異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題
第三十六話
驚きが隠せないのだがどうすればいいんだ。
何に驚いているのかって?
それは一つしか無いだろう。
金翼の戦闘機のポテンシャルに驚いているのだ。
そりゃ始めはちゃんと伝えようと思っていたさ、ロイがネックを外して金色の羽の細工をはめ込んだ瞬間に甲高い魔法音が響いて魔導エンジンに火が入った瞬間の感動だとか、ロイの地下格納庫の壁が山肌ごと開くギミックとかカッケー!すげー!はいっぱいあったのだがな、ちょっと凄すぎてぶっ飛んだ。
これは飛行機とかの次元じゃなく、高精度の転移装置の類だ。
両翼に二発、機体に前後二発搭載された不可視のレーザーで360度カバーしながら障害物の無い安全な所への転移を繰り返すが搭乗しているこちらへの負荷が一切感じられないのだ。
タッチパネル式のレーダーに転移可能領域が映し出されタッチすると安全域へ転移、進行方向へ指をスライドさせると数回に分け転移を続ける。
正直舐めてました、すいません。
こんな馬鹿でかい機体で戦闘機とかふざけんな、バカなの?死ぬのー?なんて思っていたが素直に謝ろう。
無敵でしたね、ごめんなさい。
「このスペックでも7日かかるのか?」
思わずロイに聞いてしまった。 この速度での移動で7日なんて天文学的な距離だろう? 星空間転移をするわけじゃないんだからいくらなんでも7日は盛りすぎだろう。
「いや、正直昔に乗った時はティアードロップの団員全員で昼夜休まず魔力を注ぎ続けて画面にリザーブモードが点灯し続ける状態でのフライトだった、空を飛ぶだけですげぇなんて思ってた自分が情けないよ」
空からの景色を見下ろすロイ自身が驚きを隠せないと言うように首を左右に振る。
無理もないだろう、大海のような魔力量を保持していると言われる俺がふらつく程に魔力を充填させたのだ、それでやっと本来のポテンシャルを発揮するような大食らいのこいつを命からがらで飛ばしながら帰れた方が逆に凄いコトだと今ならわかる。
「こいつがあれば世界は狭いかもしれないな」
「あぁ、さすがハータルの頂きとすら言われてたわけだな、この性能なら納得だ」
金翼の戦闘機について熱く語らっているとほぼBGMと化していたガキどもの笑い声が絶叫に変わった。
『く、くるな!くるな!ぎゃあぁあ!!!!!』
幾重にも重なる恐怖の叫び声に俺とロイは目が合ったと同時に頷き格納庫へ走った。
鉄扉を開くと目の前にはシクラと共に紅茶を飲みながら笑う女生徒諸君の女子会が開かれている。
「サカエさん!どうしたんですか?」
「シクラ、叫び声が聞こえなかったか?」
早口に捲し立てるとシクラはクスッと笑いながら後方へ指を指した。
「心配はないですよっ」
そこには地獄絵図が広がっていた。
死屍累々の涙を流して気を失った男子生徒達、そして逃げ惑う数人の生き残り。
子供達を追いかける影は純白の布地に小さな赤いリボンがついたランジェリー一枚の姿のモヒカン。
その背筋には鬼の顔が覗き、鬼神が鬼神たらしめる闘気を纏う。
倉庫の角に追いやられた見覚えのある少年、アルストの親友であるシャンスが頭を掴まれる。
その様子に俺とロイは助けに入るべきかと足に力が入る。
あまりの恐怖に目の光を失った金髪碧眼のアルストの親友は涙を流しながら此方に視線を送り口元を動かした。
タ、ス、ケ、テ、と。
それと同時に俺とロイは地を蹴った。
「んふぅ!シャンスちゃんいただきます」
「ぎゃああああああああ!!!」
「シャンスー!!!!」
親友のアルストは2階のキャットウォークから身を乗り出し手を伸ばし涙を流す。
手遅れだった。
俺たちが駆けつける頃にはシャンスはパンツ越しにケツをなすりつけられ鼻を嬲られ意識を手放していた。
「あら、あんた達2人もご褒美欲しいの?」
俺とロイは目の前の異形の鬼の問いにただ首を左右に振る事しか出来ない。
「遠慮しなくていいのよぉん!旅行なんだからアバンチュールが必要でしょおん!!」
必死で必死で必死で逃げた記憶しか残っていない。
ここが異世界なのだと初めて恨んだ。
あんなの外にいたらダメだ。
極刑に処するべきだ。
アルストがやられたあたりでリンダが落ち着きを取り戻した覚えはあるのだが、本気のオカマにはたとえヒグマであろうと逃げ出すだろうと言う絶対的な恐怖を叩きつけられた。
