10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?
27
俺は少数精鋭攻略ギルド・雷々亭のギルマスを務めさしてもらってる写楽ってもんだ。
まぁ、わけあって数年前からジェイルブレイカーに入り浸ってる所謂廃人と言われる部類の人種なんだが…それは敢えて触れない方向で頼む。
例によってログアウト不可能となりゲーム世界に閉じ込められちまったようだが、普段と何も変わりは無いので兼々良好だ。 そして何より俺含む男5女5と言ったリアルでは天変地異でも起きない限り再現不可であろう極限の幸せを噛み締めている爆破されかねないギルドを楽しく営んでいるのだが、こんな半分デスゲーム状態に陥った所で活動内容はなんら変わらない。
攻略攻略攻略攻略だ。
常に最前線最前列!! 掲示板は俺達にヘルプを求める専用の板まである。 そして何時の間にか神格化してレベル30以上と言う意味のわからない条件を満たさなければギルドに加入させないと言う条約まで出来ちまった。
だが、それも悪くない。 仰々と名を連ねる大手ギルドや大手クランにたった10人で肩を並べれるのだ。 自慢になるがPvPの会場に行った日にゃあ割れんばかりの歓声が響いたりする。
そんな俺達は、Chapterクエストをこなす為に新たに追加されたマップのアウリファナンティ神域の踏破に来ている。
「写楽ぅ、こんな上位種ばっかりの森でゴブリン討伐とか運営が狂ったとしか思えなくない?」
「確かにな…でもマキちゃん!ゴブリンと言っても新種なのかもしれないぞ?ほら、だいぶ前に行ったバカラ諸島の角兎の亜種とかも極悪だったじゃねぇか」
「あはは!!懐かしいね!!討伐ごとに武器耐久度1減る奴!トキタサンがいなかったら終わってたよね!」
「あれは…俺も…辛かった…討伐の…記憶が…無い…」
「それはそうよね。だってトッキーずっと修復してたもの」
「えーそんなのあったっけぇ?あのクリスタルみたいなウサギ?」
「覚えてんじゃねぇかよ、わざとらしいなコムギ」
和気藹々と魔物を狩りながら森を進んでいる時に事件は起きた。
雷鳴にも似た爆音が響いたと同時に迫り来る一条の光に轢かれた。 体験した事などモチロン無いが猛スピードで走る大型バイクに撥ねられたらこんな衝撃を受けるのでは無いだろうか?
メンバー全員が弾き飛ばされ痛みに顔を歪めていると高らかに声が響いた。
「ほう、今ので死なぬとは中々骨のある奴らよのぉ!!」
ゆっくりと顔を上げた先には信じられない光景が目に飛び込んできた。 武士然とした物言いをする声の主はプレイヤーキラーと称されるバグモンスター黒牙豹に跨りランスを構える少女だったのだ。 金色に輝く腰まで伸びた頭髪にサファイアのような美しい赤い瞳、そして小さく光るドヤ顔の八重歯。
「か、かわいい……」
「そんな事言ってる場合かよギルマス!!」
「っ、痛つつつ、今回のアップデート絶対的にこの痛覚が失敗よね」
「にしても黒牙豹が来たって事は、クエストクリア条件を整えてない可能性が高い。」
「じゃあバカ正直にあの竜の群れに飛び込めってのかよ?そうなりゃレイドでも組まなきゃ無理だろうよ?」
思い思いに話していると、美しいお嬢さんの顔がヒクヒクと引き攣りだした。 しかしなんであんなヘルメットを装着しているんだ?
