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10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

103


中立国アイルセム教国では、二つの影が蠢いていた。
黒い騎士の影と黒い老人の影だ。
「月と太陽に良いとこどりされるのはつまらんだろ?適当にここらで依り代を見つけて綻びを抜けようでは無いか」
老人の影が黒い騎士に囁くと、納得しかねると言葉を返す。
「私はあの竜槍士の鬼が良かったんだがな。」
「悪趣味なやつめ。それは3000年前に酒呑童子に遅れを取った後にあの料理人のふざけた男に負けたからか?」
「言い訳はしたくないがあれは戦の内には入れないでもらいたいな。酒呑童子の群れに幾千の槍を穿たれ、虫の息の所にあのバグジーが俺を薪だといって何度も、薪だぞ?この崇高なる人神の私が、回復ままならぬままに数日間斧を振り抜かれ続けた挙句に通りすがりのアイザックに滅されたのだぞ?どうせならば死闘の果てに消えたかったよ。」
「そんな事言い出したら儂も依り代は錬金術師がええわい。あのグリムとチャリクスには煮え湯を飲まされとるからの、あの不動国とやらの錬金術師はどっかに消えおったしな…だが、帝釈天だけ殺せれば依り代なんぞ要らずとも三千世界に干渉出来る。少しの辛抱だのう」
「はぁ、仕方ないな。予備で我慢しようか」

