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10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 俺は今、俺のゴブリンのアバターを持ってヤマトの前に来ている。 アバターを前に差し出し腹話術のように声を出す。
「やぁぁまとっ」
「みゃあう」
 巨体の毛がボッサくれた黒豹は猫なで声を出して機嫌よさそうに尻尾でパタンパタンと地面を叩く。
 ここがチャンスだ。 俺は思い切ってアバターの後ろから顔を出す。
「ばぁぁぁぁ!!!」
 プイッ。 ヤマトはそっぽを向いて尻尾でシッシッと俺を遠ざける。
「なぜだぁぁぁぁ!!!!!」
 ヤマトはアバターの俺を好いてくれてはいるが、本体のほうは嫌いらしい。 ヤマトはアバターの俺とはお昼寝してくれるが、本体の俺は近寄る事すら許してくれない。
 悲しい…悲しいよ。 あんなにもお互いの怠け者具合を確認しあったのに。
 普段何もしない俺がヤマトの為に作った日向ぼっこ場は集落でヤマト城と呼ばれ、不可侵地域となっている。 ただ木の上にだだっ広い屋上的な場所を作っただけなのだが城扱いだ….。 事の始まりはカルマの相棒黒姫の献身的なまでのヤマトに対する深い愛情が原因だった。 まず日常でヤマトは全く動かない。 ひたすらに寝転がるダメ豹だ。 その為に黒姫は森を駆けヤマトが飽きないように多種多様の獲物を狩り、それを差し出す。 むくりと起き上がりある程度食べると、ヤマトはまた寝る。 そして残飯を黒姫が食べて次はゆっくりと寝れるように周囲の外敵への警備を始める。
 そう、この警備が問題だ。
 黒姫は物音を立てぬように静かに木々に飛び移ると塒からかなり広めの範囲で巡回を始める。 そして、黒姫が定めた守備範囲に外敵が現れると容赦なく狩り殺す。 以前にカルマのアバターが噛み千切られたのも、この巡回範囲であったと予測される。 黒姫はただでもオーバースペックの化け物だ、それがどう言うワケかヤマトの睡眠の妨げをする者を狩る為なら数十%の底上げで戦いを挑む。 ここでの犠牲は計り知れない。 我が集落のゴブリンはモチロン、スーシェンの直属の部下達も腕を噛み千切られ、逃げ帰ってくる始末。 極めつけはベタと言えばベタだが、オーク達に王が生まれ3000を越すオークが此方に進軍した形跡・・だけが残っていた事だ。 漁に使うオークを狩りに行ったスーシェン達の報告で駆けつけた時、西の森を埋め尽くす程のオークの亡骸を見て驚愕したのは言うまでもない。 事実上海岸の集落から隣接する西の森の一部は黒姫の絶対守護区域となり城と呼ばれるようになったのだが……そんな事はどうでもいい。 そんな事はどうでもいいのだよ。
 何故ヤマトは親友の俺にここまで冷たいのだ? 俺はどうやら徹底的に彼と向き合わねばならない所まで追い込まれているのではないだろうか。
 目前で爆睡しているヤマトにゆっくり立ち寄ると黒姫がスタッと舞い降りる。
「なんだジャリ猫、俺の邪魔をするのか?」
 何かを感じとったのか、プライドの高い黒姫が俺に頭をなすりつけニャーゴニャーゴと機嫌をとろうとするが…。 それを退けて進もうとするとフニャンフニャンゴロゴロと機嫌のよさそうな声を出して尻尾をふりふり…。
「くっ、かわいいなてめっ、え?うわぁわぁわぁ!!!」
 結論、可愛いは正義と言う名の鉄壁の防御の末に、日向ぼっこ場から突き落とされた。
「覚えてろよてめーら!!!」
 トボトボと集落に帰ると、妙に集落が騒がしかった。
「落ち着いて下さい時田殿!!主のご指示をお待ちください!!」
「離せ!!離してくれ!!ここで指を咥えて待っていたと聞いた方がリブラさんは怒るぞ!!戦場では一分一秒の判断が重要になるんだ!!!」
「イーシェン様!!わかってくださいよ!!こっちは零戦が三機もあるんすからっ!!」
 騒動の中心にいたのはなんと時田さんとちゃらおだったのだ。 その姿は俺が発案したそれいけリブラ空軍の黒い飛行服とヘルメットを装備し出撃準備が整った状態だった。
 俺は即座にゲートを発動し渦中へ飛び込んだ。
「何があった??」
「あるじぃ!!おそいよぉ!!」
「リブラさん、西の海に海賊船50、軍船80がこちらに向かっております!!至急出撃許可を!」
 これはえらいこっちゃ。 だが、つい先日完成した魔導機関銃は殺傷能力が皆無の訓練用だったはずだ。 今日の朝の訓練までそれだったんだ。いちいち取り外してたら…。
「それは構わんが、訓練用の魔導機関銃のままではないのか?」
「王様ぁ!!そのへんは抜かりないっすよ!!時田塾のみんなが即座に換装したっすから」
