10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

50

 空母赤城は完成した。 そして並行して造られたまだ未完成の空母蒼龍を前に俺は今、サンシェンをぼっこぼこにしている。
「ちょ、まじすんません!ちょ!いたい!!もぉ!!」
「主君…それぐらいにしてやりませぬか?サンシェンがもう何かすらわかりませぬ。」
「ワウゥゥゥゥ」
「ちょ!雷はやめて!雷はだめ!!」
 何故怒ったかって? そんなの簡単だ。 勝手に領地を広げたのはいい。結果としてよくやったと言える。 仲間を増やしたのもいい、よくやったと言える。
 だが、こいつらは独自にワケのわからん進化をした上に森の一部を炎上しやがった事だけは許せん!!
 ブラウニー達に出会って、木を大切にしようと誓った俺が憤怒するのは当然ではないだろうか?
 しかもリザードマンとの戦争で湿地帯を焼き討ちするしか勝ち目は無かったと言い訳しやがった。 そんなワケあるか。 こいつらの膨れ上がった軍勢を見て、「そうだったのか。」なんて言える奴いるわけがない。
 もっと楽に勝てたはずだ。
 しかも、百歩譲ってそこまでも許す。 結果は勝利を収め、俺たちの領地を大きく広げた。 だがこいつは俺達にその力をお披露目をしようと、旧集落から此方に向かうまで大炎上を起こしてやってきたのだ。 これは絶対に許すまじ。
「だって!!」
「だってもくそもあるかい!!」
 フィニッシュはシャイニングウィザードただの飛び膝蹴りで砂の上に沈めてやった。
「しっかしリブラさん。結果としてはマサツグんとこの奴らに仕事が出来たじゃないっすか。」
「それは結果論だ。てか写楽はウザイから話しかけんな。」
「ひでぇぇ。」
 あの悪魔のカルマが悲しそうにムスッとした顔をしながら燃えた木を引き抜いて集める様子を見てしまうと、しばきまわさにゃ気がすまんかった。
 だが、収穫もあった。 マサツグのトコにいる焦げ茶色の狐耳のモフッ子が土狐人と言う種族らしく、農作士と言う職業だったのだ。
 何故剣と魔法のRPGで農業をしようと思ったのかは一切不明だが、魔法で生み出した塩害に強い米の畑を作り出してくれたのだ。 いやぁ、特殊魔法様々ですね。 サンシェンは許されんけど、結果としては広大な農地を手にいれたのだ。 焼けてしまった木はフェアリーランドでどうにか使ってくれと言っているので一先ずは心を落ち着ける。 そこで、背後から落ち着いた声を投げかけられる。
「リブラさん、恐らく蒼龍が完成する頃には、塾生も操船を熟知するかと」
「時田さんか、後何日ぐらいだ?」
「赤城のメンテナンスも兼ねて7日があればなんとか、ですが…気になる事がありまして……」
「何があった??」
「操船室の扉が開かないのです」
 俺はその、言葉を聞いて空母赤城へ走った。 操船室が開かないとなれば、今回のヨルムンガルド奇襲作戦が失敗に終わる。 俺の血と涙の結晶である対艦魚雷が活躍の場を失ってしまうのだ。
 ドンドンドン!!!
「誰かいるのか?あけてくれ!!おい!!」
 ドンドンドン!!!
「おーい!!誰かいるのかぁ?」
「どうしたものですかね?」
「時田さん、このドアは潰してもいいのか?」
「仕方ないでしょうね」
 すると、横開きの鉄扉が少し開き、その隙間からセーラー服を着た手に木槌を持つ黄緑色の頭髪の少女が眠たそうな顔をしてこちらを見上げている様子に、俺と時田さんは絶句する。
「……………。」「……………。」
 そして目が合うと二人同時に首を傾げてしまった。
「ちょ、君、だれ?え?」
 するとバタンッと再び鉄扉が閉められてしまう。
「ちょーちょーちょー!!ちょっと!!!開けて!!君は誰!?」
 すると扉越しに声が聞こえ出す。
「操船の出来ない人は入らないで欲しい。」
 振り向いて時田さんと目を合わせると眉間に皺が寄り切ってしまった俺達二人は更に首を傾げてしまった。
 ここでトッキー出陣だ。
「お嬢さん、私は操船ができますよ?だからここを開けて下さい!!」
 小さく隙間が開いて幼女がジーッと時田さんを見ると扉を開けて時田さんだけ中に入れて扉を閉めてしまう。
 なんとも言えない虚無感の中で、操船室の前で佇んでいると時田さんが帰ってきた。
「リブラさん…以前ブラウニーの木槌が何処に使われているか……知りたがってましたよね?」
「あぁ、確かに気になってはいたな」
「どうやら、彼女がそうらしいですね」
「は?」
「いや、正確にはブラウニーの木槌を媒介に宿った船の妖精…と言った所でしょうか…どうやら、此方からは数人の補助を送るだけで操船は彼女が全般的に受け持ってくれるみたいですね。」
「えっと…そう言う事ですよね?」
「そう言う事みたい…ですね。」
 すげーなおい。 でもよく考えたら時田さんが詳しすぎるだけで、他の人が外部ツールをダウンロードしたら、こんなのどうする事も出来ない事を考えたら納得の仕様なのかな。
 ジェイルブレイカーおそるべし。
「ですのでリブラさん、後四日程で蒼龍の完成と共に行けそうですね。奇襲作戦。」
「そう言う事ですよね。」
 俺と時田さんは握り拳を合わせた。



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