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10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

67

 俺は夢を見た。 3000年前の英雄乱生で親父達が世界を救った後、俺が産まれて泣き崩れる母ちゃんの姿。 そして一縷の望みをかけて、ハウロミ島で祈りを捧げられる霊体の俺。 そして俺が産まれた島のみんな。
 昨日俺に色々な話しをしてくれたオッサンにそっくりの若い兄ちゃんが俺を見て泣き崩れてる。
「カイリ頼む!!俺とリリスの命を使ってこの子を助けてくれ」
「待て、私の末裔よ。親が居なくては子が悲しむ、私は長く生きすぎた、私の命を使いなさい。」
 黒いローブに黒眼黒髪の…俺? いや、師匠だ。この声は…。 でも師匠って隻眼だったのか? 片眼が無い。
「いやだ!!いやだ!!成功するかどうかもわからない!!唯一無二の友を失いたくない!!」
「わかってくれカイリ!!この子も俺にとって唯一無二なのだ!!」
 カイリと呼ばれたあのオッサンは膝をつきながら懇願する。
「いやだ!!いやだぁぁ!!」
「やらぬのか?カイリ、なれば私がお前らの全てを吸い付くしその力を使ってくれようか?」
「やめてくれ!やめてくれアイザック!!頼む!!」
 今よりも遥かに多いハウロミ島の民が師匠の眼に喰われて行く。 九芒星にこんな力無いはずだけど…。
「時間が無いのだカイリ、この子には時間が無いのだ!!自らを霊体にしてまでも生きたいと願う強き子の願いを叶えてやらねばならぬのだ!!」
「そんなにも強いのかのう?妾の生命だけでも受肉しそうであるがな」
 エリミアだ。 俺の透けた体に手を翳す。
「ほらアイザック、どうせお前の居ない世界などつまらぬ。妾が此奴に生命をくれてやろう。」
「待って!!みんな力を失うかも知れないけど、ここのみんなの力を分け与えたら、生命を失うまではいかないんじゃない?私この子の顔見たいよ?だってリリスの子供だよ?」
 マミさんだ。可愛い。
「さて、それはどうかな?フォッフォッ、だがリリスとクラウドがおらねばどの道ここの皆は死んでおった事じゃしのう。」
 チャリクス爺も手を出す。
「違いねぇ!どうせお前らがいなきゃ飯作る意味もねーしな!ったくこのガキ、もし会えるなら薪割り地獄を味合わせてやる!」
 バグジーさん…。 ぶれないな。
「仕方ねぇなぁ、あの世に工房はあんのかね?」
 グリムさん、無いよ。多分。
「クラウドの子に剣を教えるのが夢だったのだがな、仕方ないだろう。」
 ジェルスさん…。
「お前らみんな…」
 親父泣くな。鼻水が汚い。
「カイリ、お願いがあるの…もし私達が消えてしまったら、この子の事お願い」
 オッサンは涙を流しながら深く頷く。
「私が……この子の父となり母となり友となる事を誓おう」
 星に祈りを捧げると俺は受肉を果たした。
 みんなも生きてる。
 え?俺は受肉に3000年の時を要したんじゃ? テンション上がった親父が魔王達を拉致ってきて宴が始まって。
「あぁリブラ…皆の力を均等に奪い産まれるなんてなんて優しい子なんだ…でもそれじゃあ私を殺せません、残りの眼もあなたにあげましょう。皆の全てをその身に受けて、私を殺して下さい」
「待っていますよ?」
 夢を見てる俺に向き直り両眼を失った師匠が声を掛けた所で夢から覚めた。
「頭いたぁぁぁ」
「二日酔いですか?」
「あっ、カイリさん。ありがとうございます」
「………………。」
 水を渡すと笑顔のカイリさんが黙りこくってしまった。
「夢を見ましたか?」
「え…えぇ、でもなんで?」
「私の捨てた名を呼んだからです」
「じゃああれは………」
「えぇ、あなたは一度ここで産まれました。そしてアイザックに殺されました。あなたはお腹の中とここでアイザックに二度殺されたのです。強引に力を与えて。」
「え?」
「アイザックは己の死を叶える為に私の友の命を使い、自分を殺せる力を持つ者を生み出した。そして己が使える最大の力を持って星の理を覆す世界を創り出した。」
英霊島ヴァルハラ……」
「そうです…リブラ、アイザックを殺してやって下さい。いつになってもいい。英霊島もハウロミ島もアイザックが生きる限り終わらない夢の歯車の一部と成り下がってしまった。だから我々はずっとあなたを待っていた。ずっとあなたにこの力を渡す為に、さぁ、九芒星を開いて」
「い、嫌だ、それは嫌だ。何があるかわからないけど嫌な気がする」
「お願いしますリブラ、この3000年の間、ずっと貴方の一部になれる夢を見続けて来ました。仮初めでもいい、私達は英霊島へ行って友に会いたいのです」
 何故か何が起きるか理解していた俺は涙が止まらなかった。 そして、カイリさんが俺の眼を起こす。
「開け九芒星」
 エニアグラムで見たハウロミ島は金色の粒子になって俺の中を通り抜けて行く。
 そして粒子となったカイリさんが笑顔で語りかける。
「リブラが真理術と言った術の本当の名は界理術かいりじゅつと言います。焦らずに世界で遊びなさい、そしてまた英霊島で会いましょう。」
 グンマー人が光の粒子になり消えて行くと、その光を追うように鮫が連なり螺旋状に空を舞っていく。 まるでイワシを捕食するサーディンランのような美しい神秘に見惚れていると気付けば俺とカルマは岩の上で二人で座っていた。
「主君、カルマは不思議な夢を見ました」
「あぁ、俺も見たよ。」
 海に鮫の群れは消え、俺たちの手元には木の実を割った器だけが残っていた。
「…カイリさん、ありがとう……」

 そのまま船に戻ると相変わらずちゃらおが甲板に寝っ転がっていた。
「あれ?なにしてんすかぁ?」
「ハウロミ島に行ってたんだよ?」
「あぁ!ってなんでしたっけ?ハウロミって」
 不思議な事に初まりの島の記憶は誰も覚えていなかった。 まるで初めからその部分が抜け落ちたように。 一つだけ残ったのは、俺の界理術だけだった。
「主君…なんかこう…美味しかったような夢でした、いや、歌が…綺麗な歌が流れて空に消えて行くような…」
 カルマが考えこんでいるので頭をポンポンと撫でながら叩くと、カルマは何かを思い出したかのような表情になる。 そして空へ向かい歌い出した。
『世界は全て海
 ハウロミはこの島で
 我らは祈り捧げ
 ヴードゥカを飲み生きる
 星が降り注ぎ
 新たなる生命が芽吹き
 我らの言葉を使い
 この星で命を紡ぐ』
 海鳥の鳴き声が共に歌っているような心地良さを感じると不思議と涙が流れてきた。
「主君…あれはやはり夢ではござりませぬな」
「あぁ、そうだな。」
「また、ヴードゥカが飲みたいですね」
「そんな事より….鮫いなくなったな。」
「ええ、一大事です。」


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