10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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リブラだが、このクソ忙しい中に漁に出ていた写楽が面白いもんを拾ってきた。かつての仲間達だそうだ。泳いで写楽に会いに来ようとしていた途中で網に引っかかったそうだ。
俺は躊躇いなく通力の繋がりを断ち切り、写楽達と同じ状態にした。
案の定、写楽同様に気絶したが無視だ。今はそんな事よりもやるべき事がある。
「後少し、後少しだ。カルマ!!一星達は何処にいる?」
「星持ちはロウエント、ビーステイルダムで避難できてない者を探しにいきました……」
「そうか、なら仕方ないな。」
それからも作業は続いた。
結局の所、件の兵器だが、ほぼ完成した。ほぼなだけであって完璧ではないが、死にかけただけはある出来栄えだ。見た目的には巨大なピサの斜塔みたいな大砲だ。だが、現時点では、術式を組み込んだ分しか撃てない段階だ。
俺が知り得る限りの最強の殲滅魔法を幾千にも組み込んだ大砲だが、それでは足りない。あのヤクザが『全ては塵』程の極大殲滅魔法を二発も撃ち込んで生きていた事を考えて、念には念を押したい。
これから更にあの黒い巨人が目視出来る位置に立つまでの間、何日あるかはわからないが、それまでに魔力を込め続け夜に撃つ。
ひょっとすればこのエリミガリア大陸自体が消失しかねないが、俺に関わる者達は神域に避難させているので大丈夫だろう。ここだけ残ればいいのだ。後は知らん。
勝負の要は俺が納得する量の魔力を時間内に貯めきれるかどうかだ。
その為には早く一星達に帰ってきてもらいたいんだが……。
そんな中、写楽の元仲間のデブがムクっと起き上がり奇声を上げた。
「まーーーーーーーーーー!!」
「まーーーーーーーーーー!!」
混乱した後に落ち着きを取り戻したのか深呼吸した後に俺に向き直った。
「あなたが写楽っちの言ってたリブラさんでありますか?」
なんだこいつ。まずまーーってなんだよ。
「あぁ、そうだけど?」
「漏れはリアルでプログラマーの仕事をした事があるであります。魔素・魔力を大量に必要としていると聞いたのですが?」
痛いな、なんだろう。とても胸が痛い。
「あぁ、確かに必要としてるけど…まわりくどいな…。何が言いたいんだ?」
「はい、写楽っちから聞いたゴブリンやNPCをキャラクターに変えるカプセル。それがあれば案外簡単に莫大な魔素が用意出来るかもしれないのであります。」
通力のカプセルの事か?もう、こうなったら研究もクソも無いから欲しいならくれてやるけど、あのややこしさをこいつが解けるとはおもわないけどな。とりあえず渡してみるか。
「これで全部だ、好きに使え。」
デブがうんうんと頷き、更に言葉を続ける。
「リブラさん、出来れば漏れのメニューのメッセージ入力画面を切り抜いてくれませんか?」
それなら確かヤクザの柴田から切り取ったヤツが家にあったな。藁にも縋ると言う言葉があるしな、面倒だが取りにいってやるか。
「いえ、主君、このカルマが持って参ります。」
「あぁ、助かる」
ステテテテとカルマが走って戻ってくると手には、メッセージ入力画面のビジョンが握られていた。
「これでいいか?」
「助かります、では、どうやって切り取りました?実はそれが知りたくて漏れから切って欲しいと言ったのです。」
「あぁ、俺はちょっと目がいいからな。その0と1の数字が連なる力…俺は通力と呼んでいるが、それが見えるんだ。」
「では、手伝ってもらえませんか?徹底的にやれば時間を待つより早く納得できるだけの魔力を用意できますのであります」
「あんなぁ、俺はそんな事してる時間は無いんだ」
「なればこそです!!リブラさんが通力と呼んでいるそれはプログラミング言語であります。それを利用すれば、この広大な海を魔素に変える事もそう難しくない!!」
絵空事言いやがって。どうせ無理でしたで諦めるだろ。無駄な事させてたら腹に穴開けて一回殺してやる。
「じゃあ集落のみんなの魔力が回復するまでの時間付き合ってやる。可能性を示してみろ」
「ええ、確実に驚かせてやりますよ!漏れの親友を殺さずにいてくた恩を返すであります!」

久しぶりに家の二階にある自分の部屋に来た。さすがに見慣れた自分の寝床を見るとアクビは抑える事が難しいが、時間は有限だ。さっさと話しを終わらせて貰おう。
丸太ぺにおと言うふざけた名前のデブは2つのコップに水を入れて部屋に入ってきた。喉が乾いていたんだろうな。お茶ぐらいあるのに。
「もう言語は完成しているのです、後は繋げるだけの簡単な作業です。」
丸太ぺにおはペラペラと喋り始める。俺は折角溜まった魔素を開放して九芒星を開眼させる。
「頼む、話しはわかったから急いでくれ。」
「はい、では、この水に通力のカプセルを溶かします。今この水は通力で出来た水になりましたか?」
「あぁ、当然通力で出来た水になった。」
「じゃあ、その通力をこの入力ボードにつなげてください」
俺は更に魔力を振り絞り、水を形成する通力を入力ボードに無理矢理繋げる。
「そこじゃないです、そこじゃないです、そこじゃないです。そこです。それでこの数列をコピーして保存します。」
何度も切って離して切って離してを繰り返して行くと画面に余分な数列が表示される。
「これを水と登録しましょう。そして、こちらのコップには…飲んで下さい」
「ん?ぶへっ!海水か?これ、まずっ!殺すぞお前」
「まぁまぁ、落ち着いて欲しいのであります。次はこの海水を通力に変えます。繋いでください。違います違います違います違います違いますそこです。」
「はぁ、はぁ、で?」
かなりフラフラしてきた…。
「この数字を消して、先ほどのコピーした水の数列に変えると。飲んで下さい」
……………。
「………水だな。」
「そう言う事です。」
俺はこのデブに、いや、丸太ぺにおさんに対して時田さんと出会えた時ばりの感動をしたかもしれない。
だが、流石に魔力切れだ。
「おおおお!?大丈夫でありますか!?」









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