「きさまら、戦の最中に私語に興じるなど武人の風上にも置けぬ!!我が槍の錆にしてくれるわ」
ランスを振り下ろすと少女…いや、性格には幼女の体から赤い禍々しい魔素が流れ出す。
「マズイ!!なんか来るぞ!!コムギ!!障壁を!!」
「もう用意してるよって」
コムギの体が白い光に包まれるのを確認し安堵する。 絶対守護の障壁は、たった一度だが、如何なる攻撃でも防ぐ効果を持つ。 あの幼女がいかな大技を仕掛けようが一度ははねのける事が出来るのだ。
『絶対守護の障壁』
「よし、仕掛けるぞ!!気を引き締めろ!!!」
メンバー全員が各々にスキル発動をし、ストック状態に保持した時何処からか声が響いた。
「カルマ様の補助をする。一斉掃射」
その声と同時に降り注ぐ矢。 ゴブリンアーチャー特有の石矢だ。ダメージは少ない、当たっても針で軽く突つかれた程度だ。
だが………。
「避けろぉぉぉぉ!!!!!」
悪魔のような歪んだ笑みを浮かべる幼女が赤く染まったランスを突き抜くと配給の丸太ぺにおが木っ端微塵に弾け飛んだ。
「か、勝てないよ写楽…マルペニさんのジョブ重戦士だよ??一番硬いんだよ??」
「わかってる、逃げる準備をしよう」
ランスを振り血を払い落とすと幼女は更にニヘラと嗤う。
「楽に死なせてしもうたな、申し訳ない事をした。せめてもの慈悲だ、次は四肢をもぎ取り嬲り殺してくれる」
まるで氷点下の極寒に裸で投げ出された気分だった。 いくら生き返るとは言え、あんな死に方は見た事が無い。
「一先ず回復を!!」
あまりの事態に普段小さな声でしか喋らない治療術師のせれたんことセレスが範囲治癒の詠唱に入ると同時に、それは現れた。
「カルマ様に全部持ってかれる前に我等の武を示せ!!!」
「「「「ウオォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」
地響きと言わんばかりの雄叫びと咆哮と共に現れたのは200はゆうに越える数の多種多様の槍を構えたゴブリンジェネラルの群れと、それを率いるのは丸太のような巨大で長い腕をぶら下げたマダラ模様のゴブリンの変異種。
その巨人とも言える変異種が槍でセレスの体を突き刺すと同時にセレスの体を雑巾のように引き絞った。
だが、幸か不幸か変異種のゴブリンの攻撃力が神格化したセレスの防御力に僅かに劣ってしまったのだ。 見るも無惨な姿に変わり果てたセレスは消滅出来ずに何度も槍で突き刺され続ける。 その様子に耐え切れなくなったのは侍のジョブを持つ竜刃だ。
「う、うわぁぁぁ!!!セレスから離れろぉぉ!!!」
その直後、四尺四寸の大太刀を振り上げスキル発動をする竜刃の真上から赤く巨大な塊が降り注いだ。
「レッドキングにゴブリンが乗ってるだと???」
恐怖で足を動かす事すら叶わなくなった俺達は一つに固まり、ただ震える事しか出来なかった。 竜刃はレッドキングの群れが振り下ろす拳に反撃の隙を与えられず頭を殴り潰され消滅する事を許されずにただ地に屈する。 こうなれば即死して肉片となった後に光となって消えた丸太ぺにおが幸せだったとすら思える。
そして……悲劇はそれだけではなかった。
「姐さぁぁん!!助太刀っすぅーって全然余裕??」
「こらスーシェン!!緊張感持て!!」
天を穿つような角を額に生やしたゴブリンキングの亜種が二匹現れたのだ……。
「こ、こんなのおかしいよ。ゴブリンの討伐なんて…生易しいもんじゃない!!」
マキちゃんの叫びは間違って無かった。 こんなのおかしいよ。 でも、俺達の残された時間が僅かだと言う事は目に見えてわかっていた。 丸太ぺにお氏が死に、続いてセレスがやっと逝った、竜刃も苦痛に顔を歪めながら消滅した。 文字通り嬲り殺される様を自分の番になるまで待つだけの屠殺場の豚に成り下がった俺達の中で唯一の殲滅魔法術師のアニーが震える足をおさえて立ち上がった。
