10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

84

 転移プレート設置開始から3日目の夜。 五星はロウエント首都に降り立った。
「なんだ貴様は!!こんな夜分に入国は出来ぬぞ!!」
「いえいえ、私は許可を貰うつもりはありませんのであしからず。」
 五星が指を弾くと黒い矢が放たれ、門の上から声をかけた守衛が頭に穴を空けて転がり落ちる。
「あへあひゃへはー」
 一瞬で量子分解された脳みそが死んだ事を理解出来ずに意思とは関係無く言葉を発したのだろう。 頭から地面に着地すると同時にボギャッと歪な音を奏でピクリともしなくなる。
 次に手を翳すと門が原子分解され穴だらけになり道を切り開く。
「結構大きな街ですね。嫌いじゃないですね、集落が栄えたらこんな感じになりそうです…おや?死んでいましたか。」
 五星を押し返そうと武器を掲げ押し寄せる軍勢に、話しかけながら黒い弓を撃っていく五星。 六本の腕から放たれる青面金剛の黒矢は痛みを感じる前に死が訪れる。
「さぁ、行きましょうか」
 椰子の木に似た南国風の樹木が茂る街並みに木造の建造物の数々、夜でも十分に風情のある街並みに五星はうんと頷く。
「いいですねぇ。主も喜びそうです、是非とも頂いてしまいましょう」
「貴様か!無断で立ち入った者は!」
「いかにも、青面金剛五星と申します。ただの通りすがりの鬼ですが…戦ってみますか?」
 優しく俯きながらの笑顔から顔をふと上げると二足歩行の獅子が曲刀を五星の首めがけて振り抜こうとしている。
 そして五星は危な気も無く男を蹴り飛ばす。
「なかなか良い判断です。ですが、名乗りを返さぬのは少々礼儀がなさ過ぎるかと」
 説教をしようと獅子の男を起こすと腹が抉れ既に絶命していた。
「おや?死んでいましたか。」
 その様子に怒号が響き渡り兵が雪崩れ込んでくる。
「いいですね、仲間の為に死を厭わない。出会い方が違えば友人になれたやも知れません。」
 大きな城のような建物まで長く続く道に、義勇兵までもがあつまり500名近くの亜人達が五星をめがけてはしりくる。
 そして五星は自身の殺意と無念に散った仲間達の魂を呼び起こす殺戮兵達を一点にまとめ、巨大な弩砲となり躊躇い無く放たれる。
殺戮弩砲ジェノサイドバリスタ
 いかな城でも破城できそうな残酷な一撃は直線上に存在する生物を肉塊に変え血の花を咲かせそのままに後方に聳え立つ城を貫き消滅させた。
「なかなかの威力ですね。ですが少々疲れますね…恐らく10発も撃てば気を失うやも知れません。いい勉強になりました」
 神域の軍勢は知る余地も無いが、この一撃によって死した数は5000をゆうに超える。 血の気の多い亜人が城に集まりいざ行かんとした所での無情なる一撃だったのだ。 抗いようの無い殺意に身を削られ誰も見届ける事無く亡骸の上に城が落ちた。
「やはり楽しめる程の強さの者はおりませんでしたか。追跡者の方が幾分楽しそうですね…主よ…一星様を置いてきて正解だったかも知れませぬ…」
 不完全燃焼と言わんばかりに寂しげに溜息を吐きオープンカフェの片付けた椅子を持ち上げそれに座る。
「はっはぁん。お前強そうじゃん」
 さて、星でも見て時間を潰そうかと上を向いたと同時に建物の屋根の上から少年が五星の顔を覗きこむ。 明確な殺意と共に送られる言葉に五星は急いで身を起こし屋根に振り返る。
「こっちこっち」
 トンと優しく叩かれた背中から想像も出来ない程の激痛が走る身体の芯から刺々しい虫が走り回るような激痛。 危険を感じた五星は力を振り絞り距離を取る。 だが、やはり背中をトンと叩かれる。
「強いねー。これで死なないなんて」
 五星はここで死力を尽くすと覚悟する。
 全身から黒矢を放ち手応えと同時にその場所へ集中砲火させる。
「これで終われ」
 少年の身体は砕け散りそして周囲の死体を利用して復活する。
 月明かりに照らされた赤と緑のオッドアイが五星を捉えると邪悪ながらにも無邪気に笑顔と拍手を贈り始める。
「すごいすごい!三回ぐらい死んだ!!」
 コポッコポッと五星の口から銀色の虫が二匹飛び出し少年の口へ飛び込んで行く。
「お前は何者だ?」
「さぁてね。敵にも味方にもなりえる存在かな?まぁ、今は楽しみなよ!君の獄死が育ったら体ごと貰いにくるからさ!こんなんじゃまだまだだよ?」
 少年がそっと撃った五星と同質の黒い矢が地面に触れると広い範囲を円状に穴を空けた。 それは五星ですら知らぬ技であった。
「力と頭と下半身は使いようだよ?青面金剛!もっと強くなったら…」
 五星は何か来ると反応し身構えると同時に、ゼロ距離で緑色の瞳と眼があった。
「その時は全部食べてあげるから」
 その場から少年は消えた。 黒い液体となり地面のシミとなったのだ。
「強く…ならねば…アレ・・には勝てぬ……」









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