「なによ!!高校生を合法に襲える状況下で指咥えて待ってる奴なんていないわよ!」
名言か迷言の境目などは分からないが、この獣は大一級危険人物だと言う事はよくわかった。
「なんでそんな目で見るのよ!!DKよDK!男子校生のディックをキリング!!素敵じゃない!!」
「どうでもいいから服着ろや!!」
あいたーとデコを叩くリンダを放置しながらコックピットに戻るとそこには異様な光景が広がっていた。
いち早くコックピットに戻っていたロイが笑う。
「どうだ?すげーだろ、これがハータルだぜ?」
色とりどりの魔法光を放つ高層ビルが果てなく立ち並び彩られた街。
その全てに一際派手なホテルの名前が刻まれた看板が夜の街を照らす。
確かにERO時代もハータルはラスベガスをイメージして作られていた、だが、これはその規模を250年間進化させ続けたからこその圧巻の光景だ。
夜にも関わらず物資を運ぶ騎竜が飛び交い大音量の音楽が鳴り響く。
国境線無く広がる欲望の大陸。
「すげぇ」
「サカエ、オオエドの郊外なら着陸出来そうだがどうする?」
「めんどくせぇから飛び降りようぜ、魔法学校の生徒なら飛ぶぐらいできるだろ?」
「俺は飛べないぞ?」
「心配すんな、飛べねぇ奴は俺が引っ張ってやる、てなわけで投下!ポチッとな!」
全員が待機している倉庫はこのボタン一つで床が無くなる仕組みなのだ。
本来は巨大な爆弾を載せておく場所を無理やり倉庫にしたような所だからな、あいつらもまさか床が無くなるとは思わなかっただろう。
『人形師セット・繰糸』
糸田の金糸までとはいかないが、あいつを殺してから妙に人形師の調子がいい。
青い魔法光の糸にすると、ほぼ無限に糸を伸ばせるようになった。
あいつの職能の核を潰したからか、黒眼龍が関係しているのか細かい事は分からないが、便利に変わりは無いので深くは考えないようにしている。
リンダ以外全員との繋がりを感じると同時に指令を送る。
『荷物は後で渡すから心配すんな、とりあえず飛行魔法や風魔法、はたまたなんらかの方法で着地できる奴は今から術式を起こせ、糸を外してやる、怖い奴はじっとしてろ』
すると流石魔法学校の生徒、大半が管制下から外れた。
アルスト、シクラ、シャンスは当たり前のようにぶら下がっているのはいいのだが、俺が助けていないリンダが自らの気を開放して普通に飛んでいる事に関しては納得いかない。
色々世話になってるから直接殺すワケにはいかないし、オカマ補正で俺が何しても転がされるので事故死ならありかと思ったのだがな。
やはりあいつはしぶとい。
ひそかに抹消を誓いながら生徒達を地上近くまで落としていく。
相当なバンジーだが、死にはしないからいいだろう。
「じゃあ後でな」
「あぁ、後でな」
ロイが言葉を残し飛び降りると何者かが横からロイを攫っていった。
いや、何者かってリンダなんだが。
縦に落ちていたロイが真横に飛び去りながら俺に視線を送り続けていたが俺は目を背けた。
「許せロイ……」
俺は知っていたのだ。 金翼の腹で息を殺しながら俺達を待ち構えるリンダの存在を。
俺のオオエド楽しみたいプランに流石にリンダやガキ達は障害でしか無い、そしてロイと居ても面倒ごとが起きそうだ。
ならばシクラとアルストにガキ押し付けて、ロイにオカマ押し付けたらどうなる?
「あら不思議、俺自由ってワケだな」
最高の気分でアイテムボックスに金翼をしまい込み空中に飛び出ると悪夢が俺を襲った。
脱力しきった干物のロイを脇腹に抱えたリンダが目の前に突っ込んで来たのだ。
俺は素直に思ったね。
「あ、死んだ」
俺も一瞬で干物になり生を諦めているとリンダの気が切れたのか、ほぼ不意打ちに高層ビルの中腹に突っ込んだ。
「おい!」
「着陸できたんだからいいじゃない」
悲鳴と叫び声と破裂音と粉砕音、普段聞く事が少ない不快な音の中転がり続け、空気を読んだのかロイを抱きかかえて守るリンダが俺を背中で轢いて行った。
「もう、なにこれ」
大破したフロアでは立食パーティーが催されていた、片隅にはピクリともしないリンダとロイの姿。
うん、今しかないね。
「あ、お邪魔しましたー」
「…?ちょ、こら、待て、貴様!」
警備が我に返った頃には俺はビルから飛び降りてやった。
「おっけいおっけい、結果オーライだわ」
こうして一行は無事にハータルオオエドに到着したのであった、なーんてな。
「あそぶぞこらぁぁ!!!」
テンション上がってきた。
何に驚いているのかって?