 さすがだ、時田塾。 零戦のプロフェッショナル達なだけある。
「よし、じゃあ時田さん達は至急出撃準備!!急いで!!時田さんとちゃらおはすぐいってくれ!!」
 既に時田さんの教え子達、所謂時田塾の学徒達がプロペラを回し始める。
 そして、完成したての三号機に、にゃんこが連れてきた少年の一人が乗り込む。
「待て!!待て待て!!お前は何をしているんだ??」
 少年は笑顔でエンジンをかける。
「心配しないでください!!飛べます!!」
「ちょちょちょ!!!」
「出ます!!!!」
 ぬおぉ!!子供が戦場へ行ってしまった。てか大丈夫かよ? でも、そんな事言ってる時間は無い。
「イーシェン!!カルマは??」
「カルマ様は丘の上で魔法による威嚇を!おかげで海が荒れている為に敵艦隊の進行は遅くなってるみたいだ。」
「くそ!!!位置は!?」
「これより約三時間程で集落跡前方に到着するかと」
「イーシェンは念の為陸戦の準備をしろ。」
「了解した!!!」
『ゲート』
 即座に海を見渡せる丘へ移動する。
「主君!!!」
 そこでは少し疲れた様子のカルマがマキちゃんと共に魔法を放っている。
「リブラさん!遠視の魔法使えますか?」
「あぁ、問題ない。それで?何があった?」
「先行する軍船にマジックキャンセラーに似た装置を設置しているみたいです。それで、こちらの遠距離魔法が弾かれます!!」
 マジックキャンセラーはサークル状に魔素吸収結界を張るだけで、吸収限界を超える魔力の魔法をブチ込めば割れるはずだぞ?それにカルマの魔法は一番最弱で高位魔法だ。 所謂、今のはメラゾー◯ではない、メ◯だ。状態の悪魔幼女が放つ遠距離魔法が弾かれる事などあるのだろうか?
『遠隔視界』
 まずは見てからだ。 生命力を糧に行う高位影術を展開する。 視界の影がある所に自身の目を設置できる。 そして、最先団の船を見てみるが……甲板に立つ戦士風の男が持つ畳一枚程の大盾を構えてる。 そして大小の魔晶石を埋めこまれて描かれる術式が……うわぁ、術式って言うか、あれは…。
「いや、あれはマジックキャンセラーじゃない。グリムシリーズだ。」
 見間違えるはずがない。 あれは天然の術式。 グリムさんが心を込めて打った武器に出る魔晶石の波紋だ。 魔法が嫌いなグリムさんが魔法を弾き飛ばす盾を造りたいって願いを込めて打った結果だろう。
「ぐ?グリムシリーズってあの初期コンシューマー時代にラスボス裏ボス倒した後に作って貰えるヤツですかぁ??エンディングムービーで流れるだけの……」
「そうなのか?こっちの世界では国を買えるぐらいの破格の値段で出回ってるぞ?」
「そんな!!そんなチート武器がお金で買えるはずは!!」
 そこに低いおっさんの声が響く。
「まぁ、リブラさんの話が本当なら既存のグリムシリーズは国家が管理しているって考えられないか?よっこらせと」
「写楽か。」
 写楽は手頃な岩に腰掛けると大挙としてこちらへ向かう船団を一睨みすると、笑顔をこちらにむける。
「どうもリブラさん。陸戦準備整いましたよ!!それでこれはあくまで俺の憶測なんですけどいいですか??」
「言ってみろ。」
 小さく数回頷き考えがまとまったのか、次第に大きく頷くと言葉を続ける。
「カルディアン帝国がヨルムンガルド王国を落としたと…この前来られたお姫様が言ってましたよね?そして、カルディアンは錬金術師チャリクスの今は失われた技術、牢獄と隷従の術式を持っていた…そして」
「あぁ、なるほど。あれはその戦利品じゃないかと…そういう事だろ?」
「はい、その通りです。そして、ヨルムンガルドは元々交易国だったと聞きます。財力もありあまっていたと…グリムシリーズがどれほど残されているかは存じ上げませんが……」
「まだ何か隠してる可能性はあるな」
「はい。」
 最後に小さく返事をする声を掻き消すかのように零戦が三機綺麗に三角を描き頭上を飛んで行く。
「しゅ、主君!!!魔法が通じぬのであれば、あの船の魔法も通じぬのではありませぬか?」
 カルマが何度撃っても弾かれる事に憤りを感じ地団駄を踏む。 だが、これは面白い戦いになった。
「主君!!もう邪法を使わしてくれませぬか?」
「いいとこだから黙れよジャリ!!次悪魔の姿なったらケツの穴に殲滅魔法ブチ込んでやるから覚悟しろ!」
 すまん、取り乱した。 話しは戻るが。 若き日のグリムのおっさんの盾が上か…3000年研鑽を重ねたおっさんの教え子である俺が上か……。
「勝負しようぜ!!!グリムさん!!!!」

「あ……あう……お尻が…お尻がなくなっちゃう……」
「大丈夫ですか?カルマ様?」


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