直後アイルセム教国は滅亡した。



時の流れをエリミガリアと共にしない不動明王秋定達のいる島では、既に3年の時が流れようとしていた。
「秋定ぁ!!あれ倒してみてよ!ヴリトラ!」
「おっけいサリーシュ!!ほないくぞお前ら!!」
『へい!!!』
部下の構成員達も400人弱と数を増やしており、秋定達は、この3年間子梟の無茶ぶりをひたすらにこなし続けていた。
「サリーシュ!!ヴリトラってどないやったら美味く食えんねや?」
「海水で洗って焼くだけでおいしいよ?」
「坊ちゃんの求む料理を作らせていただきますよ?」
そう話しかけるのは神宮じんぐうだ。
「神宮…ボクは秋定に言われて秋定の子供の姿に似せてるけどボクは精霊だからね?別に食べなくてもいいし、食べるにしても生でもなんでもいいんだよ。」
「せやぞ!神宮!!サリーシュは好きにする言うとんねんから、ガタガタ抜かすな!なぁ?サリーシュ?」
笑顔でデレっとしながらサリーシュと呼ばれる少年に向き直る様に神宮は優しい笑みを浮かべて一礼した後にその場から去る。
少年は真剣な面持ちで秋定に向き直り、手を握る。
「ねぇ、秋定。もういいよ?この3年間楽しかったよ。僕の力をあげるよ」
その言葉に秋定は目を閉じて数秒固まり、そして次の言葉を繋ぐ。
「いらん。」
「え?」
「いらん言うとんのじゃ、もうどないでもええんじゃ、ここでこいつらとサリーシュと共に生きていく。それがワシにとって1いっちゃん幸せな気がすんねや」
少年は光を放ち小さな子供の梟の姿になり、ヨイショと秋定の肩に乗る。
「今は…それでいいよ?けど、どうしようも無くなった時は迷わず受け取ってね。」
「そんな事にはさせん。サリーシュはわしの家族じゃ」
「ありがとう、秋定。あったかいよ、こんなあったかいの初めてだ。」
ピトっと子梟は秋定の頬に頭を預けると潮風に吹かれて目を細める。
それに答えるように秋定も目を閉じ微睡みの船を漕いでいると、突如ガラスが割れるような強烈な音に目を冷ます。
そしてサリーシュは小さく呟いた。
「やっぱり来たか…」
「なんなんやサリーシュ、あいつらは!」
「人神と老神、囚われの管理者達、秋定。一緒に戦って欲しい。」
絶対的強者であるサリーシュが願う共戦の申し出に、相手が只者では無いと悟ると、秋定は高笑いする。
「任せろサリーシュ。神か仏かは知らんがワシがいてもうたるわ」
聖銀の鎧を黒く斑に染めた騎士と、壮年の老騎士が並びサリーシュを睨みつけながら海面を歩む。
「久しいな、次元梟。出来れば石のままが良かったんだがな。」
「くそぉ、錬金術師の奴こんなとこにいたのか。見つけれんはずだのう。」
ただならぬ空気を感じたのか部下達も臨戦態勢に入る。
「ボクはサリーシュだ。そんな有象無象のウサギと同じような名前で呼ぶな!」
それには黒騎士が言葉を返す。
「何がサリーシュだ、笑わせるな。本当のサリーシュをお前に見せてやるよ」
「しかし面倒だのう。石拾いが帝釈天の力の塊とやり合う流れになるとはな」
空気が変わったのを感じとり秋定は即座に海面に手を当てる。
「いてもうたれやぁぁ!!」
直後に海水は無数の剣となりて人神と老神に襲いかかる。
「結構なことだ、足掻くがよい」
吐き捨てる言葉と同時に黒い騎士人神は黄色の砂をばら撒いた。直後には人神老神の周りには数万の人間が現れその身を持って刃を受け止めると、忽然と老神が姿を消す。
「さて、錬金術師よ。お前は何年後に死ぬのかな?」
左手を差し伸ばし秋定に触れようとした所で老神の腕が輪切りにされる。
「ボクの事忘れてない?」
「このクソフクロウがぁ!!!」
直後視界を埋め尽くす無数の斬撃に老神は身を挽肉にかえる。
「秋定!!みんなで一気にこの肉を攻撃して!!多分3000回ぐらい殺したら消えるから!!ボクは人神をやる!!」
「任せとけ!!お前ら聞いたやろ!!この肉片にありったけ技ぶち込んだれ!!」
『応!!!』
サリーシュは間髪入れずに両の羽を羽ばたかせ人神を襲う。
だが、止めどなく現れる肉の壁に斬撃は阻まれ阿鼻叫喚の地獄絵図と様変わりしていく。
肉の壁は留まる事を知らずに増え続け剣と変質した海の上で蠢く。
「ほなこれならどないじゃい!!」
秋定がもう一度手を叩きつけると剣の海はただの海水に戻り、数十万の人間達は海に溺れていく。
「ナイス秋定」
視界が広がった所でサリーシュは四方八方から逃げ場の無い斬撃を最大出力で放つ。
「ふふ、ははは!!老神ならまだしも、この私をこの程度で殺れると思ったか?神法を使わぬのか!?そんなにもその奇妙な人間が大切だと言うのか?」
人神に斬撃が降り注ぎ身を粉々に変えるが即座に海に浮かぶ人間が黄色の魔晶石の砂に変わり、その身を作り直す。
「多少なりと身構えた己を恥じるよ、拍子抜けだ。」
その場から消えた人神は、秋定が気付いた頃にはサリーシュを貫いていた。
「あ、あぁぁぁ、さ、サリーシュ!!!!!!」
秋定の悲痛な叫びが一面に響き渡る。だが、サリーシュは即座に貫かれたその身を光の粒と変え結晶化させながら秋定の元へ舞い降りる。
「秋定、ボクを食べて…力の使い方はボクが教える…今の秋定ならきっと使える」
「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ!!」
「いいから早く!!」
吸い込まれるように身体が動いた秋定は子梟サリーシュのカタチをしたの緑の魔晶石を飲み込んだ。
「あぁ、なんと言う事を…それでは精霊石が傷付かぬようにお前の腹を斬り裂かねばならん」
人神は残念そうに、呟くと同時に首が地面に落ちている事に気付く。
怒髪天を衝く秋定の形相は、まさに不動明王のそれであった。
「われが…われがこなんだらサリーシュは!!サリーシュは!!」
「なんだと言うのだ?」
首を繋ぎ直した人神は悪辣な笑みを浮かべ秋定の胸に剣を突き立てる。
「殺したら我が死んでまうんも忘れたんか?雑魚神、せやけどなぁ?わしを殺すにはちぃと弱いんちゃいまっか?」
「なっ!?お前は!?まさか!」
己の心の臓から止め処なく溢れる赤い血は突如流れ出すのを止め、傷を塞ぐ。そして秋定を包む空気が変質する。
「我帝釈天の武が願わん、同胞金剛力士よ、こやつを滅す力を我に授けよ」
漆黒の穴が開き一本の槍が呼び起こされる。
『神法・金剛杵ヴァジュラ
帝釈天インドラの槍は三千世界に存在する様々な雷をその神々しい姿をより一層輝かせる。それらのいかずちを纏い一本の白い槍となりて人神を貫いた。
あまりの威力に世界から音が消える。
その一撃はサリーシュが眠っていた小さな世界ごと崩壊させる。
結果を待つ前に秋定は部下達に向き直ると声を荒げた。
「お前らワシに掴まれ。ふざけた神さん後三人ばかり潰しにいくど」
怒りに囚われた漢がエリミガリアの地に立った瞬間であった。

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