異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第三十七話

 
「すげぇ」
 表現力が乏しすぎて申し訳ないが正直すげぇとしか言いようが無い。
 上空から圧巻の姿を見せたハータル大陸オオエドは地上から見ると更に圧巻の姿を見せつけてくる。
 近未来和風ラスベガスとでも言うのか、所々に和のテイストが組み込まれながらも洋風でもある不思議な大都会。
 和洋折衷と言えば簡単だが、とてもそんな一言では終わらない街並みが果てなく続く。
 しばらく歩くと池袋の西口公園のまわりをカジノで埋め尽くしたような広場についた。
 そこでは無一文になった気品のある叔父様的な男達が裸で広場の噴水の前でタバコや石を賭けながらトランプをさわったり、サイコロを転がしたりしている。
 簡易にテーブルが並べられ路上でのギャンブル、そして中学生ぐらいの子供がタバコ3カートンを換金して次は背の低いカジノに入って行く、そして数分後に数枚の札と瓶ビールを仲間と運びながら外に出て、広場の者たちへ配って行く。
 その様子を見ていると少年は瓶ビールを俺に差し出してきた。
「あんちゃんしけたツラしてんな?負けたんかよ?ほらやるよ」
「ありがとう、もらうよ」
「へん、ツキが逃げちまうぜ?負けてても二カッとしとかねぇとよ?」
 小さな体でビールを喉に流し込む茶髪の少年の姿に誰かが重なるが、それを無視して俺もビールを流し込んだ。
「今日の俺はついてるからな、あんちゃんのツキが戻ったかもしんねぇぜ?」
 チビの手下が俺の飲み干した空き瓶を受け取るとチビは更に酒を配り歩く。
 施しを受けたならお返しをしなきゃならんだろう。
 俺はガキの肩を掴んで振り向き様に金貨を一枚手渡した。
「酒代だ、ツキがいいならデカイ勝負してこいよ、な?」
 突然の事に驚きながらもチビは少し震えながら金貨を握りしめ小さく頷いた。
「やっぱ今日俺ついてるな」
 ガキはポケットからグリースを取り出し頭をオールバックに流すと噴水で手を洗った。
 そして鼈甲柄のメガネをかけるとニカッと笑い一際大きなベラジオスホテルの前に立って深呼吸を始める。
 つい面白くて遠目においかけてきてしまったが、ああしておけば多少は大人っぽく見えるから不思議である。
 受付で金貨を転がすとチップを箱で受け取りフロアへ消えていく。
 とりあえず俺も替えておくことにすしよう。
 チップを箱で受け取りフロアへ入ると馬鹿でかいカジノが広がっていた。
 さっと見渡してガキを探すが姿が見えないので適当に歩いてみる。
 ルーレットにブラックジャック、バカラにスロット、それに見たコトの無い遊戯台も沢山ある中を人混みを分けて進んでいく。
 そして見つけた。
 バカラのテーブルで必死に大人ぶってるガキが見える位置のスロットに座りながら適当に回す。
 9リールの機種だが、こんな物は当たらないと相場が決まってる。
 こんな物よりあのガキのツキと言うものがいかがなもんか見てみたいのだ。
 だが、その期待はすぐに消えた。 ガキの賭け方を見てガッカリだったのだ。
 バカラでプレイヤーに倍付けで賭けていくだけ、そして結果はバンカーが続く。
 そしてラストにプレイヤーで1万勝ち、繰り返し。
 しょっぱいやり方だ。
 一発勝負でもするのかと思ったが期待外れだった。
 だが俺の台が金貨三枚分のチップを飲み込んだ所で状況は変わった。
 チビのチップは約金貨2枚分、日本円で10万は勝ってる計算だ。 順調に増え続けていた所で降りてすぐに隣のルーレットで突如6と1に半分ずつ全額賭けたのだ。
 俺は混乱した。
 どう見てもヤケを起こしたようにしか見えないバカラであんな賭け方をするならルーレットなら赤黒だろ?
 何故そんな事をするのだ?
