、あはは!!そこの青面金剛に体貰おうと思ってたのに必要無くなっちゃったぁー!だって帝釈天!お前殺したらこのゲーム僕の勝ちだもんねぇ!」
蟲神の名を呼ばれる少年が全身から黒い蟲を生み出すのを見ると同時に五星がキレる。
「むしがみぃぃぃ!!!!」
全身から溢れ出す黒い力を蟲神に叩きつけると体を黒い液体にしながら高笑いをする。
「あはは!!無駄だよぉ?僕は陰と陽どちらの性質もある。何をしても僕に力を渡しているような物だよぉ?」
その言葉を無視しながら五星は攻撃を繰り返す。
「こうなりゃやるしかねぇか!三星!爺さんに全部話せ!時間は俺達が稼ぐ!」
「わかりました!!」
三星と老人が下がると液状に蠢き続ける蟲神に星持ちの容赦無い攻撃が雨のように降り注ぐ。
「神の首を手土産に地獄へ行くのも悪くないな」
二星は黒い巨大な槍を際限無く撃ち続ける。
「仕方ないっすね、最後にカルマの姉御にハグでもしてもらっときゃ良かったな」
四星が拳を握りしめると無限の黒い刃が何処からともなく現れ蟲神を串刺しにして行く。
「さーてさて、ぶっ飛ばして行きますかぁ!!」
一星が手で何やらの印を刻んで行くと紅い輪がふわりと浮かび上がる。
「さていかに」
一星が紅い輪を飛ばすと、それまで良いようにやられていた蟲神が突如それをかわすが僅かに体を掠める。
「今のは…ちょっと危ないかなぁ」
人型に戻った蟲は右腕を失っていた。
「うわぁ、かわしちゃったかぁ。これ一発しか撃てないんだよなぁ」
「じゃあちょっと危ないから殺すねっ?」
笑顔のまま蟲神が一星に迫ると、失った腕から大量の蟲が現れ腕を形成すると同時に大量の蟲が一星を包む。
勝利を確信した蟲神が冷たい笑みを浮かべると同時に一面が紅く染まり上がった。
「ばいばいっ」
「お前がな」
紅い光が両者を包むと同時に蟲神の上半身が消し飛んだ。
「実は二発で一発な技だったりして」
地獄の下法の最上位にあたる廻輪。魂そのモノを無かった事にする地獄では珍しい救済処置の技だ。
本来閻魔大王が放つなればこのような威力など鼻糞を飛ばす程度でしか無いが、一星は来たる戦いに向けて廻輪を撃つ力を貯めていたのだ。
流石の蟲神にもこれは効いたのか体を二回り程縮めてから身体を形成する。
「さすが下の技だねぇ、ちょっと体減っちゃったよ。もう遊びはやめた。みんな死んじゃえ」
黒い靄が蟲神から溢れ出すと星持ち達を一斉に覆い始める。
「くそぉ、結構いい線行ったのになぁ」
無数に蠢く蟲が星持ちを完全に包み込むと各々が勝てなかった事への苛立ちを隠せずに残りの大技を放ち始めるが、一層羽蟲の数は増え続け遂には黄金の仏像迄も埋め尽くした。
無力さに血の涙を流しながら抗い続ける鬼達。
帝釈天ですらも座禅を組み己の消滅を受け入れはじめる。
パリンッ。
帝釈天の世界が蟲で埋め尽くされると黄金の仏像が崩壊し始める。
その蟲の羽音と仏像の崩壊する音が響く空間の中で、明らかに外部から莫大な力で割られた音が一つ響き渡った。
それはガラスを踏みつけたような軽い音だったが、その場にいた誰もが気付く程に響き渡る音であった。
その小さな破裂音が響き渡った直後、迷宮の最奥と帝釈天の世界に隔てられた壁は一曲に崩壊した。
蟲神ですら強引に引き裂いた空間の壁を粉々に外部から砕かれたのだ。
「サリーシュ…こいつが蟲神やのぉ?」
「な、なんだよお前は!」
「ただの通りすがりのヤクザ屋さんや」
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