それは一つしか無いだろう。
金翼の戦闘機のポテンシャルに驚いているのだ。
そりゃ始めはちゃんと伝えようと思っていたさ、ロイがネックを外して金色の羽の細工をはめ込んだ瞬間に甲高い魔法音が響いて魔導エンジンに火が入った瞬間の感動だとか、ロイの地下格納庫の壁が山肌ごと開くギミックとかカッケー!すげー!はいっぱいあったのだがな、ちょっと凄すぎてぶっ飛んだ。
これは飛行機とかの次元じゃなく、高精度の転移装置の類だ。
両翼に二発、機体に前後二発搭載された不可視のレーザーで360度カバーしながら障害物の無い安全な所への転移を繰り返すが搭乗しているこちらへの負荷が一切感じられないのだ。
タッチパネル式のレーダーに転移可能領域が映し出されタッチすると安全域へ転移、進行方向へ指をスライドさせると数回に分け転移を続ける。
正直舐めてました、すいません。
こんな馬鹿でかい機体で戦闘機とかふざけんな、バカなの?死ぬのー?なんて思っていたが素直に謝ろう。
無敵でしたね、ごめんなさい。
「このスペックでも7日かかるのか?」
思わずロイに聞いてしまった。 この速度での移動で7日なんて天文学的な距離だろう? 星空間転移をするわけじゃないんだからいくらなんでも7日は盛りすぎだろう。
「いや、正直昔に乗った時はティアードロップの団員全員で昼夜休まず魔力を注ぎ続けて画面にリザーブモードが点灯し続ける状態でのフライトだった、空を飛ぶだけですげぇなんて思ってた自分が情けないよ」
空からの景色を見下ろすロイ自身が驚きを隠せないと言うように首を左右に振る。
無理もないだろう、大海のような魔力量を保持していると言われる俺がふらつく程に魔力を充填させたのだ、それでやっと本来のポテンシャルを発揮するような大食らいのこいつを命からがらで飛ばしながら帰れた方が逆に凄いコトだと今ならわかる。
「こいつがあれば世界は狭いかもしれないな」
「あぁ、さすがハータルの頂きとすら言われてたわけだな、この性能なら納得だ」
金翼の戦闘機について熱く語らっているとほぼBGMと化していたガキどもの笑い声が絶叫に変わった。
『く、くるな!くるな!ぎゃあぁあ!!!!!』
幾重にも重なる恐怖の叫び声に俺とロイは目が合ったと同時に頷き格納庫へ走った。
鉄扉を開くと目の前にはシクラと共に紅茶を飲みながら笑う女生徒諸君の女子会が開かれている。
「サカエさん!どうしたんですか?」
「シクラ、叫び声が聞こえなかったか?」
早口に捲し立てるとシクラはクスッと笑いながら後方へ指を指した。
「心配はないですよっ」
そこには地獄絵図が広がっていた。
死屍累々の涙を流して気を失った男子生徒達、そして逃げ惑う数人の生き残り。
子供達を追いかける影は純白の布地に小さな赤いリボンがついたランジェリー一枚の姿のモヒカン。
その背筋には鬼の顔が覗き、鬼神が鬼神たらしめる闘気を纏う。
倉庫の角に追いやられた見覚えのある少年、アルストの親友であるシャンスが頭を掴まれる。
その様子に俺とロイは助けに入るべきかと足に力が入る。
あまりの恐怖に目の光を失った金髪碧眼のアルストの親友は涙を流しながら此方に視線を送り口元を動かした。
タ、ス、ケ、テ、と。
それと同時に俺とロイは地を蹴った。
「んふぅ!シャンスちゃんいただきます」
「ぎゃああああああああ!!!」
「シャンスー!!!!」
親友のアルストは2階のキャットウォークから身を乗り出し手を伸ばし涙を流す。
手遅れだった。
俺たちが駆けつける頃にはシャンスはパンツ越しにケツをなすりつけられ鼻を嬲られ意識を手放していた。
「あら、あんた達2人もご褒美欲しいの?」
俺とロイは目の前の異形の鬼の問いにただ首を左右に振る事しか出来ない。
「遠慮しなくていいのよぉん!旅行なんだからアバンチュールが必要でしょおん!!」
必死で必死で必死で逃げた記憶しか残っていない。
ここが異世界なのだと初めて恨んだ。
あんなの外にいたらダメだ。
極刑に処するべきだ。
アルストがやられたあたりでリンダが落ち着きを取り戻した覚えはあるのだが、本気のオカマにはたとえヒグマであろうと逃げ出すだろうと言う絶対的な恐怖を叩きつけられた。
「なによ!!高校生を合法に襲える状況下で指咥えて待ってる奴なんていないわよ!」
名言か迷言の境目などは分からないが、この獣は大一級危険人物だと言う事はよくわかった。