 魔導投影機で映し出されるビジョンを見て生唾を飲み込むと同時に適当に回し続けていた俺の台から爆音が響いた。
「はい?」
 画面に9つ7が揃い虹色のパトランプがグルグルと周りだしコインがとめどなく溢れる。
 混乱している間にスタッフ達が樽を運んできてはコインを入れ続けるがそれでも只管に溢れ出す。
「壊れた?」
「はい!JACPOTですよ!今までここに並ぶ機種が吸い上げたコインが放出されます!!こちらも見れて幸せですよ!JACPOTを出したカジノは流行りますからね!!」
 コインをせっせと拾い上げるスタッフが嬉しそうに語るが俺はひたすらに恥ずかしい。
 カジノ中の注目が俺に集まっているのだ、しかもフロアのビジョン全てに俺が映し出されている。
「最悪だ」
 そして思い出したようにガキの方を見てみると、大変な事になっていた。
 ガキのテーブルに100チップ、言わば一万円チップが山積みになっているのだ。
 ざっと見ても60枚はある、何が起きたかわからない。
 だが、BETが開始されて理解した。
 ガキは20枚の100チップをバラバラに賭けて、36枚のバックを起こし毎ゲーム16枚の利益を出し続けていたのだ。
 その勝負に勝つとガキはスタッフにチップを運ばせ俺の横に立ちニカっと笑う。
「馬鹿ツキしてんじゃん」
「お前もな」
 そしてガキは俺の肩を引くと耳打ちをしてくる。
『頼む、これで720万ある。20万あげるから換金してくんない?ここ500万越えると身分証確認とか言ってくるんだよね』
 お安い御用だ、10万あげて数時間で、20万。
 素晴らしい暴利、喜んで換金してやろう。
「お安い御用だ」
「さんきゅ、じゃあ、俺がセカンドいれてやんよ!」
 コインが出続ける状態でチビがレバーを突然叩くともう一度7が9つ揃う。
「ぎゃははは!!ほんとに揃いやがった!!」
 これは後々聞いて知るのだが、払い出しが終わるか倍額になるかの一か八かのレバーオンらしい。
 俺は意味が分からずに真似をしてレバーを叩くと悲鳴があがるがもう一度7が9つ揃う。
「すげー!!あんちゃんすげーよ!!もう触っちゃダメだぞ!!サード入れる馬鹿初めて見たよ!!」
「なんだこれ、なんか意味あんのか?」
「上見てみろよ!JACPOTの数字!」
 見上げるとそこにはデジタル風な数字で確かに110万から減っていたカウンターが400万になっている。
「やべーなー!二億だぜ?おごってくれよ」
「は?そんなあるのか?」
「はい?これ一枚50だぜ!440万枚で2億2千万じゃね?」
「おひょ、おひょひょ、おひょひょーい!!!!」
 数時間かけて放出されたコインは途中で店舗の限界を迎え、数回の換金の後に全て出し終えた。
「10回まわせよ、絶対ターボ入るから!」
 ガキの言葉にめんどくさいながらにも回してみるとターボと言うモードに入り、オールフルーツが揃いまくりコインが出続ける。
「もういや」
 素直にもう打ちたくなかった。
「しかたねぇな、変われよ」
 そこから5千枚程出たが何も嬉しくなかった。
 ただ、目がチカチカしてつらいだけだった。
 勝ち金でこのベラジオスホテルのロイヤルスウィートの部屋を取らせてくれたので宿の心配は無いが、これだけ勝ったのだから何かをして遊びたい。
 こんなクソガキ連れ歩くのは辛いがこいつのおかげで稼げた金だからな、奢ってやるのも悪くない。
「ほらよ、20万」
 紙幣で20万円を渡され少年は700万の大金を腹とベルトの間にしまいこんだ。
「別にいらんが、いいのか?」
「あたりめぇだろ?全部取られても文句いえねぇぐらいなんだから!まぁ、あんちゃんが負けてたら半分あげたけどな!奢ってもらうためのBETだよ!」
 ガキの癖によくまわる口だ。
「お前親は?」
「ん?母ちゃんはこの時間ホテルの一階で客引きしてるよ、娼婦だからな!」
「そうか…」
「あっ!お前今可哀想とか思っただろ?」
「いや、思ってないぞ?」
「ふーん、ならいいけどな。俺の母ちゃんは娼婦だけどあのロッサで立てる権利持ってんだぜ?って事はオオエドで上から100人の美人って、わけだ!自慢の母ちゃんだよ」
「ほーう、じゃあお前の母ちゃんでも抱きに行くか!って冗談だよ!睨むな睨むな!!」
 ジト目はやめて!つらいわ!!
「熟専かよ、引くわ」
「引くなボケ!お前の母ちゃん何歳だよ!!」
「35だよ!!」
「わけぇじゃねぇか!!つかチビお前何歳なんだよ!!」
「チビじゃねぇし!20歳だよ!!」
「は?じゃあなんで身分証いるとか言ってたんだよ」
「あー!!もーうっせーな!客との子供だから親父がわからねーとつくれねーんだよ!ハータルはよ!!」
 プンプンと怒りながら踵を返して先へ進むガキの背中に違和感を覚えるが一番大事な事を聞いていなかったコトに気付いた。
「おいガキ、お前名前は?」
 するとガキは足を止め振り返り俺に指をさす。
「ガキでもチビでもねぇ、俺はロイだ!!覚えとけ」
 そして同時に感じていた違和感の正体に気付く。
 この瞬間からハータルでの歯車は回り始めた。

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