異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第三十話

シクラやロイ達も戻って来て一緒に没収したアイテム集めが始まった。
全ては済んだが被害が大きく、やはりみんなは表情に翳りがある。
「ひどいです……ね」
「ひでぇな」
だが糸田のアイテムを拾い集めているととんでもない物が見つかった。
それは一度だけ手に入れる事ができる大筋のクエストで使用するアイテム。
チャプタークエストで太古に滅びた文明を復活させる為に、星座を守護する十二宮の神の手伝いをして褒美に貰える十二宮の黄金時計。
アイテムの行使を知る者以外全ての時を巻き戻す時計だ。
「創世の錬金釜はこれまで作れるのか」
「それ、なんですか?」
シクラが泣き面で問いかけてくるが答えに悩む。
ここはあえて力を手に入れたアルストと俺だけで戻って、この惨殺だけを無かった事にする方がいいのではないか?
シクラには悪いが、こんな凄惨な情況の記憶なんて無い方がいいんじゃないか?
考え方は色々だろう。
それでも知っておくべきだとか、知らなくて正解だとか。
でもそれには答えはないだろう。
使う使わないなら答えは使うだ。
だが、知っておくのは少数で良いだろう。
アイテムの回収も終わってるわけだし、戻った先の糸田には有無を言わさずご退場願おう。
「なんか悪い顔してますよ?サカエさん」
「気のせいだろう、俺は今悩んでるんだよ」
「何を悩んでるんですか?」
「シクラに襲いかかってあんな事やこんな事をしてやろうかってな」
「な、な、な、何を言ってるんですか!?」
してやったりとはこの事だな。
どうせ忘れるなら何を言ったって良いだろう?
「イェーイ!シクラ!ナイスおぱーい!!」
「ばかぁ!!サカエさんのばかぁ!!」
この一瞬の間にアルストとリンダの肩を掴む。
「さぁ、第二ラウンドと行こうか」
「ちょっとぉ、ドキッとするじゃない」
「第二ラウンドってどういう意味ですか?」
「今から過去に戻ってこの虐殺を無かった事にするんだよ」
黄金の懐中時計の針を夕方に巻き戻すと世界が逆行を始める。
巻き戻しの映像を見ているような逆行の中昼二刻の鐘が鳴り響くタトゥースタジオの中にいた。
タトゥーマシンに手をつけていない状態で全身に狐の絵があるアルストと、いなかったハズのリンダがいる。
「本当に戻ってきたの?」
「あぁ、そう言うアイテムだからな。本当は何百年も巻き戻すようなもんなんだけどな」
「すごい、力も失ってないよ」
「そう言うこった。じゃあ飛竜にでも跨って飛空船爆散パーリーにでもしけこみますか」
ここからは俺の好きな先手だ。
今回は好き勝手されて気分がわるかったからな。
ちょっとド派手な一発かまさせてもらおう。
けど、召喚契約してた子達ってこの世界にもいるのかな?
『召喚師セット・天帝白銀竜』
空に魔法陣が浮かぶとネオスラム一帯を影にする西洋の白竜が舞う。
『グルァァァァ!!!!』
白銀竜の背中に転移門を設置して一気に飛ぶと視界は上空に変わる。
「うわぁ、すごい。初めて竜に乗ったよ」
「これはすごいわね、けどなんでわたしを連れてきたの?」
リンダを連れてきたのは簡単な理由だ。
「なに、あんだけ大変な思いをしたのにネオスラム一区だけじゃ安いと思ってな」
「意外とゲバいのね」
「褒め言葉だよ、シロ!ここから南だ」
シロはこの白銀竜の名。契約時に決めなければならなかったのだが、白い竜だからシロと我ながらに安直な名前だと反省はしている。
『ガルッ、久しいねサカエ』
「そうだな、お前はすっかりデカくなっちまってたな…長い間すまんかったな」
『いいよ、あの仮想世界は時間を感じなかったから』
シロは俺がEROの世界にいた時は、大きさとしては若竜ドレイクだった。だが、こうして呼んでみるとすっかり成竜から老竜の巨大な竜になってるんだから驚きだ。
やはり250年の時はデカイな。
クソ雑魚だった糸田もあそこまでになるんだからな。いや、結果は楽勝だったが俺鼻舐められたからね。
そうこうしてる間に見えて来ましたよ。
飛空船の団体さんが。まだ豆粒程度にしか見えない程の距離はあるがな。
「じゃあ僕から行くね」
「まぁ、落ち着けってアルスト、シロ!久々に一発いけるか?」
『時間かかるよ?』
「いいぞ」
『手加減しないよ?』
「いいぞ」
『はぁ、いいけど後悔しないでね』
空中に留まるシロが詠唱を開始する。
『我天空の皇帝が命ず、天空そらを穢す者へ凍てつく永久の時を 、我が力我が息吹となりて再び栄光の天空を我が手に掴まん』
シロの魔力が爆発的に高まる。
そして……。

白銀竜の息吹シュネー・トライベン

晴れ渡る青空に理不尽な吹雪が吹き荒れる。
次第に止まることの無い吹雪は空間その物を氷へと変えて行く。

飛空船は巨大な氷の中へ閉ざされ動きを止める。
「シロばか!やりすぎだろ」
『だから加減出来ないって言ったのに』
後にここは溶けない氷の壁エターナルアイスウォールと呼ばれ観光地として有名になるがそれはまた別のお話しだ。
「じゃあいじめっ子キャン言わして花火大会としけこみますか!!」
「うげっ、みんな抱きかかえて助けた時に和解できたのになぁ」
「まぁ、まぁ、あえて道を変えといて学校でやり返すのもありかもな?閑話ってやり方もある」
「閑話?」
「こっちの話だよ」
「でも、やっぱり学校は」
「いけよ、その力はお前が自分で手に入れたんだ。貴族も別に続ければいい。ただ借金返済で仕事はしてとらうけどな」
「今回僕だいぶ頑張ったよね?」
シロと別れて家に転移すると頬を膨らませたシクラがいた。
あぁ、そうか確かこの時間帯はBLと勘違いして怒っていたんだったか。
確かにオカマと裸の美少年と歩いていれば言い訳はできんな。そっちの業界だと思われても仕方無い気はするが、ここからやり直しは心が折れるな。
何より鬼ごっこが辛い。
「どしたシクラ」
「むー、ひどいですよ!!確かに!確かにサカエさんが胸ばかり見てるのは知ってますけど!あんなのひどいです!!」
「は?」
「襲うとか、あんなこととか、おっぱいとか!!とにかくひどいです!!」
え?ちょっと待って、どゆこと?え?
「待てシクラ、今お前は俺とアルストができてる的な想像をして怒っているんだよな?」
「もぉ!!知りません!!」
なんでだ?なんでシクラに記憶があるんだ?
「でも、次はちゃんと花火見ましょうね」
「待てシクラ、なんだお前は」
「簡単な話ですよ、三人の会話聞こえちゃったんです」
つまり、そう言う事か?
じゃあ、襲ってやるとか。ナイスおぱーいとか。俺にあるまじき数々の発言が…。
「ノォォォォ!!!!!!!」
「でも、どうしてもって言うなら、その、あの、お、襲っても…いいですよ?」
「NOooooooooooo!!!!」

この後芯入り牡丹の花火がおっぱいに見えたのはここだけの話しにしておいて欲しい。










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