10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

85

 ロウエント・ビーステイルダム両国の空に五頭の巨大な竜が駆ける。
「やっとつきましたね二星様。」
「あぁ、なかなか遠かったな。」
「これって大きい建物は全部壊す感じですよね?」
「そうだな。お前達の好きにしろ。ビーステイルダム首都には何もするなよ?主様の逆鱗に触れかねんからな」
「御意!!」
 二星六騎槍の面々の無慈悲な猛攻は、神の怒りと語られてもおかしくない程であった。
 二星の邪気でつくられる巨槍は地に触れると破滅を齎す。
 それは例えようがない。
 斬撃を持って切り裂き、炎で燃やし、氷で凍てつき、雷撃で燃やし、全てを無に帰す。 配下の茨城童子の特性を一つにしたそんな邪気。 それは御し難く、邪悪の一言に尽きた。
 戦う術の無い上空から残酷に降る死の雨はやがて街一つを焦土に変えるまで続く。
「ちょ!二星さん!!まずくないっすか?街なくなっちゃいましたよ?」
「ちっ、まずいな。四星のせいにしよう」
「ばれますって!四の親方も五の親方もここまでできないっしょ?」
「じゃあ一星様のせいにするか?」
「来てないじゃないっすか!」
「ははは!!大丈夫だ。我がちゃんと謝るよ!加減が出来なかったとな。」
 そんな笑い話をしながら次の街へ行こうと竜を飛ばすと空中に黒い騎士が立った。
「なんだ貴様は」
「酒呑童子か。確か3000年前の争乱にもいたな」
「なんだこいつ。」
 氷の茨城童子の巨槍が黒い騎士を貫くと溶け落ちた横に黒い騎士が再び立った。
「心配するな。危害を加えるつもりはない、だが忠告をしておく」
「うぜぇよ。」
 直後炎の槍が黒い騎士を貫く。 そして再び黒い騎士はその場に復活する。
 暫く同じような事を繰り返し、茨城童子達が息を切らし始めた所で黒騎士はゆっくりと話し始める。
「心配するな、お前達は強い。ただ私はここに存在して、存在していないだけ。他の者のように顕現して力を示すもいいが、今はまだいい。」
「んで?要件はなんだ?我の槍を受けたいのであれば相談に乗らぬでもないぞ?」
「酒呑童子…もう少し強くなってからほざけよ?」
「誰に言ってるのだゴミが」
 直後二星の全力を込めた槍が黒騎士を貫く。
「おぉ、顕現していないのに一回は死んだな。だが、まだまだだ。私はお前達に忠告しに来たんだ、話を聞け」
「つまらん、我は我の道を行く。邪魔をするならば穿つまで」
「そうか、まぁいい。英霊島のガキと一緒にいたらお前達そのうち死ぬぞ?それだけだ。地獄にはそこまで義理立てする必要も無いからな。まぁ、心に止めておけ…」
 それまで優しかった黒騎士はいい終わると顔を歪めた。
「お前達はうまそうだからな。すぐ死んでくれるなよ?」
 黒騎士はその場から姿を消した。
「二星様、英霊島のガキってなんですか?」
「わからん。多分勘違いではないか?」
 いかんせん締まりが悪い二星達であった。

 そして、二星達が3つ目の街に差し掛かる頃ビーステイルダム・ロウエントの各地で黒煙が上がった。
 それを皮切りにビーステイルダム・ロウエントの両首都に1万5000ずつ兵が集結した。
「はいはぁい、みんなお疲れちゃーん。じゃあ元気にいってみよぉ!!」
 リブラの指示と共に全軍が南下し始めるが、それを待てと止める声があった。
「おい!リブラ!!なんなんだよ!どうなってるんだ??」
「おぉ!レイファン!生きてたか!」
「生きてたかじゃねぇよ!てかお前耳どうしたんだよ?無いじゃねぇか!フードかぶっててもわかるぞ?」
 リブラは舌打ちをしながらフードを取るとブチの猫耳がピクピクとそこには存在した。
「えっ!あった!」
「うーわお!!とりあえず気にすんな!中に居れば安全だ。」
「つって言ったってよぉ、俺も一応軍人だぜ?不真面目だっつってもよ?こんな人間と魔物の行軍見逃せねぇだろぉよ」
「うぅーーん。ちょっと耳かせ」
 リブラは難しそうな顔で悩み始め結論はデコピンだった。 デコピン一発でレイファンはムーンサルトばりに吹き飛びデコから血を流し地面に倒れた。
「おい、お前。こいつ中に置いてきてくれ」
 なんとかレイファンを黙らす事に成功したリブラは南下を開始した。 そこからの勢いは怒涛、まさにその一言に尽きる。
 南下を開始して一日と半分の所でチラホラと脚の速い獣人達に出会い始めたが、新しく作成した弾丸は見る見るうちに敵を破裂させて行く。
「主よ、少し気になる事がありまして…」
「主様、我からも少し」
 そこで二星と五星から聞いた話しにリブラは首を傾げた。 星持ち程の実力を持ってして倒せぬ力を持つ物。 そして英霊島のガキとつるむなと言う忠告。
「世界融合起こした奴らじゃね?神かなんかはしらねぇけど さ」
 リブラの軽い一言に両者は神妙に頷く。 神でも無ければあそこまでの存在感は出せないだろうと。 そしてなおも余裕の表情のリブラを見て、それまで一抹の不安を感じていた自分達を馬鹿馬鹿しいとまでに感じた。 そしてそれが完全に払拭されたのは次の一言だった。
「次来たら教えてよ。殺すから」
 優しくも恐ろしい笑顔だった。



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