話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

53

 60機の空を切り裂くエンジン音が鳥の囀りを掻き消すと共に奇襲は開始された。
 降下し低空飛行に入る零式艦上戦闘機がリブラ特製魚型水雷を海面に落とし高速スクリューの機動と共に一直線に帝国軍船に被雷すると同時に次々と爆炎があがる。
 今回、魚型水雷に込められた術式は連鎖爆破型のメギドフレアだ。 浄火の炎獄メギドフレアは広域殲滅魔法の一種で、広範囲を白化する高温の炎で焼き尽くす魔法である。 リブラはメギドフレアを魚雷の中で連鎖爆破を起こすように設計し付与式を施した。
 被雷と同時に三度の連鎖爆破を起こすのだが、その発動毎に一度目二度目の熱を吸収してからの大爆発となる。 メギドフレアは本来、ゆっくりと広がる白炎の波のような魔法なのだが、リブラはその術式を改竄し球状に留まるようにした。
 それにより球状の白炎が軍船を瞬時に消滅させ周囲一帯が高熱により大炎上を起こす。
「やっば…………」
 この蒼龍から発艦した魚雷積載部隊の指揮はちゃらおの元に行われていたのだが、攻撃を一番に仕掛けた本人も言葉を失う威力だったのだ。
 気の緩みきった帝国軍の右頬にキツイ一撃を放りこむ事に成功した第一陣は攻撃の手を休めずに魔導機関銃の発射レバーを引き絞りながら遊撃を開始する。
「くそっ!!アウリファナンティのゴブリン達だ!!撃ち落とすぞ!!」
「折角帝国からこっちの配置になったってのに最悪だ!!」
「あのクソ皇帝さえいなけりゃ逃げてやるのによ、ぐぉぉ、首が締まる…」
「ここを守れと命令・・されてちゃねぇ…。」
 帝国に囚われた追跡者奴隷達が駆けつけた頃にはすでに遅く、空に100機を越える戦闘機が飛び回っていたのだ。
 ヨルムンガルドに常駐する帝国軍も魔法で必死に応戦するが空から降り注ぐ獄炎インフェルノブレイズの雨に為すすべもない。
 第三陣指揮官時田は第二陣が最後の転移プレートを落下させるのを見届け各班長にサインを送り王都へ向かう。
「さて、何が出るかな」
 時田は薄く笑うと30機を連れてハーバータウンを去る。 それを見届けた他のパイロット達も事前に取り決めた方向へ各10機ずつで四方八方に散開していく。
 そして直後、時田塾が製造しリブラが量産した秘密兵器の登場だ。
「うわぁぁ!!いきなり変なゴブリンがいっぱい出てきたぞ!!」
「あぎゃ!ひぎゃ!」
 ゲートの転移術式を組み込んだ魔鋼製の転移プレート。 そこから流れるように溢れ出した五星遊撃陸戦部隊は時田技師がダウンロードした89式突撃銃、所謂アサルトライフルを持って満を時して推参する。
 こちらの弾丸には、大層な術式は付与せず、火属性魔法の貫炎を施している。
 着弾と同時に貫通能力の高い炎の弾丸となるものだ。
 これが元々知能の高い石弓の部族800のジェネラル級ゴブリン達が撃ちまわるのだからたちが悪い。
「これより殲滅作戦を開始する!!」
 漁のおかげで息のあった抜群の統制を見せ次々を敵兵を撃ち殺して行く様子は無機質な的にただひたすら鉛玉を撃ち込む訓練のそれだ。
 黒煙が立ち込める中、確実に敵を殺して行く五星特別陸戦部隊の背後からは四星特別陸戦部隊が悪い視界の中で敵兵を斬り殺して行く。
 多少の有毒ガスであればゴブリンの内燃機関特有の毒素分解で問題無く行動が可能な上に、一度取り込んだ酸素を蓄積し鼻と耳で機微な調整をする事で濃度の濃い酸素を体内に残し長時間の無酸素運動を可能とする。
 ジェネラル級になるとこれが凄まじくなり水中に長い時間潜る事も可能となる。
「煙邪魔だな。」
 怒涛の勢いで陸戦部隊が軍を進める中で部族長達が徐々に現れ始める。 一番に登場したのは閻魔イーシェンだ。
 指をパチンと鳴らすとその身が塵となり煙と融合する。 ハーバータウンを埋め尽くしていた黒煙は一点に集まり黒煙の巨人となったのだ。
「はい視界良好!!!」
 街を一つ染め上げる程の黒煙をその身に凝縮したイーシェンはその拳を叩きつけると、全身の皮膚から黒煙が流れ出た死体を量産して行く。
 そこを見計らったように現れるリャンシェン達六騎槍の面々は舌打ちをする。
「イーシェン殿!!残りのカスには興味ありませぬ!!王都に向かわせて頂く!!」
 煙の巨人は手でオッケーサインを作るとその指の円をリャンシェン達が抜けていく。
「ったく、化け物になって帰ってきおって」
 その前方の丘の上でスーシェンとウーシェンが待ち構えリャンシェンの竜に飛び乗る。
「二の字の旦那!どっか適当に送ってくれよ?」
「私もお願いします」
 白髪の白虎剛鬼のスーシェンと六本腕の剛腕のウーシェンもここには価値を見出さなかったようだ。
「無賃乗車と言う言葉を知っているか?貴様ら」
「かてぇーこといいなすんなや!!」
「敵が居ればよいのですが…」
 一路王都へ向かう三匹の鬼の尻目に空を飛ぶ閻魔の姿が浮かぶ。
「俺も混ぜてくれよー」
「と、飛んでる?」
「あぁ、これ?武空術っつー技でな、空気を蹴ったら出来るんだなこれが」
 他の鬼は首と手を振り無理無理と呟いた。
 見る見る内にハーバータウンを壊滅させ制圧が完了する頃、転移プレートを使用しリブラ達が上陸していた。
「うわぁー。ほんとに更地になっちゃったよ」
「主君の命令通りだと思いますが…お気に召さらなかったので?」
「いや、上出来だな。カルマ、掃除しろ。」
「御意に。」
 カルマがリブラにばれないように魔人の手を背中から生やして大掃除をしている頃、リブラは何か次の手を考えるように海を見渡し思案に耽る。
「いい街だな」
 巨大な湾を囲む街に丘の上の貴族街、今では見る影もないがリブラの目にはどう写ったのか知る者は居ない。






「10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く