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10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

39

 素人が山越えをしようとするとどうなる? そんな事はわかり切ってる。 うまくいきっこない。
 ヨルムンガルド王国山岳地帯から森を進み直線距離にして約10日程の位置にノースウォール神聖国が存在する。 山脈を越えて行くのは相当な時間がかかるだろう。 でも街道は今は危険だ。 30人規模での進行はすぐに軍が出されてしまう。
 地図を見ながら手探りで激しい山を越えて行くと進路に大幅にズレが生じた。 国境を目指す獏然とした目標の魔物を狩りながらの山越えを30人規模で敢行していた僕達は、知らぬ間にアウリファナンティ神域に入ってしまっていたのだ。
 でも、事前に最奥地の海岸部が危険だと情報は掴んでいたので一先ずは安心だ。 ヨルムンガルド王国にいる危険性を考えると、こちらの方が幾分マシだと言えるだろう。
「よぉし、今日はここらで休もうか」
「そうですね、もうじき日も暮れますし。」
「じゃあ自分ら結界はってきまぁす。」
 突き抜ける高さを誇る岩山の麓で34日目の夜を迎えた。
 草木も眠る丑三つ時に、僕は設定していたアラームで目を覚ます。 頭の中に直接響くアラームは効果抜群だ。 どんなに眠たくても目が覚める。 いくら結界を張っているからといっても、不測の事態に対応して不寝番をする為にはこのオプションは非常に助かる。 初めはビックリしたけど二月近く山での生活をしていると慣れたものだ。
「あれ?ギルマス、今日は当番じゃないですよね?」
「ん?あぁ、目覚めちまってな。それとちょっと気になるもんを見つけちまったんだ。確認に行きたいんだが…ついてくるか?」
「え?はい。なんですか?」
 ギルマスが見たのは闇夜に似つかわしくない青白い光だ。 設営からそう離れていない距離なので一気に駆けつける。
「おい、マサツグ…こいつぁ…」
「えぇ、間違いありませんね。」
 ポータルを発見してしまった。 苔や植物が巻きつき一見してはわからないけど、システムウィンドウでこちらをベースタウンに登録する事ができるようだ。
 そこで考えられるのが、この周囲でなんらかのイベントがあるのかと言う点だ。
 マップ外の未踏エリアにポータルがある場合は、隠しクエスト、限定クエスト等の何らかのイベントが絡む事が多い。 しかし、それはゲームの時の話しだ。 この変化が起きたジェイルブレイカーの世界では、見当がつかない。
「まぁ、ありがたくここで登録はさせてもらうとして…どう思う?周辺の探索をするか?」
 判断が難しい所だ。 こんな所二度とくる事は無いだろう。 もし、隠しクエストなどがあるのなら現状報酬はわからないがどう転んでも大幅な戦力アップも見込める。 だが、危険性も高い。 それに、雷々亭のメンバーが消えた件に関しても片付いていない。
「ギルマスは…どう思いますか?」
「うん…まぁ、十分に安全策を立てて慎重に調査するぐらいならアリかと思うぞ。安住の地も大切だが、情報も大切だしな。」
「そうですね、では早朝に話し合ってその方向で行きましょう。」
「あと…マサツグ、前は…ほら、悪かったな。お前の事ばかにして…」
「気にしてませんよっ!!じゃあ、僕は警備に行くのでギルマスは寝てくださ い!!」


 翌日、無事メンバー全員がポータルでの登録を済ませる。 そして6人一組での周辺探索を開始した。 そして、岩山周辺を探索していたギルマスから通信が入る。
『見つけたぞ!!!山頂付近の洞窟が途中から異界化してる。ダンジョンだ』
 メンバーから歓喜の声が溢れる。 ポータルの近くにダンジョン、ほぼ確実に隠しダンジョンだろう。 これがゲーム時代ならかなり巨額の富と力を手に入れる事が出来たはずだ。 ここを攻略すればギルドからクランへのクラスアップもできる程の。 だが、メンバー全員考えたのは試練での利益のみだ。 強化する事で自分の身を守る事ができるのだから。
『各員に告ぐ、ポータル前に集合しろ。ここを攻略するぞ』
 嬉々としてメンバー全員がポータルの前に集まった。 ユニーク職をとれるかもしれない、ユニーク武器を手に入れるかもしれない。 ゲームの時の感覚で喜びあっていた。
 刹那………。
 パキ、パキと音を立て岩山が赤色の魔晶石へと姿を変えて行く。
 これだけの魔晶石があれば高位の魔剣が何本生みだせるのか…一体どれ程の価値になるのだろうか…。 だが、この現象はゲーム時代に見た事がある。 この現象はある条件を満たさなければ起こり得ないはずなのである。
 深淵アビス。 ダンジョン踏破をして試練を受ける…ここまでが通常。 その直後ダンジョンコアを取り外すと、最高難易度のダンジョンに変わる。 それがモードアビス。 そして、最高難易度であるアビスでダンジョン踏破を行なうと、ダンジョンそのものが高純度の魔晶石化して崩壊、そして深淵の狭間より財宝と祝福を受けた武器そして限定職を与えられる。
「先客が居たって事だよね?」
 爆発音と共に魔晶石の山が崩落を始める。
「離れろ!!一先ず離れるんだ!!」
 そして6人の人影が現れる。
「やっと出られたな、戦士達よ」
 灰色のざんばら髪に美しく整った綺麗な顔。 額から伸びる一角。 口元に伸びる長い犬歯。 金銀財宝を身体にぶら下げる和服姿。 着物には目を見張るような鮮やかな柄が施され、それをだらしなくはだけさせて覗く生肌の右半身には地獄の炎を写したかの如き刺青が顔を覗かせる。
 そしてその後ろには彼の青年を小さくしたような子供達が夜叉の面を被り肩を揃える。
 レイドボス酒呑童子と茨城童子だ。
 僕は気付いたら腰を抜かしていた。 不測すぎる事態だ。 止まらない震えをおさえながら周りを見渡すと安らぎの庭園のメンバーも同様に腰を抜かして後退りしている。
「ん?お前達はあれか?追跡者か?」
 僕達を知っている? ギルマスをすぐに探した。 ここで前に立つのはギルマスしかいない。 ギルマスと目が合うとギルマスは首を小さく横に振った。 くそっ、なら僕が…僕が…話そう。
「は…はい…僕達は追跡者です…」
「はっは!そう怯えるな人間!我の主も追跡者を飼っておる!無用な危害はくわえんよ」
 その言葉が嘘でも本当でも、今の僕達には安心を与えた。
「僕達は…道に迷ってここに辿りついたのです…すぐに出ますのでどうかご容赦ください…」
「はっは!!何もせんと言ってるだろう?しかし道に迷ったか…よし、ついて来い!!お前達の仲間もおる事だ!我が集落へ案内しよう!!」
 酒呑童子の指が光ると財宝と魔晶石が綺麗に消えた。 そして踵を返し背を向けると僕の脳裏にドナドナが流れた。
「うん?我の好意を無下にしよって」
『ついて来い』
 僕達は軍隊のように整った足並みで好意?に甘えた。 でも震える足が言う事をきかずに地面に転がってしまう。
「ふん、坊主。一番見所がらあるかと思ったが膝にきたか?恐れるなと言えば脅しになるか。お主、名をなんと言う?」
「マ、マサツグです…」
「そうか、我の名は二星リャンシェン、ではマサツグ、よければ道中話し相手になってはくれぬか?新しい力を得たはいいが、知りたければ追跡者に聞けと言われたものでな、あの洞窟の主に」
「は、はい!!喜んで!!」




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