10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 操船室の妖精の子に関しては、時田さんのみぞ知る状態となったが、現在空母赤城・蒼龍を沖合に出航し、着艦訓練を行っている。
「やっぱりちょっと浮いちゃいますね」
 塾生が顔を赤くしながら悔しそうに笑う。
「いやぁ、十分だろ?俺なんか乗れもしないしな」
「リブラ様なら魔法で強引に飛ばしそうですもんね!!」
「ちがいねぇ!!」「はははは!!」
 脳筋共が。 確かに可能だが人を魔法ヲタクみたいな言い方しやがって。 なんだったら箒に跨って圧倒してやろうか? それは俺自身も立ち直れなさそうなので絶対にしないがな。
 そこに一機が抜群の安定で着艦する。 少年Aだ。
「流石ってとこだな少年」
 ヘルメットを外しながらニッコリと笑うと首を振る。
「ありがとうございます。でも、模擬戦はまたちゃらおさんに負けてしまいました。」
「けど何発かはぶち込んでやったんだろ?」
 はいと小さく親指を立てると整備兵を呼び出して愛機の点検に入る。
 そしてちゃらおだ。 着艦フックに掛かると同時に緩やかに止まる抜群の着艦を見せつけるが、その顔はいつになく不機嫌だ。
「こら少年ーなんかすげードヤ顔でムカつくんすけどぉ??」
 涼しい顔で少年Aは振り向き微笑を浮かべる。
「両翼ピンクに染め上げてくれた後に喧嘩まで売ってくるなんてちゃらおさんは怖い人ですねぇ。そんなにエンジン抜かれたのが悔しいんですか?」
「こいつぜってぇーなぐる!!」
「こいよっ!」
 チビとちゃらおが周りに止められながらもみくちゃになっている中で全機の着艦が終わった。 さて、本題に入ろう。
 2隻の航空母艦を停泊させ、パイロット、整備兵を集める。
「これよりヨルムンガルドハーバータウンの奇襲作戦の概要を伝える」
 ビシッと引き締まったいい表情で揃った返事が響く。
「まず、ヨルムンガルド沖100海里に存在するハウロミ島付近に接近すると同時に航空母艦赤城・蒼龍より160機の零式艦上戦闘機を発艦し、敵艦を殲滅、これが大まかな作戦だ。」
『はっ!!』
「作戦内容としては攻撃部隊を三部隊に分け攻撃をする、第一陣は蒼龍より全機魚雷を持って敵艦を撃破、後に遊撃にまわってもらう。第二陣は60機編成で指定された地域上空から転移ゲートプレートを落下してもらう。その後遊撃。そして第三陣の到着と同時にヨルムンガルド主要都市を壊滅せよ」
『はっ!!』
「詳しい内容は後に時田さんより説明がある。整備兵はこれより直ちに換装に入れ!!以上!!」
 こんなん言ってみたかったんですよって。 上機嫌で研究所に戻ると星持ちのゴブリン?達が膝をついて待っていた。 なんだこいつら。 てか、いかつすぎるだろ。 ゴブリンがどうしてこうなった。 カルマまで何してんだ?
「どした?お前ら」
 閻魔イーシェンから言葉を放つ。
「作戦のご指示を」
 イーシェンの子供っぽいタメ口では無いのが違和感を感じるがそれほどにまで前に立ちたいのだろう。
「我も空の戦士となりて必ずや武功を」
 リャンシェンもそれに続く、サンシェンはなんか気まずい感じに腫れた顔を隠しながらもじもじしているがとりあえず無視だ。
 そして各部族の長に対しての指示を出す、こいつらは今回の作戦においては過剰戦力ではあるが、こちらとしても帝国側を甘やかせるワケにはいかない。
「っとまぁ、そんな感じだ。お前ら楽にしてくれ。あとサンシェン、本拠地の防衛の大役頼んだぞ?」
「お任せください!!我ら部族そして以下ボアオーク400、オーク400、コロ800、ハーピー600、オーガ200、リザードマン800、黒狼180、白狼70、トロル40、全軍を持ちまして鉄壁の守りを見せましょう。」
「では、武運を祈る」
 星持ちの長達が出ていくとカルマが寝ているライを抱きかかえて戻ってくる。
「主君、いよいよでございますな」
「そうだな、いよいよだ」
 カルマはライを抱く手にギュッと力が入る。
「主君…このカルマの武は役にたちませぬか?」
 やはりそうきたか。 カルマには俺の護衛と、不測の事態がありしだいの援護の任を出した。 だがやはり多少なりとも思う所があったのだろう。 カルマの珍しい、いや初めて見るかも知れない拗ねた様子に状況とは関係なく少し笑ってしまう。 初めてに対しては初めてで対抗しよう。 俺はカルマの髪をとくように指に髪を絡ませて優しく撫でてやる。するとカルマは顔を真っ赤にして狼狽えはじめた。
「お前を弱く見てるんじゃない、お前は強すぎるんだ。だから俺の護衛だ。不服か?」
「いえ…その…不服を申した訳では決してございませぬ…ただ、皆が強くなった事でカルマは……感じた事の無い心のありようゆえにうまく説明できませぬが…」
「不安か?」
 そっとカルマを膝に抱きかかえてやると気持ちよさそうに眠るライが薄く目を開くが、また微睡みに、落ちる。
「俺はお前を一番信用してる」
 背中が震えると同時に、うまく喋る事が出来ないカルマはふるえた声で返事を返してくる。
「ありがたき…ありがたきお言葉…何よりもの褒美でございます」
 そこで俺の中の理性スイッチが強烈に働いた。
「じゃあカルマ、ライが苦しそうだから離してやれ」
「は…はい」
 ライが日当たりのいい足元に置かれると尻尾をパタンと動かしおやすみの合図を出してくる。
 カルマはゆっくりともじもじと振り返ろうとするが、理性全開の俺はそれを許すはずがない。 そっと放り投げ、ケツをインステップで蹴り上げて飛ばしてやった。
「な、なにゆえーーー!!!!」
 危なかった。危なかった俺。 船の子もそうだけど、俺は可愛い幼女がまわりに多すぎる。 にゃんこに関しては羞恥心の壁はとうに投げ捨てたが、とうとうカルマにまで俺の魔の手が伸びそうになっていた。 童貞がババアで次が幼女って極端すぎるだろ。 いや、カルマも歴戦のババアか。 だが色んな意味でダメな気がする。 俺はロのつく危険職では無い。 決してだ。
 よし、開戦のシュミレーションをして頭を冷やそう。
 いつの間にかテーブルで寝てしまっていたようで、時田さんが肩を揺らしてくる。
「夕刻ですリブラさん、これより大きく迂回をする40時間を越える航海が待っています。寝てしまわれると後悔しますよ。」
「え?ダジャレ?」
「決してそのような事はありません」
 笑顔で小さく頷く時田さんが、全ての準備を終えた事を告げると総動員での出撃態勢に入る。
 ウーシェン以下の混成軍を防衛ラインに、メスゴブリン、そしてマサツグ達のギルドの生産職とそれの警備に18名を残しての出撃。
 時田塾パイロット及び整備兵400、雷々亭、安らぎの庭園指揮官の元に構成される時田塾特別作戦部隊700、四星遊撃陸戦部隊800、五星遊撃陸戦部隊800、先行ハウロミ島待機二星六騎槍、そして、俺とカルマとライとイーシェン。
 素晴らしい。 これで山間を挟んででなければ纏めて帝国も落としてやるんだがな。 まぁ、まずはヨルムンガルドを更地にしてくれようか。




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