異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第四十二話

  しゃっす、サカエだよん。
 賭けの内容はたかだか知れた内容だった。
 それは単純にルーレットで持ち点を何点まで増やせるかの勝負。
 当然店側と相手はグルだ。
 ロイが駆け引きで負けようとしていたのは分かるが、これは流石に分が悪すぎる、だからこその交渉だ。
 こちらが提示したBETは金翼、そして求めたのはただの宿泊権利、天秤は傾いて仕方が無い、なれば多少こちらにも言い分が持てるだろう。
「そのルールで構わないが、他の客も宅についてる状態でやらないか?」
「イカサマの心配をされてるのですか?こちらは構いませんよ」
「交渉成立だな、俺とそいつの勝負の倍率はどうなってる?」
「ブックだと、ウチのプロが0.7倍、あなた様は4.0倍のレートで大分偏っていますね」
「そうか、じゃあ人気者の対戦相手に敬意を表してボーナスだ、俺は自分自身に50枚の旧金貨を賭けよう、お前達は紙切れで五億分の金貨を手に入れる事が出来る、どうだ、悪くないだろ?」
「いいのですかな?」
「一向に構わん」
 精々2倍程度かと思ったが4倍もついてるなら俺も賭けておいた方がいいだろう、五億でもレートが変動しないって事は相当相手の賭博師に賭けてる奴が多いようだしな。
 気変わりがしないうちにと若干焦り気味に舞台は整えられていく、外は既に明るくなり始めた明け方、この騒々しい中でリンダはバカラ台で大股を開いて寝ているのは無視しよう。
「では準備が整いました」
 たったの100チップ10枚、10万円分のチップをいかに増やせるかの勝負、そして回数は10回だけ。
 店側で組まれていては絶望的だ、だが、こちらもただで負けるつもりはない。
『賭博師セット・リアクト解放』
 空席に腰を賭けたロイが俺の姿を見てほうと感嘆の声をもらす。
「それが賭博師の神の力か」
「いや、これはただの解放だ。お前達が無理をしても辿りつくのはここまで、G.Gはスキルなんだ、まぁ、見てろ発動してやる」
 リアクトの解放と共に会場は割れんばかりの歓声が響き渡る。
『おぉっとなんと言う事でしょう!新顔のサカエ選手が人生で一度だけ辿りつけると言う賭博師の神の気を纏っている!!この人は当ベラジオスで本日JACPOTを引いた張本人、だとすれば彼は賭博師人生を捨ててこの勝負に挑んでいる!!』
 ベラジオス運営が急遽緊急会議を始めるが既にルーレットは回り始めている。
 相手の男は手堅く赤に100チップを置いて様子見のつもりだったようだがチップを下げようとする。
 逃がすはずがない。
 本来配列がどうのこうのと御託は並べられるが、このスキルに関しては関係が無い。
 ゲーム時代、街中ではリアクトの解放は制限されていたが、現実となってしまえば匙加減だ、他のプレイヤーはどうか知らないが俺は黒眼龍のおかげなんだか知らないが自分の行動に世界から制限をかけられた事は無い、そうなれば。
『賭博師の神発動、黒の17に全て賭ける』
 このスキルを持ってしてギャンブルをするのは面白みに欠ける。
 何故なら対戦相手のパッとしない男は様子見で赤に賭けた、なれば店側も赤にするのは当然だ、だがこのスキルを発動してしまえば、俺は世界とグルでイカサマができるわけだ。
『IN!!17のブラック!!』
 マイクで音量が響き渡る。
「長引かせろ!職能の解放は長く持たん!!」
 遠くで話す声は全てこちらに聞こえるがその程度の目論見では俺を止める事は出来ない。
 何故ならリアクトの解放が終わっても既に俺の勝ちは決定したのだから。
「勝負をする前に言っておくが、後9回は俺はそいつと全く同じ場所に同じ額面のBETしかしないぞ?やる意味はあるか?」
「参りました」
 パッとしない男は勝負を放置した。
「俺が相手の時点でお前らは詰んでんだよ、ほら金持って来いよ」
 俺の賭けた配当20億の手形と、チビロイに賭けさせた8億の配当、そしてロイが胸ポケットから出した紙切れには5千万のBET、つまりは2億の配当がつく。
「お前いつ賭けてたんだ?」
「元々持ってた持ち金全部とチビが持ってた700万借りてな」
「ぬかりねぇな」
「確実に勝てる勝負は捨てねぇよ」
 これは同時に30億の損失と上客への信用を失う形となり、数々の不正が浮き彫りになりベラジオスホテルは後に倒産するがそれはまた別の話しだ。
「じゃあ宿も用意したし高校生拾いにいくかぁ、で、チビ。どうだった?」
 俺の横をフラフラと眠気に耐えながら歩くチビロイに問うとチビロイは何度も頷く。
「サカエのあんちゃんの話、俺のるよ!」
 爆睡するリンダを肩に抱えながらロイは疑問を投げつける。
「なんの話してんだ?」
「お前は関係ねーよ、俺とチビの話だ」
「ふーん、ならいいけど」
 何かには気付いてるだろうが、コッチで根回しをしてしまえばどってことはないだろう。
「話は変わるがなんで他の客がいる席を選んだんだ?」
「え?だって職能開放して逃げられたらいやじゃん、それだけだよ」
「それだけか?」
「いや、ちょっと駆け引きしようかとも思ったけど飽きたのが本音だ。にしてもあいつらいねぇな、どっかに泊まれたのか?」
「確かにあの騒がしいガキ共が群れてたらわかりそうだがな」
 しばらく探し歩いていると涙で目を腫らせたシクラの姿が目に飛び込んでくる。
 必死で俺達を探したんだろう、足元を見ればわかる、履いてたサンダルは無く、血だらけの足が目に入る。
「何があった?」
 俺を俺だと理解するとシクラは大粒の涙を浮かべて胸に飛び込んでくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、みんな連れてかれちゃった。ロッサのミクって人に」
 まじか…まだ初日だぞ。





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