「なんでそんな目で見るのよ!!DKよDK!男子校生のディックをキリング!!素敵じゃない!!」
「どうでもいいから服着ろや!!」
あいたーとデコを叩くリンダを放置しながらコックピットに戻るとそこには異様な光景が広がっていた。
いち早くコックピットに戻っていたロイが笑う。
「どうだ?すげーだろ、これがハータルだぜ?」
色とりどりの魔法光を放つ高層ビルが果てなく立ち並び彩られた街。
その全てに一際派手なホテルの名前が刻まれた看板が夜の街を照らす。
確かにERO時代もハータルはラスベガスをイメージして作られていた、だが、これはその規模を250年間進化させ続けたからこその圧巻の光景だ。
夜にも関わらず物資を運ぶ騎竜が飛び交い大音量の音楽が鳴り響く。
国境線無く広がる欲望の大陸。
「すげぇ」
「サカエ、オオエドの郊外なら着陸出来そうだがどうする?」
「めんどくせぇから飛び降りようぜ、魔法学校の生徒なら飛ぶぐらいできるだろ?」
「俺は飛べないぞ?」
「心配すんな、飛べねぇ奴は俺が引っ張ってやる、てなわけで投下!ポチッとな!」
全員が待機している倉庫はこのボタン一つで床が無くなる仕組みなのだ。
本来は巨大な爆弾を載せておく場所を無理やり倉庫にしたような所だからな、あいつらもまさか床が無くなるとは思わなかっただろう。
『人形師セット・繰糸』
糸田の金糸までとはいかないが、あいつを殺してから妙に人形師の調子がいい。
青い魔法光の糸にすると、ほぼ無限に糸を伸ばせるようになった。
あいつの職能の核を潰したからか、黒眼龍が関係しているのか細かい事は分からないが、便利に変わりは無いので深くは考えないようにしている。
リンダ以外全員との繋がりを感じると同時に指令を送る。
『荷物は後で渡すから心配すんな、とりあえず飛行魔法や風魔法、はたまたなんらかの方法で着地できる奴は今から術式を起こせ、糸を外してやる、怖い奴はじっとしてろ』
すると流石魔法学校の生徒、大半が管制下から外れた。
アルスト、シクラ、シャンスは当たり前のようにぶら下がっているのはいいのだが、俺が助けていないリンダが自らの気を開放して普通に飛んでいる事に関しては納得いかない。
色々世話になってるから直接殺すワケにはいかないし、オカマ補正で俺が何しても転がされるので事故死ならありかと思ったのだがな。
やはりあいつはしぶとい。
ひそかに抹消を誓いながら生徒達を地上近くまで落としていく。
相当なバンジーだが、死にはしないからいいだろう。
「じゃあ後でな」
「あぁ、後でな」
ロイが言葉を残し飛び降りると何者かが横からロイを攫っていった。
いや、何者かってリンダなんだが。
縦に落ちていたロイが真横に飛び去りながら俺に視線を送り続けていたが俺は目を背けた。
「許せロイ……」
俺は知っていたのだ。 金翼の腹で息を殺しながら俺達を待ち構えるリンダの存在を。
俺のオオエド楽しみたいプランに流石にリンダやガキ達は障害でしか無い、そしてロイと居ても面倒ごとが起きそうだ。
ならばシクラとアルストにガキ押し付けて、ロイにオカマ押し付けたらどうなる?
「あら不思議、俺自由ってワケだな」
最高の気分でアイテムボックスに金翼をしまい込み空中に飛び出ると悪夢が俺を襲った。
脱力しきった干物のロイを脇腹に抱えたリンダが目の前に突っ込んで来たのだ。
俺は素直に思ったね。
「あ、死んだ」
俺も一瞬で干物になり生を諦めているとリンダの気が切れたのか、ほぼ不意打ちに高層ビルの中腹に突っ込んだ。
「おい!」
「着陸できたんだからいいじゃない」
悲鳴と叫び声と破裂音と粉砕音、普段聞く事が少ない不快な音の中転がり続け、空気を読んだのかロイを抱きかかえて守るリンダが俺を背中で轢いて行った。
「もう、なにこれ」
大破したフロアでは立食パーティーが催されていた、片隅にはピクリともしないリンダとロイの姿。
うん、今しかないね。
「あ、お邪魔しましたー」
「…?ちょ、こら、待て、貴様!」
警備が我に返った頃には俺はビルから飛び降りてやった。
「おっけいおっけい、結果オーライだわ」
こうして一行は無事にハータルオオエドに到着したのであった、なーんてな。
「あそぶぞこらぁぁ!!!」
テンション上がってきた。
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