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10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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「予想超えましたわね」
「………………。」
 阿鼻叫喚の地獄絵図に染まるノースウォールを見つめるタナトスとシェルル。
 ホーキ・ボンド達北方同盟は五区で控え、20万を率いて総力戦へ向けて準備をしている中、シェルルは言葉を失い、ただ戦場を睨みつけていた。
「朝まで持たせるには私が出た方がよろしいですわね。」
「っ!?タナトス様?それではリブラ様へ申し訳が立たないのでは?」
 タナトスは優しい笑みを浮かべる。
「私は死を司る精霊ですの。悲痛な魂の浄化は戦争とは関係ありませんわ」
 城のテラスからそっと飛び降りるとタナトスは黒い門を潜り激戦地に立った。 シェルルは下唇を噛み、何も出来ない己を悔やんだ。
「力があれば………。」
 そして空が明るみ始める。

 集落の空軍基地では零戦120機の換装が終わり、黒い軍服に身を包んだ、それいけリブラ空軍改め時田塾の面々が盃を交わしてエンジンを暖め始めていた。
「なんとか耐え抜いてて欲しいっすね」
「何をしようと言うのかな?」
 まだ暗い真夜中に時田塾の最高権威である時田平蔵に声をかけられたちゃらおは目を見広げた。
「教官!?今日は学校の方じゃ?」
「いや、何か胸騒ぎがしてな。散歩がてらに帰って来てみたんだが…まさか無断で軍事作戦を起こそうとはしてないだろうな?」
 ちゃらおはいつものチャラさを消し敬礼をする。
「これは飛行訓練であり、軍事作戦では御座いません!!」
「じゃあなぜ増槽をし、実用試験前の陸用爆弾を全機に装備し、訓練用機関銃を換装しているか説明してみろ」
 時田塾長の目が光ると、ちゃらおは冷や汗を流す。
「一つは陸用爆弾搭載状態での飛行訓練及び増槽での飛行距離の適性を計る為。一つは、つい先日、タナトス殿がシェルル姫にノースウォールに招待された際、不測の事態に巻き込まれる可能性を示唆していた為です!」
 ちゃらおは思っただろう。 やったった!と。 タナトスに丸投げである。 だが、それも一撃で台無しになる。
「素直に話したらどうですか?」
 少年Aの一言である。 ノースウォールに亜人獣人の連盟が迫り来る事の旨を話し、時田は切れた。
「嘘はいかんぞ、ちゃらお。」
 仏よりも優しく、鬼よりも怖い時田がちゃらおの頬を殴る。
「すいませんっ!!」
「立て!」
 三発顔面に放り込み気合いを入れ直した所で時田はニコッと笑う。
「軍事訓練中にたまたま攻撃を受けてたまたま搭載していた爆弾を投下する。中々よくできたシナリオだ。A、俺の機体を出せ」
「え?あっ!はい!!」
 そして時田は、顔を腫らしたちゃらおの肩を抱き寄せる。
「水臭ぇな、誘えよ」
「っまじ、すんませんっした」
 ちゃらおは涙を浮かべ時田の目を見ながら頭を下げた。
「リブラさんはまだ帰って来られて無いのか?」
「はい、なんか海凍らせたら茜鰯が大漁だとかなんとか言って帰って来て話しも聞かずにたまたま戻って来た五星さん連れてどっか行っちゃいました。」
「そうか…食えるのだろうか」
「それは、すんませんっす。わかんないです。」
 こうして明朝121機の零戦が空を舞った。

 戦場ではタナトスが歌を唄い、一つずつ荒れ狂う魂を死の世界へ誘う。 文字通りの死だ。 巡る事の無い魂の死。
「あの綺麗な人誰だ?追跡者か?」
「あんなアバ作れたっけか?」
「課金とかじゃねぇの?なんでもいいから抱いて欲しい。」
 黒一色に透き通るような白い肌、黒い羽衣と共に舞い踊り歌を奏でる美姫に戦いを忘れて見惚れる男達。
 ノースウォールの兵力を削り続けた黒い炎の化物達が見る見るうちに数を減らし空が明るみ始めた頃、西が燃えた。
 西が燃えたのだ。
 神域の木を傷つけたら怒られると勘違いした100を超える火車の群れが西を大炎に染め押し寄せたのである。
 その様は炎の津波。 消えない炎の車輪が繰り出す拳は、不滅の黒き炎に身を染めた者を殴り飛ばす。
「面白そうじゃあん!!」
 火車は加速すると車輪の炎を白炎に変え亜人獣人、はてはノースウォール兵も関係無く轢き殺して行く。
 肉が爆ぜ焼け散る一方的な蹂躙は終いには東の空すらも燃やす。
「俺の名は三星!!!面白そうだからお前らみんな死ねよ!!」
 その直後黒い炎の亡霊は黒い氷の亡霊へと姿を変え、一面を真冬に変える。
「俺を忘れてもらっては困るな!!」
 攻めあぐねていたカムクラがここに来て極大の雷撃を落とすと再生にかなりの時間を要するようになった。
 しかしそれを退けても身体能力が並外れた亜人獣人の猛攻に前線のノースウォールは兵を減らして行く。
 追跡者達も何度殺されようが城下から駆け寄るが均衡を保ち互いに兵力を落としていく泥沼の総力戦となった。

「おい!そこの雷のお前!!」
「あぁ?なんだ魔物」
「お前一番強そうだから殺していいかなぁ?」
「はん!戦が終わったら遊んでくれるわ!」
 直後爆炎と共に数多くの兵が弾き飛び紙一重で避けたカムクラの鎧の胸当てが抉りとられる。
「喧嘩売ってんだよ気付けバーカ」
 星持ちの中でも特異点である、四部族の子孫で構成される三星部隊に見られる特徴は一つ。
 とにかく強く。
 産まれた頃より、自身より格上の赤ゴリラを従えて共に成長した三星達は常日頃に自分を限界に追い込む事を好む。
「チッ、面倒なのに絡まれたな」
「じゃあ死ねば?」
 襲いかかる火車を槍でいなすとカムクラの槍がハス切りになり真っ二つに分かれる。
「負けちゃったねぇー!」
 別れを告げ死を覚悟したカムクラを嘲笑すると言わんばかりに次の手が現れる。
「えぇ!?時田塾!?ヤバイ!!ばれたら殺される!!逃げろ!!主に知れたらバラされるぞ!!」
 火車は全力で前線から離れる。 時田はその光景に口元を歪めるが、迷わず指示を出す。
 無視である。
 一切合切を無視し、時田塾は上空より陸用爆弾を雨のように投下し始めた。
「容赦ねーな!おい!逃げろ戦士達よ!時田の馬鹿が無茶しやがる!!」



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