「やめろ!アニー!座れ!座るんだ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぉ!!!」
『壊滅の隕石』
命を犠牲にする殲滅魔法をアニーが唱えると遥か上空より視界を埋め尽くす程の隕石が降り注ぐ。 逃げる隙が出来るかと喜びも束の間、紫電でその身を構成する巨大な東洋の龍がその隕石全てを喰らい尽くす。
「あっれぇー?カルマちゃん、生け捕りにしろって聞こえたよね?」
俺が意識を失う前に見たのは白銀の体に禍々しい8本の巨大な角を携えたレイドボス神獣雷牙に跨った黒いローブを着た少年だった。
まぁ、わけあって数年前からジェイルブレイカーに入り浸ってる所謂廃人と言われる部類の人種なんだが…それは敢えて触れない方向で頼む。
例によってログアウト不可能となりゲーム世界に閉じ込められちまったようだが、普段と何も変わりは無いので兼々良好だ。 そして何より俺含む男5女5と言ったリアルでは天変地異でも起きない限り再現不可であろう極限の幸せを噛み締めている爆破されかねないギルドを楽しく営んでいるのだが、こんな半分デスゲーム状態に陥った所で活動内容はなんら変わらない。
攻略攻略攻略攻略だ。
常に最前線最前列!! 掲示板は俺達にヘルプを求める専用の板まである。 そして何時の間にか神格化してレベル30以上と言う意味のわからない条件を満たさなければギルドに加入させないと言う条約まで出来ちまった。
だが、それも悪くない。 仰々と名を連ねる大手ギルドや大手クランにたった10人で肩を並べれるのだ。 自慢になるがPvPの会場に行った日にゃあ割れんばかりの歓声が響いたりする。
そんな俺達は、Chapterクエストをこなす為に新たに追加されたマップのアウリファナンティ神域の踏破に来ている。
「写楽ぅ、こんな上位種ばっかりの森でゴブリン討伐とか運営が狂ったとしか思えなくない?」
「確かにな…でもマキちゃん!ゴブリンと言っても新種なのかもしれないぞ?ほら、だいぶ前に行ったバカラ諸島の角兎の亜種とかも極悪だったじゃねぇか」
「あはは!!懐かしいね!!討伐ごとに武器耐久度1減る奴!トキタサンがいなかったら終わってたよね!」
「あれは…俺も…辛かった…討伐の…記憶が…無い…」
「それはそうよね。だってトッキーずっと修復してたもの」
「えーそんなのあったっけぇ?あのクリスタルみたいなウサギ?」
「覚えてんじゃねぇかよ、わざとらしいなコムギ」
和気藹々と魔物を狩りながら森を進んでいる時に事件は起きた。
雷鳴にも似た爆音が響いたと同時に迫り来る一条の光に轢かれた。 体験した事などモチロン無いが猛スピードで走る大型バイクに撥ねられたらこんな衝撃を受けるのでは無いだろうか?
メンバー全員が弾き飛ばされ痛みに顔を歪めていると高らかに声が響いた。
「ほう、今ので死なぬとは中々骨のある奴らよのぉ!!」
ゆっくりと顔を上げた先には信じられない光景が目に飛び込んできた。 武士然とした物言いをする声の主はプレイヤーキラーと称されるバグモンスター黒牙豹に跨りランスを構える少女だったのだ。 金色に輝く腰まで伸びた頭髪にサファイアのような美しい赤い瞳、そして小さく光るドヤ顔の八重歯。
「か、かわいい……」
「そんな事言ってる場合かよギルマス!!」
「っ、痛つつつ、今回のアップデート絶対的にこの痛覚が失敗よね」
「にしても黒牙豹が来たって事は、クエストクリア条件を整えてない可能性が高い。」
「じゃあバカ正直にあの竜の群れに飛び込めってのかよ?そうなりゃレイドでも組まなきゃ無理だろうよ?」
思い思いに話していると、美しいお嬢さんの顔がヒクヒクと引き攣りだした。 しかしなんであんなヘルメットを装着しているんだ?
「きさまら、戦の最中に私語に興じるなど武人の風上にも置けぬ!!我が槍の錆にしてくれるわ」
ランスを振り下ろすと少女…いや、性格には幼女の体から赤い禍々しい魔素が流れ出す。
「マズイ!!なんか来るぞ!!コムギ!!障壁を!!」
「もう用意してるよって」
コムギの体が白い光に包まれるのを確認し安堵する。 絶対守護の障壁は、たった一度だが、如何なる攻撃でも防ぐ効果を持つ。 あの幼女がいかな大技を仕掛けようが一度ははねのける事が出来るのだ。
『絶対守護の障壁』
「よし、仕掛けるぞ!!気を引き締めろ!!!」
メンバー全員が各々にスキル発動をし、ストック状態に保持した時何処からか声が響いた。
「カルマ様の補助をする。一斉掃射」
その声と同時に降り注ぐ矢。 ゴブリンアーチャー特有の石矢だ。ダメージは少ない、当たっても針で軽く突つかれた程度だ。
だが………。
「避けろぉぉぉぉ!!!!!」
悪魔のような歪んだ笑みを浮かべる幼女が赤く染まったランスを突き抜くと配給の丸太ぺにおが木っ端微塵に弾け飛んだ。
「か、勝てないよ写楽…マルペニさんのジョブ重戦士だよ??一番硬いんだよ??」
「わかってる、逃げる準備をしよう」
ランスを振り血を払い落とすと幼女は更にニヘラと嗤う。
「楽に死なせてしもうたな、申し訳ない事をした。せめてもの慈悲だ、次は四肢をもぎ取り嬲り殺してくれる」
まるで氷点下の極寒に裸で投げ出された気分だった。 いくら生き返るとは言え、あんな死に方は見た事が無い。
「一先ず回復を!!」
あまりの事態に普段小さな声でしか喋らない治療術師のせれたんことセレスが範囲治癒の詠唱に入ると同時に、それは現れた。
「カルマ様に全部持ってかれる前に我等の武を示せ!!!」
「「「「ウオォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」
地響きと言わんばかりの雄叫びと咆哮と共に現れたのは200はゆうに越える数の多種多様の槍を構えたゴブリンジェネラルの群れと、それを率いるのは丸太のような巨大で長い腕をぶら下げたマダラ模様のゴブリンの変異種。
その巨人とも言える変異種が槍でセレスの体を突き刺すと同時にセレスの体を雑巾のように引き絞った。
だが、幸か不幸か変異種のゴブリンの攻撃力が神格化したセレスの防御力に僅かに劣ってしまったのだ。 見るも無惨な姿に変わり果てたセレスは消滅出来ずに何度も槍で突き刺され続ける。 その様子に耐え切れなくなったのは侍のジョブを持つ竜刃だ。
「う、うわぁぁぁ!!!セレスから離れろぉぉ!!!」
その直後、四尺四寸の大太刀を振り上げスキル発動をする竜刃の真上から赤く巨大な塊が降り注いだ。
「レッドキングにゴブリンが乗ってるだと???」
恐怖で足を動かす事すら叶わなくなった俺達は一つに固まり、ただ震える事しか出来なかった。 竜刃はレッドキングの群れが振り下ろす拳に反撃の隙を与えられず頭を殴り潰され消滅する事を許されずにただ地に屈する。 こうなれば即死して肉片となった後に光となって消えた丸太ぺにおが幸せだったとすら思える。
そして……悲劇はそれだけではなかった。
「姐さぁぁん!!助太刀っすぅーって全然余裕??」
「こらスーシェン!!緊張感持て!!」
天を穿つような角を額に生やしたゴブリンキングの亜種が二匹現れたのだ……。
「こ、こんなのおかしいよ。ゴブリンの討伐なんて…生易しいもんじゃない!!」
マキちゃんの叫びは間違って無かった。 こんなのおかしいよ。 でも、俺達の残された時間が僅かだと言う事は目に見えてわかっていた。 丸太ぺにお氏が死に、続いてセレスがやっと逝った、竜刃も苦痛に顔を歪めながら消滅した。 文字通り嬲り殺される様を自分の番になるまで待つだけの屠殺場の豚に成り下がった俺達の中で唯一の殲滅魔法術師のアニーが震える足をおさえて立ち上がった。
「やめろ!アニー!座れ!座るんだ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぉ!!!」
『壊滅の隕石』
命を犠牲にする殲滅魔法をアニーが唱えると遥か上空より視界を埋め尽くす程の隕石が降り注ぐ。 逃げる隙が出来るかと喜びも束の間、紫電でその身を構成する巨大な東洋の龍がその隕石全てを喰らい尽くす。
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